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第67話 赤面

遅くなり申し訳ありません

ちょっと行き詰っていました

(………ここは

あれ?……私生きてる)



目を覚ましたネティが最初に見たものは雲一つない空

ネティは生きていることに混乱し、左手で自身の顔を触り自分の体を確認していると、ふと空を見る。右目は包帯で遮られ、左目でしか美しい光景を目にすることができないが自然と涙が出そうになるくらいに空は美しかった。そんな中でネティは近くにいる誰かの気配を感じて横を向くとネティが寝ている傍で本を読みながらネティが目覚めるのを待っていたセンに気づく。



(……私が起きるまでずっととそこにいたの?)



声をかけずに眺めていると視線に気づいたセンはヤマトにネティが目を覚ましたと伝えに行こうとするとネティは立ち上がろうとしたセンに向かって手を伸ばす。



(あっ……待って

行かないで… お願い…

もう私の前からいなくならないで…

もうあなたを裏切らないから…)



また自分の前からいなくなることを恐れ、遠くへ行こうとするように見えていた。精一杯に震える手を伸ばし服の裾を掴んで止める。



「ん?」

「…行かないで」

「…………」



ゆっくりと立ち上がろうとしたところで服の裾を掴まれ、後ろへ引っ張られると振り返り視線だけを向ける。ネティのその目には涙が溜まり、傍から離れないように哀願していた。これにセンはどう対処をしたらよいか悩み固まるとネティの顔がどんどん赤く染まっていった。



(あれ?何をやってるんだろう…私)



親に縋る幼い少女のような行動をした自分に顔から湯気が出るほどに恥ずかしくなっていた。それを直視したセンも恥ずかしくなり顔が赤くなっていく。その光景を遠くから見ていたヤマトはニヤニヤしながらセンの元へ近づいてくると



「ゆっくり話し合えばいいんじゃねぇか?」

「…………」



センの肩を軽く叩きエルが発動したままにしておいた転移門の方へネティ以外の勇者一行を連れて潜り抜ける。そしてセンは手を頭の後ろにやり頭を掻きながらネティの方へ体を向ける。



「…………」

「…………」



ネティは赤面した状態のまま沈黙が続く中でネティは俯く。それは今までにないくらいに赤くなった顔を見せないようにするためでもあるが、センの顔をネティは直視できなかった。そんなネティの様子に一回息を整えてから話始める。そして久方振りに二人っきりで言葉を交わす。



「あの時、俺が神託で適正なしと判断され国を離れた

俺はそれが間違いだったとは今でも思っていない」

「…………」

「何故と理由を聞かれたら……国に残っていたところで俺の立場はどうなっていたかわからなかったからだ

あの時俺に与えられた選択肢は……お前たち勇者に同行するか、国の戦力として利用されるか、その二つだっただろう

どっちにしても俺には戦うしか道がなかった

俺は[和名持ち(ネームド)]だからな」

「[和名持ち(ネームド)]?」

「当時の俺は自分が[和名持ち(ネームド)]であることなんて気づきはしなかった

賢者であるお前と何者かもわからない俺…

どう考えても俺の存在がお前の足を引っ張る………そう思っていた

だからお前の前から姿を消した

………今思うとあの時もう少し考えてから動くべきだったんだな」



センは天を仰ぎ嘆息する。神託によって狂わされた未来は二人を引き裂く形となったがこの結果に後悔はしていない。後悔しても無駄であることがわかっていた。ヘラが自身の体に宿っている時からセンは何かと戦わなければならない運命であるのだ。



「許せとは言わない 俺は今が一番充実しているからな」

「…………」

「あとお前の顔については前から知っていたが隠すようなことじゃないと思うぞ

まぁもう隠す必要はない ヤマトが治したからな」



ネティはぽかんとして、センの言葉を理解するのに時間がかかった。するとネティは思い出したかのようにゆっくりと包帯を解き、鏡で自分の顔を見る。そこにはあの醜いと思っていた顔の面影はそこには全くなかった。これにネティは混乱して頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。頬を抓ったりして、これが夢ではないことを理解すると再び固まる。



「礼なら俺じゃなく、ヤマトに言え」



長年、ネティを苦しめていた火傷の痕がなくなり、家族からも気味悪がられていた顔は見る影もない。治癒魔法、浄化魔法、神聖魔法などを使っても治すことのできなかったこの火傷の跡みたいなものが、あっさり治ったことに動揺しているのだ。賢者であるネティがどの魔法をもってしても治すことのできなかった呪いみたいなものがヤマトの回復魔法によって完治していたことに驚きと感動で言葉が出なかった。



「…………どうやって」

「さぁな、俺にもよくわからん

アイツの回復魔法は破格だからな」

「………回復魔法!?あんな底辺の魔法が私の顔を治したっていうの!?」

「あぁそうだ」



魔法は複数の属性で分けられている。

炎、水、風、地、雷、光、闇、回復、死霊、無

現時点ではこの10の属性で分けられている。そして魔法を使えることができる者は使うことができる属性は異なってくる。基本一般の人々が使える魔法属性は炎、水、風、地の4属性であり、他の雷、光、闇、回復、死霊属性は希少魔法である。あともう一つ無属性というものがあるが、この魔法属性は使える者が確認されていない程の珍しい属性であり謎に包まれている属性である。その中でも回復魔法はあらゆる属性の中で下位の魔法であった。回復に特化した魔法であり攻撃するための魔法ではなく、回復魔法は回復しかできない。そんなことを言ってもエル達はそろって首を傾げるだろう。ヤマトがデスゲームと化した世界【アースガルズ】で放った〈大地の束縛〉は明らかに回復させるための魔法ではない。地中にある樹の根を再生させ相手の動きを封じる魔法は味方を援護する魔法であり、あの時ヤマトは回復とは関係のない魔法を発動していたのだ。これにヤマトは使い方次第だと笑って話した。



「回復魔法が私の顔を……」



ネティは落ち込んでいた。回復魔法が自分の顔を完全に治した事に回復魔法を軽視していた自分の愚かさを悔いる。世界で回復するだけの魔法だと軽視している魔法が長年苦しめていたモノをあっさりと治した事がネティの魔法に対する考えが揺らいでいた。



「落ち込んでないでサッサと立て

アイツらをこれ以上待たせると面倒なんだ

だから早く行くぞ」



ショックで動かないネティを立たせるとセンは未だ発動したままにしてある転移門の方へ向かい、ネティは項垂れたままセンの後について行った。

まだまだ続きますよぉ!!

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