第53話 不機嫌
【祝】10000pv!!°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
ありがとうございます!正直ここまで行くとは思いませんでした!!
これからも頑張って書いていきます!!
ヤマトがエルに夜這いを仕掛けてから、麻痺が解けたシウラが止めに入り森が消滅するという最悪の事態は免れた。
そしてエルが全快すると、装備を整えるために近くにある街へと向かう。
その道中、ヤマトの行為が原因でエルは見るからに不機嫌になっていた。
「「「…………」」」
「何だよ、まだ怒ってるのか?」
「それ以上近づくな、ブチ殺すぞ」
「ふーん、そういう態度を取るなら仕方がないな
今度は力尽くでも…」
「ほぉ…やってみろ」
「やめなさい」
「チッ…」
(…エル様があそこまで不機嫌になるのは珍しいですね)
(余程嫌いなんだな…強引な女が)
「機嫌なおせよ~
暗いぞー!暗い暗い!!幸せが逃げちゃうよ~
ヒャヒャヒャッ!!」
「イラッ…」
(めんどくさいから煽るなよ)
「別にアーシは誰だっていいって訳じゃないぞ?」
(どうだか)
「顔が良ければいいってわけじゃない、ちゃんと区別する」
(性別は?)
「善と悪、勇者と魔王、騎士と盗賊、イケメンとブサイク」
(何て?)
「何て?」
不機嫌になっているエルに何のためらいもなく近づき、更に攻める。
そして更にイラつきが増すエルとヤマトのやり取りをセンが心の中でツッコむ。
いちいち口に出していたら疲れるので言わないように我慢をしていた。
だがヤマトが余りにもバカみたいなことを言い出すとエルは振り返りヤマトに視線を向けた。
「だからちゃんと区別しているって」
「善と悪ならわかる
勇者と魔王、騎士と盗賊も似た意味だからな
でもイケメンとブサイクは違うだろ」
「何言ってんだ?重要なことだろうが」
「重要ね…でも結局は顔が良ければ…
そうか!その手があったか!顔を変えれば…」
「エル様…以前に計画をなされて、お二方に…厳密にいえばミヨコ様に気づかれた時、どうなりましたか?」
「ミヨコ?」
「………やめとこうか」
「賢明な判断です
私はもうエル様のあのような姿は見たくありませんから」
「?」
「「…………」」
前にエルは二人のスキンシップ(特訓)の毎日に体と心が限界になり、思考能力が低下して顔を変えれば逃げられると思ったことがあった。
そしてその日のうちに髪の色を変えたりしているところをミヨコに目撃され、シウラが思い出したくない何百発にも及ぶ鉄拳の制裁を受けると、それからエルが脱走の計画を練ることはなかった。
「そう言えば勇者と魔王じゃないが、魔王と結婚した奴がいるって聞いたことはあるな」
「あっ…いましたね
確か賢者の地位に身を置いていた[和名持ち《ネームド》]であるとサクヤさんが言っていました」
「何それ詳しく教えて」
「あぁ…確か勇者と一緒にいるのが嫌になって、先に魔王を倒して旅を終わらせようと一人で魔王のいる城に向かって、魔王を目の前にしたら一目惚れしたって話だったな」
「そうですね、先代の[大魔王]との結婚でしたので他の魔王の方々が混乱していたのを覚えています」
「「「先代の[大魔王]!!?」」」
「そうそう」
「……[大魔王]ジウの先代!?」
「そうです」
「……[魔帝]…レオネ?」
「よく知ってるな」
「過去に勇者が倒した数々の魔王とは比べ物にならない程の強さを誇る史上最悪の魔王だぞ!!?」
「確かにレオネ様はミヨコ様、サクヤ様と肩を並べ、ゼロの世界へ通じる結界の管理を任されていました
しかし結婚を機に魔王を引退なされて自分のジウを自分の跡継ぎに指名をなされていましたね」
「魔王の中の魔王って感じだったからな
引退ってなったときは配下の奴らから罵声が飛んだらしいけどな」
「そうですね、〈威圧〉で配下の者たちは直ぐに口を閉じたみたいですけど」
史上最悪の魔王、[魔帝]レオネ
過去に存在した歴代の魔王の中でもトップの強さを誇る六人の魔王の一柱であり魔王をまとめる存在であり、[大魔王]ではなく[魔帝]と呼ばれるようになる。
その強さはミヨコ、サクヤの二人に劣らない実力の持ち主である。
世界の命運を握っていると言っても過言ではない最悪の魔王を人類は危険視し討伐しようと考えた。
神の選別で選ばれた勇者、別の世界から召喚された転移者の勇者、そして高ランクの冒険者に魔王の討伐へ差し向けられたが、勇者及び冒険者は[魔帝]レオネに傷一つ付けられず、格の違いを見せつけられて心を粉々に砕けれ、転移魔法で国へ強制送還されていた。
[魔帝]レオネに挑んだ勇者、冒険者の団体は五十を軽く超える。
そんな魔王の頂点にいた[魔帝]が一人で魔王城に攻めてきた者と結婚して、自身の後釜にジウを推薦した。
[魔帝]の引退は人類側からしてみれば好機であった。
しかし[魔帝]の後を引き継いだだけあって、[大魔王]ジウは[魔帝]の後釜にふさわしい存在であり、配下の者たちはこの決定に反論する者はいなかった。
「[大魔王]ジウは最初から魔王になれる実力がありましたが、魔王になる気はありませんでした
レオネ様に従う身で魔王にはなれないと…
実力はありましたが変なところにこだわる人です」
(シウラも人のこと言えないと思うが)
「……ジウが強いと言っても[魔帝]が魔王の座から降りた今、チャンスと思っている所は少なくないだろうな」
「そうなると…」
「勇者が増える、別の世界から連れて来る、仕事増える、機嫌悪くなる」
「「はぁ…」」
「「「?」」」
「近々来るだろうな」
「…来ますね」
魔王を討伐することが人類にとって悲願であると誰もが思っている。
なぜそんな勘違いをしているのか、魔王が魔人族とは別であることを知らないからである。
魔王を倒せば結界が弱まり、ゼロの世界の魔物がこの世界にやってくることを知らない。
六人の魔王が平和を維持している事を知らずに、人類は世界を救うと思っている行動が逆に破滅に繋がる事を知らないのだ。
こうした余計なことをしているせいでミヨコとサクヤの仕事が増え、機嫌が悪くなるのだ。
そして疲れ切った二人はエルに癒しを求め、最低でも一年エルを拘束する。
「どうすれば捕まらずに逃げることができるだろう」
「それは難問ですね」
エルとシウラがため息をつき、確実に来るだろう未来のことに嫌な気持ちになっているとセンがヤマトに二人のことを教えていた。
自分が見たもの、体験したもの、エル達から聞いたことをヤマトに隠すことなく教える。
「……マジで?
そんなやばい奴がいるの?」
「あぁ」
「アーシは今まで見た中でエルが一番強いと思っていたが…
あのエルが手も足も出ないのか…」
「……技を出さないでエルが一方的にやられるとは俺も思わなかった
それにまだ全力を出していなかった
エル相手に加減をしていたんだ」
「やべーな、ちょっと会ってみたい」
「やめとけ、俺とミカルを同時に相手にしても息を切らしていなかったんだ
あの人が本気で戦う姿が想像できねぇよ」
「……アーシはあったことないからな~
ミレスはエルの姉貴について何か知ってるのか?」
『[最強]の称号を持つものですか…少しだけなら知っています
ゼウスより加護を授かった者、そしてゼウスが今最も警戒をする者
ですが彼女はゼウスから加護を貰ったと言っても勇者と変わらないものだったのですが、それがなぜあのような存在になったのか、ゼウスにもわからないのです
それからというもの彼女は神の天敵と言われ神々から恐れられる存在となり、[神を食らう者 《ゴッドイーター》]という称号も得ていました』
「[神を食らう者 《ゴッドイーター》]?それはゼウスの?」
『いえ…彼女は称号を得る前に魔神、竜神の二人を壮絶な戦いの末に倒しているのです
そしてその時の彼女はまだ人といえる状態でした』
「人間の状態で?神を?どうやって…」
『それは…………』
「〈ジャイアント・インパクト〉……」
『そうです…その技です
その技を受けた魔神と竜神に勝ち、二人の神から能力を奪った後に[神を食らう者 《ゴッドイーター》]と[最強]の称号を得ています』
「バケモンだな…」
『ですからヤマト…彼女には女神の魔力を纏った状態でも勝てる確率は皆無ですから勝負を挑まないでくださいね』
「……あぁ、わかってる」
ミレスの口から語られたミヨコの話は壮絶なものだった。
想像していたよりもはるかに上回る程の話に顔が引きつっていた。
最初は[最強]の称号を持つ奴がどんな奴なのか軽い気持ちでセン聞いていた。
エルの二人の姉のうちの一人と聞いた時にはエルを女にした感じなのだろうとヤマトは思っていた。
問題はその後だった。
エルを簡単に倒し、センとミカルを同時に相手にしても敵わないと聞いた時にはヤマトは自分の耳を疑った。
そしてミレスが[最強]の話を語っているときにミレスの体が震えていたことに気づいた。
この時ヤマトは神ですら恐れる存在に、初めて相手に回してはいけない相手だと悟った。
(………そんなヤバイ奴がこの世にいるとは思わなかった
正に天災級の化物だ)
「おい…おい!」
「ん!!?なっ何だ?」
「……もうすぐ街につくぞ」
「おっ…おう」
「?」
エルと行動を共にしている以上、[最強]と関わることは避けられない。
ヤマトは[最強]と会った時のことを考え、回復魔法を更に極めると同時に、ミレスの魔力を使いこなせるようになることを目標とすることにして努力を続けていくのだった。
このヤマトの努力は後に大いに役に立った。
そしてヤマトはエルが[最強]の弟だと知っても、夜這いをかけることをやめなかった。
ミヨコともう一人のミヨコと同レベルに神が危険視している姉のサクヤが極度のブラコンであることは知らなかった。
名前だけ登場です!!
[魔帝」レオネ…名前をどうしようか凄い悩みました。
出てくるのはもう少し後になります
では次回またお会いしましょう




