プロローグ的なもの
「………ざざぁ〜〜ぁん。」
「おっ!今の波の音マネ?いい線いってんな!」
前方を見渡せば全て海。
足元を見下ろせば綺麗な砂浜。
後ろを振り返れば森と山。
ここは所謂、絶海の孤島ってやつだ。
俺のナイスな現実逃避に乗っかってくれたのは、隣で一緒に海を眺めるナイスガイ、来道一刀だ。
「ふっふっふ。…分かってくれたかね?ポイントは音の終わり側に和のテイストを添えた所にあってだねぇ……」
「いや、そこまでは読み取れんわ。」
読み取れなかったらしい。
この主人公チックな名前の一刀くんとは、既に10年来の親友を思わせるやり取りをしているが、実際には出会ってから10時間程度しか経っていないほぼ赤の他人である。
流石に俺の表現した、葛飾北斎感満載の波の音を感じとるには関係性が浅すぎた様だ。
「…しかし実際どうするよ?」
「どうするとは?」
「いやいや!完全にこれ遭難でしょ!現実逃避も良いけど、このままだとオレら野垂れ死ぬぞ!?」
現実逃避の時間は終わりだそうだ。
俺としてはこの後、「いやぁ、そういえば海って久しぶりだなぁー」から始まる爆笑トークを披露しようかと思っていたのだが、どうやら今回この鉄板ネタの出番は無い様だ。
「どうするって言われても、わりと俺の中では方針は決まってたりするんだけど……」
「…ハァ。……まぁ、そうだよなぁ。他に案なんかあるわけ無いし、とりあえず探してみっか!あの預言女を。」
こうして俺達の孤島を舞台にした、サバイバル生活が始まる。
が、その前にまずは、こんな状況に陥った経緯を話そう。




