第66話 勘違い
読んでくださっている方はありがとうございます
色々あり更新が遅れました
あともう少しでこの章を終わらせ新章に入りたいと思います
それではどうぞ
アリスが説教をされている頃、一足早く種族会合が行われた会場へシウラとミカルの二人が戻っていた。
「席を外し申し訳ありません」
「気にすることはない、それよりもあっちはもうよいのか?」
「はい、問題ありません
許可を貰い、私はこちらを早急に終わらせなければなりません」
仮面を被り直したミカルは静かにシウラの後ろで待機する。シウラが席に着くと前に座る人間の王達を見据え場の空気が一気に冷え込むとドワーフの王は冷や汗をかき、リザードマンの王は目を瞑り、鬼王は目を逸らし、獣王は体が震える。種族を収める王たちがシウラの怒りが自分に向かないようにしていた。その意味も込められシウラの言葉の後にドワーフの王が口を開く。
「どうやら勇者が現れれば世界が平和になると勘違いしているようなので、あなた方の認識を訂正させていただきます」
「ふむ…それはわし等もか?」
「そうですね、人間の王以外は勇者を召喚するとは思いませんが一応耳には入れておいて下さい」
人間の王以外は一斉に頷き生唾を飲んだ。王たちは鬼気迫るものを感じながらシウラの話を聞く。
「先ず最初に聞きたいことがあります
あなた方人間は何故勇者にこだわるのですか?」
「は?」
人間の王たちから間の抜けた声が出る。勇者の存在は人間たちにとって当たり前のこと、だがシウラにはそうではない。魔王を倒すという使命を背負った勇者は自分の立場を勘違いをしている。勇者がやろうとしていることは救済ではなく破滅である。それを知っているから勇者を必要としている人間たちの考えがわからなかった。
「私にはわざわざ別の世界から勇者を召喚する意味が分からないのです
勇者という称号だけの覚悟のない者、彼らの存在自体が私には理解できないのです」
「勇者は魔王を倒し、魔族を滅ぼし世界に平和をもたらす者である!!」
「魔族は悪だ!奴らの存在そのものが脅威なのだ!」
「そうだ!奴らが我らに何をした!!世界を恐怖に陥れたではないか!!」
人間の王たちが感情に任せて発言をしていると人間以外の王たちはシウラの顔を見て凍りつく。王たちが避けていたことが人間の王たちによって引き起こされた。
「今までに魔族が私たちの生活を害すようなことをしましたか?
何か勘違いをしていると思いますが、こちらへ攻めてきたのは魔人族であり、魔族ではないのです その時私たちだけではない魔族にも被害が及んだのですよ
魔人族が世界を牛耳っている時、世界を救済したのは勇者ではありません 世界を救済したのは女神です
勇者が何かしましたか?
私たちに何かしてくれましたか?
勇者という称号を使い自身の欲のために生きている者が世界を救う?
冗談でも笑えません
勇者が勇者らしく行動したのは初代勇者と勇者ではない人を無理やり勇者にした挙句、教会とあなた方人間が脅威と判断した勇者ではない不幸な人だけです」
後ろで控えていたミカルは悩んでいた。会場に戻る際にエルからシウラを任されていたが熱くなり無意識に〈威圧〉を発動しているシウラをミカルは止めることができなかった。と言うよりも止めるタイミングがわからなかった。
(シウラ完全にキレてる……
はぁ…アイツ何でアタシにシウラを任せたのよ
アタシにシウラを止められるわけないじゃない)
ミカルは面倒ごとを押し付けられたかのようなこの立場にエルへの愚痴が止まらない。出会った当初から溜まっていたものがミカルの中で爆発しているのかキレてるシウラをそっちのけで頭の中でエルへの愚痴を並べていた。種族の王たちからチラチラとシウラを止めるように視線で訴えかけるが周りが見えていないミカルが気づくことはない。どうすることもできずに今すぐにでも逃げ出したいと思っている王たちの元へシウラの怒りを鎮める者が現れる。
「お? しーちゃんオコだねぇ~ 怖い怖い」
「………」
「ハハッ!なーんてな、似てたか?」
「…………はい 本人かと思いました」
『似すぎだよ』
「…………マジか このモノマネ封印だな」
興奮して熱くなっていたシウラの耳元で囁く。その声にシウラの顔は誰が見てもわかるくらいに蒼白すると後ろから肩を軽く叩かれエルだということがわかり、汗が尋常じゃないくらい流れ心臓がバクバクと速くなった。シウラが心底安心するほどにエルのミヨコの声真似がシャレにならないくらいに似ていたからだった。シウラの評価にエルは自分にゾッとしていた。アリスもこれには苦笑いを浮かべるしかない。
「それで?こっちはどうなったんだ?」
「ダメです 幾ら言ったところで変わりません」
「そうか………それならしょうがないな
諦めるか」
「そうですね」
「何言ってんのアンタたち!?」
「これ以上は無駄だと思っただけだよ
現に今いる王たちに警告はしたんだろ?」
「警告?シウラ……怒っていただけよ?」
「それでいいんだよ、シウラが怒ること自体が警告だ
これ以上バカなことをすればシウラが動くという意味が込められているとわかる奴はわかる
問題は今この場にいない国だ」
今もなお行われている種族会合に参加してない国、ミカルのいたアイヘス王国を含め多数の国が出席していなかった。アイヘス王国が出席していないのはミカル曰く出る必要がないとのことだった。アイヘス王国では既に勇者が誕生しているが、彼は国民から称えられることはない。エルに負けたあの日からアイヘス王国で誕生した実力のない勇者を勇者と呼ばなく、エルが勇者を倒したことで信仰心が薄れていた。第一王女が変わらずエルに夢中なのは伏せた。問題はアイヘス王国以外の国々である。
「困ったときには勇者って考えが別の世界からの召喚になるわけですよ
それで今来てない国は遠からず勇者を召喚する
それだけで済めばいいけど、どこの国も余計なことばかりするおかげでやることが増えて、更にストレスが溜まって、そのうちボンッ!!って」
ドオォォォォォォォォォォォォォォォオン!!!!
衝撃音と共に地響きが起こる。それは地面に衝突したような衝撃ではなく、何かが地面から這い出たような衝撃が響く。この場にいる王たちは突然のことで何が起こったのか理解できずに騒いでいると、平然としているエル達は三人が同じ方向に視線を向けていた。
「「「………………」」」
この衝撃から考えられるのはシウラとミカルが思い浮かべる一人の人物、ミヨコによる仕業だと自然と答えが出た。本人の前では言えないが、あの頭のおかしいブラコンならやりかねないと思っていた。そもそもこの世界で大地を揺らすほどの威力を出せるのは人物をシウラとミカルは二人しか知らなかった。エルとアリスを除いて
(………まさか)
『方角的にあれは………』
(よせ……あまり可能性として考えたくない
嫌な勘は当たるからな)
『………それもそうだね』
これにエルは心当たりがあるが口には出さないようにする。口に出せば事実になり確信してしまうからであり、それはできるだけ避けたかった。エルは自身の勘が外れることを期待するだけだった。
一方その頃、発動しっぱなしの転移門の向こう側
「…………」
「…………」
ネティが目を覚まし、センとヤマトが同時に転移門に向かおうとしたところでネティがセンの裾を掴んだところで固まったまま動かなかった。ネティは体が勝手に動いたという感じで、掴んだはいいがこの後どうするか戸惑い、センは予想外の行動にどうしたらいいのかわからなかった。ヤマトがニヤニヤしているとセンとネティは無言のまま気まずい雰囲気となっていた。
まだまだ続きますよぉ!!




