表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/76

第74話 二年前

更新が遅くなり申し訳ありません

週一か週二のペースで更新となりますがなるべく早く更新できるように頑張ります


タイジュレン王国から離れた上空でシュウと朝比奈泉はギルレイナを追うように飛んでいた。と言っても、飛び立つ前にギルレイナが二人にかけた浮遊、飛行、追尾を合わせた魔法の効果によってシュウと朝比奈泉はギルレイナの飛行速度に離れる事なく後を飛んでいた。

その速度は現代世界で表すとジェット機並みの速度であり、空気抵抗軽減の魔法がかかっていなければ風が体に諸に当たっていたところであるが、今のシュウと朝比奈泉は飛行機に乗っている感じになっていた。だが生身の状態で空を飛んでいる事に朝比奈泉は不安を隠せずにシュウの顔をチラチラと見るがシュウは目を瞑っており、特に気にすることはなかった。そして数分後、ギルレイナは目的地に到着した。そこは辺り一帯に氷の大地が広がっているところにある氷河大国。ギルレイナが収めている国であり、シュウの故郷である。



「寒い」



氷河大国に到着してから朝比奈泉が発した言葉はそれだった。日差しが射していても辺り一面が氷であり、吹き付ける風も北から吹き、冷たい。この場所は現実世界で表すと南極大陸に国があるようなものだった。



「今日はまだ暖かい方だよぉ」

「そうだな」

「これで?」



冬に雪が降ったときのような気温と同じ寒さであるにもかかわらず、この国では比較的暖かいと判断している。この事実に極寒の地で朝比奈泉は現実世界でのシュウを思い出していた。シュウは現実世界で暮らしているとき、シュウは夏にはよく夏バテをしていた。逆に冬では寒さをものともしていなかった。そのことに朝比奈泉は気にしていなかったが。この場所に来てその理由が分かった。



「じゃあ坂本がよく夏バテしてたのは……」

「………俺はこの地で育った

だから冬には強かったが、夏の気温の体勢はほとんど無い

だからよく体調を崩していた」

「そうなんだ」

「心配しなくとも直ぐに慣れる」



渡り廊下を歩きながら寒さで震えている朝比奈泉に話していた。この国の気温に慣れていない朝比奈泉に服を渡してから城の中に入り、前を偉そうに歩いている少女の後をついていっていると、十人のメイドがギルレイナを出迎える。



「この国の主様が帰ったよーーー!!!」


「 おかえりなさいませ、ギルレイナ様 」


「たっだいまーー!!

ギルレイナちゃんと一緒にシュウ君も帰ってきたよーーー!!」

「………これは?」

「これも直ぐに慣れる」



渡り廊下の横で並んでメイドたちがギルレイナに頭を下げていると、メイドたちの視線がシュウに向けられる。その視線は肌に突き刺すような殺気…ではなく、シュウの帰りを待っていたかのような温かい視線であった。普通ならばこの視線を向けられれば、周囲が自分の帰りを待っていた事に嬉し泣きをするだろう。

しかしそんな感動を誘うような視線ではないことをシュウは知っていた。



「…………」

「? どうしたの?」

「何でもない」



シュウはメイドたちに呆れたような視線を送りながら嘆息する。

ギルレイナは振り返り、なぜシュウが嘆息しているのか不思議そうに見ているとメイドたちは一斉に視線を逸らす。メイドたちの反応にギルレイナは変な顔をする。そしてシュウの方に視線を向けるがシュウは無反応であり、変わったところは何もない。何かある筈なのに何もない、ギルレイナはバカにされている気分になっていた。

そんなシュウとメイドたちにイラっとしながら勢いよく扉を開けると、王の間の中心をズカズカと歩いていくと、ギルレイナは玉座に座る。メイドたちはギルレイナの横に並ぶと玉座に座るギルレイナの正面にはシュウと朝比奈泉が立っている形となる。



(いつ見ても子供が偉そうにしているようにしか見えない)



シュウは今のギルレイナを見て素直に思った。その子供は玉座にふんぞり返り、偉そうに座りながらその場で大きく両手を広げる。



「さてさて……」

「…………」

「皆知ってると思うけど、私は神だ!!」

「何言ってんだ バカ」



ギルレイナが、突然頭が痛くなるようなことを言い、メイドたちが頭を抱えだしたかと思えば、シュウに向けて親指を立てる。



「嘘じゃないもん」

「…………」

「だっだって私は何言っても私は怒らない

ロリと言われようが、ガキと言われようが私は怒らない

広い心を持っている」

「広い心…… 幼女体系」

「シュウ君……ぶっ殺すよ?」



その瞬間、城から放たれた膨大な殺気に周囲に生息する生き物は萎縮し、城とは逆方向へ逃げた。世界を統べる王の一角、[氷の女王]ギルレイナの殺気に本人が目の前にいるいないに拘わらず、全国民が城に向かって平伏した。それはメイドたちも同じであり、朝比奈泉もギルレイナに頭を下げていた。只一人を除いて



「言われるのが嫌なら元の姿に戻ればいいだろう」

「それは嫌だ」

「何故」

「この姿が楽だからに決まっているじゃん

それにね、見た目が若いといろいろとお得なんだよ

何をしてもこの見た目で何もかも許される

何も言わなくても食べ物をくれる

大人が出来て当たり前のことをやれば、お嬢ちゃん偉いねって褒められる

見た目で判断した大人の皆が私を甘やかすんだ

こんなに気持ちのいいことはないでしょう?」

「…………」


「さてさて、冗談はこのくらいにして シュウ君よ」

「何だ」

「この後どうなると思う?」

「…………何がだ?」

「フフン♪ 猶予を貰った彼らは何を選択する?」

「十中八九、仕掛けてくるだろう」

「そうなるだろうねぇ」



他愛もない会話、それから雰囲気が変わりギルレイナは不敵な笑みを浮かべる。



「奴らに残された選択は、「諦め」か「抗い」か

究極の選択を迫られているときに彼らの手元には「勇者」というカードがあると、それが希望だと勘違いをして間違った方向に進む

他と同じだ、何も変わらない」

「やっぱそうなるか~ 相変わらずバカだねぇ」



人は自らの立場が危機に陥ったとき、何かに縋る。間違った選択だとしても自分の命が助かるなら、人は迷わずに破滅の道を選んでしまう。そしてそれが間違ったことに気づいた時、人はその責任を他人へ押し付ける。

その最初から決まっているかのような運命の流れに迷うことなく進む人間の愚かさに最初はギルレイナも呆れていた。しかし今はこの状況を楽しんでいる。



「じゃあさっそく始めよう

シュウ君はリハビリ、あと君が連れてきた彼女を鍛えてくれたまえ」

「朝比奈を?」

「そう、だから連れて来たんでしょ?」

「まぁ…そうだな」

「うん だからと言ってはなんだけど、シュウ君が私の右腕なら彼女は左腕にしたいと私は思ってるんだ」

「そうか」


「私たちがこれから行うのは命の奪い合い

その舞台で私の側近となる二人が友達を前にしたら躊躇するなんてことがないようにして欲しいんだ」

「わかった だが最後はお前に任せる」

「え?」

「朝比奈をお前の左腕にすることは反対しない、だがお前の左腕にするには少し時間が必要だ」

「どれくらい?」

「最低で一年 朝比奈をお前の左腕としてふさわしい実力にする

最後お前が見極めろ」

「それは楽しみだね」

(私の意見は?)

「二年 それだけあれば十分でしょ」

「あぁ」

「楽しみにしているよ♪」



取り敢えず、これからの流れを決めたところで一先ず解散となった。朝比奈泉は意見を述べる暇もなく強制的に自分のこれからの予定が決まったことに何とも言えない表情をしていた。朝比奈泉はギルレイナの左腕となるためのシュウとの二年の修業が始まる。そしてその期間はクラスメイト達と命を奪い合う準備をする期間となる。

これは人間が望んだ結果、ギルレイナは彼らの挑戦を受けるだけであり、それによって多くの血が流れることとなる。シュウはクラスメイト達と争うという抵抗は微塵もない、朝比奈泉は戸惑いながらもクラスメイト達と争う未来を受け入れるしかないのだ。

だが朝比奈泉の戸惑いは一年で完全に消え去ることとなった。その決め手は彼女が現実を見たときの呆れによるものであり、シュウが洗脳したとか朝比奈泉がシュウとの修行によって頭がおかしくなったというわけではない。



「さぁ、戦争(パーティー)の準備を進めよう」



これが二年前の話である。

まだまだ続きますよぉ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ