ざまぁの前兆
ざまぁ系がやたら流行っていた時に書きたかった。
私の幼馴染のテツくんがいなくなって数か月が経った。
テツくんの両親が現在仕事の関係で他国に行っており、何かトラブルが起きたようだから連絡が取れず困っている。
その彼の両親の替わりの保護者が彼の父親のお兄さんらしいが、明らかに彼が行方不明になった原因なのは明らかだ。
頭の悪い私でもわかるくらいだから他の人もわかっているだろう。
だが、証拠もなく、うまいこと口裏を合わせているみたいだ。
今の私の担任もその一人だ。
「いいか、お前ら!こんなクズみたいになるなよ!
能力者だからって、えばっているからこの世界はまともにならないんだ!」
これが口癖のようによく言う先生だ。
どうやら、テツくんの叔父さんとはかなり仲の良い先輩後輩の関係らしい。
この口癖はテツくんが不良であると印象付けるための演技なのは明らかである。
だが、この担任の普段の態度とこのクラスの半数近くが小学校でテツくんの知り合いのため、
この担任がいくら言おうと信じるものはあまりいない。
私なりに頭を使って、同級生や道場の人の目撃情報を辿って探したが見つからない。
ある時は学校を抜け出し、ある時は日が昇らないような時間帯を使った。
そんな生活を送っていると段々と人付き合いも悪くなる。
人との関わりが減ってしまっているのだから当然である。
わかってくれる人もいれば、呆れるもの。
はたまた、担任の話を信じる人もいた。
正直、人付き合いは好きではない。
人付き合いの多いテツくんと一緒にいるために続けたことだ。
テツくんがいなくては意味がない。
ある日、ふとテツくんの言葉を思い出した。
「やばいことに巻き込まれそうだから最近買ったやつを学校に隠すから、サクラ預かっててくれない?
場所は…」
翌日からテツくんと連絡が取れなくなった。大変なことになったということで、頭がいっぱいになって忘れていた。
もしかしたら、何かテツくんの為になるのではないかと授業が終わって静かになった放課後に学校に忍び込んだ(授業はサボってテツくんを探していた)。
テツくんが隠していた場所は、私のロッカーの中だ。
テツくんのロッカーは何回も荒らされる被害があって使えなかった。
被害に合う時間はいつも放課後や体育など人のいない時間だった。
犯人は外部犯と先生は言っていたが、信用ない。それどころかテツくんが不審がって、別の先生にこのことを話したら、ロッカーを荒らされたことがあったことを知らなかった始末である。
その後、緊急職員会議があったそうだが、「警察と連絡した」とテツくんの叔父を使って担任は連絡しなかったことのみの注意で終わった。
そんなことはどうでもいい。私はロッカーの中にある私の持ち物でない袋を見つける。
多分、これがテツくんの言ってものだろう。
袋の紐を解き中身を確認した。中身は小さな機械がいくつか入っていた。
「これはボイスレコダー?」
いくつかある。未使用のものもあるが、使用済みらしいものもある。
使ったものを再生させてみる。その中身は知っている声だった。
「黒犬さん、能力者のガキを証拠もなく処分できるところがあるんですか?」
「ああ、マジだ。「能力者狩り」って組織あっただろ。あそこのやつと知り合いがいてな。前に犯罪を見逃す代わりに色々と協力してもらっているんだよ。実際に何人か処理してもらったから実績がある」
「流石ですね!黒犬さん!これで能力者だってえばり散らかすやつを処分できますね」
「ああ、まずは弟のくせに能力者だからとちやほやされてるケンのやつを懲らしめてやる。
兄より優秀な弟はいないんだよ」
「そうですね。能力者だからって優秀とは限らないって世間は理解が足りないのが悪いんですから、これは許される行為です」
「そうだ。あいつは今、仕事で外国にいるから息子の方を先に処分するかな」
「任せてください!口裏合わせは担任の俺がしときますので」
そんな内容の音声だった。きっと残りのものもそんな内容のものだと予想が出来る。
これは、テツくんを探すヒントにはならないが、テツくんを助けるものになる。
これを信用できる大人に渡さなければ。
「おや、こんな時間にどうした武蔵川?授業もでずに遊んでるな?
そのボイスレコーダーをよこせ。子どもだろうと容赦しないぞ。
まぁ、内容聞かれた時点で結果は同じだがな!」
ドゴンッ
後ろには、担任がいた。どうやら、ボイスレコーダーの内容に集中していて、近づいて来ている担任に気がつかなかった。
そして、担任の持っていた棒のようなものに殴られた。