第65話 事後処理
今回は会話多めです
誤字脱字が多いと思いますが治しながら書いていきます
「……ったくやりすぎだよ バカタレ」
「……すまん」
ネティが眠りお姫様抱っこでヤマトの元まで運び、ネティを治療しているヤマトからセンへ愚痴を溢す。高度な回復魔法をもってしてもネティの状態は酷く、ヤマトがここに居なければ死んでいてもおかしくなかった。
「あれ? はぁ…呪いまでかかってやがる」
「…………ヘラの奴、余計なことしやがって」
ヤマトの回復魔法では解けないようにし、センの浄化魔法でしか解けないヘラの粋な計らいという名の嫌がらせである。センは頭の中に浮かぶ顔の横でピースをしているヘラの憎たらしい顔を今すぐにでもぶん殴りたいと思っていた。だがそれは今ではない。勇者がギャーギャー騒いでいるのを無視してネティの治療に専念する。センの体でヘラが食べていた左腕をヤマトが修復している横でセンは治癒を妨害している呪いを一つ一つ丁寧に解いていた。勿論その間もヤマトは回復魔法をかけ続け輸血も忘れずに行う。汗を流しながらも治療は続き、呪いが解けた個所からヤマトはミレスの魔力を借りつつ損傷しているところを魔力を具現化させた糸で傷口と左腕を繋ぎ合わせ薬草に漬けた包帯をネティの体に巻いていくと
「なぁセン、右目のこれは生まれつきか?」
「俺の知る限りでは そうだ」
「ふーん」
「治せるのか?」
「アーシを誰だと思ってるんだ? 楽勝だ
これは呪いというより遺伝によるものだろ 治せないことはない」
「遺伝? こいつの両親は普通だったけどな」
「この遺伝のやつは必ずしも現れるとは限らねぇよ
こいつの先祖のどこかの代で同じ痣のようなものができている奴がいて、そんで今になってコイツに痣が現れてもおかしくはないんだ」
「なるほど」
「じゃあサッサと取っちまうか」
全ての医療を終えると、ヤマトはネティの身だしなみを正すと白衣の内ポケットから煙草を取り出し一服しながらエルの元へ向かい、エルの背中に抱きつき首に手をまわしていた。
「おい」
「自分へのご褒美だよ
一通りのことは終わった 命に別状なし」
「治ったのか」
「サービスもつけといた」
「シウラとミカルは?」
「一足早く戻ってる 種族の王たちがまだ残っているからな」
「そうかい それで?アーシ達は」
「目の前の問題を片付ける」
治療が問題なく終わったことを律義に報告しに来る。そして報告を終えたら離れるかと思っていたがエルに抱きついたまま離れず、煙草をエルの口元へと運び加えさせる。一瞬戸惑いはしたがそのままヤマトが吸っていた煙草を吸いだす。傍から見ればカップルのように見える二人であった。その状態で腕を組んでいるエルの視線の先には勇者が剣を抜いた状態で睨み付けていた。エルは剣を向けられても動じずに目を細めて静かに見据えていた。
「よくも俺のネティをあんな目に合わせたな!」
「やれやれ完全に被害者面かよ あれは同意の上での決闘だっただろうが
結果がどうなろうが個人の責任だろ」
「ふざけるな! ネティが勝ったと思ったら訳の分からないことになってネティがあんな目にあったんだ! お前の仲間が汚い真似をして半殺しにしたんだろうが!」
「何を言ってるんだ 最初から賢者に勝ち目なんてなかっただろうが
多少のイレギュラーはあったが、実力差はハッキリしていた
それにセンは汚い真似何て一切していない」
「うるせえ!賢者に選ばれたネティが何の取り柄もない奴に負けること自体がおかしいんだよ!」
「はぁ…話を聞きませんね エルさん」
「そうですね ヤマトさん」
あまりにも素っ頓狂なことを言う勇者に思わず溜息がでる。身分が高いというだけで相手の実力を測らずに自分が強いと勘違いしている者を見るのは滑稽だが、流石に貴族たちと同じ反応を見すぎて飽きてきていた。
「ロデス、貴方が黙っててくれない?」
「なっ!………はい」
話を聞かない勇者を黙らせたのは戦士のミーシャ。喚き散らす勇者に頭に来たのかもの凄い形相で睨み勇者が戦士を恐れ、顔を蒼白させながらたじろいだ。今までに強く出たことがないのか勇者以外の者たちは目を見開いて驚愕していた。
「やっと話が通じる奴が出てきたか」
「ごめんなさいね 私も調子に乗っているこのむかつく顔を殴りたいけど、こんな奴でも勇者だから」
「正直なやつだな」
「あなたに聞きたいことがある……のだけど……」
「?」
邪魔者をする者がいなくなり話を進めようとしたとき、エルの背後で嫌な予感しかしない笑みを浮かべているヤマトに気づかず口を大きく開けエルの首を目掛けて咬みついた。
ガブッ…
「イデェ!!」
そしてエルの首筋に歯形が残ったところを舐めると同じ場所を強く吸いキスマークが完成した。エルは頭へたんこぶができるくらいの強さで拳骨を食らわすとヤマトは頭を抱えて蹲る。
「バカ野郎が、どうすんだよ、これ」
「きれいな首筋だったからつい…」
「ついでお前は人の首を噛むのか?」
「しょうがないだろ?ムラッとしたんだ……
ちょっと待て、たんこぶが治ったばかりなんだ その振り上げた拳をゆっくり下ろせ」
「あの………いいかな」
「ん? あぁ…すまない
何だっけ…… 手合わせ願うだっけ?」
「機会があればお願いしたいと言いたいところだけど違うわ
単刀直入に聞くわね あなた達は何者なの?」
「…………何者とは?」
「ネティの相手……あなたの仲間はこの勇者にも劣らない力、賢者以上の力を持つ彼は適正なしその時点でおかしいわ そこで私は本来ならば彼が賢者…いえ、勇者に選ばれるはずだと私は思うのだけど」
「神託が間違っていたと?」
「ハッキリ言ってしまうとそうなるわね 神託が下された時、私もあの場にいたけれどおかしなことは何も起きてはいなかった にも関わらず今になってロデス以上の実力者が現れて私は混乱しているの それにエルフの王を従えているあなたはもっと普通じゃない
そう考えているうちにあなた達に興味を持った」
品定めをしているかのような視線でエルを見るが表情を変えずにミーシャの顔を見据える。エルの視線にミーシャはは体をゾクッとさせ口角が上がる。それを見ている戦士と賢者以外の勇者一行は二人の背後に龍と虎が見えていた。
「…………只の冒険者だよ」
「そう………今回はそれで良いわ
あまり深く聞くつもりはないし ネティのこともあるしね
でも……もし機会があれば、あなたには私に指導をお願いしたいわ」
「指導?」
「えぇ、あなたに教えを請えば、もっと強くなれると私の勘がそう言っているの」
「戦士が冒険者に戦い方を教わるねぇ… それは強くなることに手段は択ばずということか?」
「いえ?私は私の勘を信じただけよ」
「…………機会があればな」
高揚、これはミーシャが勇者一行として初めての感覚。肌で感じ全細胞が危険だと叫び、鳥肌と震えが止まらない中でミーシャは笑みを浮かべる。ヤマトは黙っていたが、この時戦士ミーシャからエルと同じ雰囲気に苦笑いをしていた。強くなることを望み強者との戦いを何よりも欲する。エルが自身よりも格上と相手をするときと同じ表情をしているミーシャは戦闘狂の疑いがあった。
(まるで女版エルだな)
ヤマトがそんなことを思っているとエルの表情が変わった。その理由は問題児が目を覚ましたからだった。
『んーーよく寝たぁ』
(………)
『スッキリ………あれ?』
(やっと起きたか………駄女神)
『oh………』
この後アリスは二時間説教された。
まだまだ続きますよぉ!!




