閑話 デスゲームのその後
閑話っす!!
デスゲーム編のその後の話になります
ゲームクリア後、プレイヤーは次々と現実世界へ帰還していった。
目を覚ましたプレイヤーは涙を流して喜ぶもの、心配していた親と再会して抱きしめるもの、後遺症が残った者たちがいた。
死者は326人にも及び、この出来事は社会現象となり、制作会社はテロ行為の疑いで責任を負われ自殺する人まで出てきた。
【アースガルズ】の開発者はゲームの伝達機能に不具合が起き、このような事態に陥ったと発表した。
そして死者を出さないように制作会社の社員がゲームの中へ入り[銀翼の天使]として動いていたことを明かした。
だがこの発表を聞いた多くの者たちはある疑問が芽生える。
それは【アースガルズ】の最終ボスを倒した五人のプレイヤーだった。
多くのプレイヤーは最終ボスと戦っていた五人が制作会社の社員ではないかと疑い、制作会社の社員だと思っていた。
しかし実際には制作会社の社員は『銀翼の天使』のメンバーであり五人とは無関係であったのだ。
あの五人については【アースガルズ】の開発者でさえ説明ができなかった。。
NPCではなく、プレイヤーでもない、そのどちらかであっても、あの五の強さはチートだという意見が多い。
そしてあるプレイヤーの証言が学者で混乱を招く事となる。
「彼らは別の世界から来た」
そのプレイヤーの証言は自分たちのいる世界とは別の世界があるということだった。
最初はその話を信じる者はいなかった。
しかしある事実が別世界から来た事を証明してしまった。
それは犯罪ギルド[devils joker]のメンバーたちの証言だったからである。
現実世界へと戻ったギルドのメンバーは一人残らず何かしらの後遺症が残った。
仮想世界の中からプレイヤーの本体にプレイヤーが後遺症を残すことは事実上不可能であったが、ゲームで視野を出す結果となった今、不可能ではない。
しかし[devils joker]のメンバーの話によれば、左目に縦の手術痕がある女は狙って[devils joker]のメンバーに後遺症を残した。
[devils joker]メンバーの後遺症はそれぞれ違うものであり、日常生活に支障をきたすものだった。
あらゆる感覚の麻痺、それが[devils joker]に残された後遺症だった。
学者が別世界について口論をしているころ、制作会社が騒動の後処理のためゲーム内で起こった記録をまとめていると、攻略した二十七階層のうち七つの階層を一人で攻略していた時の記録が残っていた。
その映像がインターネットに投稿され、世間では別の世界の存在と一緒に五人のプレイヤーは社会現象となるほどに騒がれた。
「有香~、そろそろ学校行く時間よ、早くしなさい」
「うん」
「あんた…またその変な仮面を抱きしめながら寝ていたでしょう
気味悪いから捨てなさいって言ったでしょ?」
「………嫌」
「ならせめて学校に持っていくのだけはやめなさい」
「嫌」
「はぁ…はいお弁当
今日は寄り道しないで早く帰ってきなさいよ」
「行ってきます」
安曇有香、アイルの本名である。
一般的な家庭で育ち、父を早くに亡くし母と姉との三人暮らしをしていた。
幼馴染である同じ学校に通うミルリア、本名は森川未来に誘われて、【アースガルズ】をプレイすることになり、デスゲームに巻き込まれる。
そしてデスゲームから目覚めた有香は母と姉から叱られ、涙を流しながら有香の帰還を喜んだ。
長く眠っていたせいで体が硬直して動かせなくなり、有香は病院でリハビリを行い、今は普通と変わらない生活を送っていた。
「有香また告白断ったんだって?」
「うん」
「何で断ったの?
性格はいいし、顔もいい、成績は常に上位、そんでもってサッカー部のキャプテン…
この学校にあれ以上完璧な人はいないよ?」
「うん……未来の言う通りなんだけど…
告白を受けたとき、やっぱり違うって思っちゃったんだ…」
「………まぁ気持ちはわかるけど
有香…忘れろとは言わないけど、よく考えた方がいいよ
あれからライムといろんなゲームをやっても見つからなかったんでしょ?」
「うん」
「今は見つかった方が問題だけど……
見つかったとしてどうするの?結婚すると言っても私たちまだ高二だよ?
有香のお母さんとお姉さんが了承するとは思えないけど…」
「そう言う未来はどうなの?
念願の彼氏と別れたって聞いたよ?」
「何で知ってんの??」
「ライムがキスもしないで別れたってショーカが言っていたって聞いた」
「あのお喋り共!!」
世間では謎の五人のプレイヤーという話題で持ちきりだった。
プレイヤーを救った救世主として崇められ、彼らが階層主と戦っている動画をネットにあげれば再生回数は億を超えるものとなった。
しかし彼らの正体を知るものは、極僅かであり外見だけで判断しているものが多かった。
別世界の存在に学者が目を輝かせ、階層主と熱戦を演じた五人のプレイヤーに注目が集まった。
そんなことが続いたせいか五人のプレイヤーを名乗るものが現れると、【アースガルズ】をプレイしていた者たちを中心にネット上でバッシングの嵐が起こった。
「本当に私たちのいる世界とは別の世界が存在しているなら、ラノベとかの異世界召喚が本当にあるってことなんかな?
だとしたら行方不明になった人の中には異世界に飛ばされたってことになるよね」
「………どうだろうね
行く方法がわからないから解明しようがないけど」
「それにしても、エルが[仮面の戦士]ね
素顔はカッコよかったよね」
「…………」
「そんなに睨まないでよ、別に奪おうとは思ってないんだから」
「…どうだか」
「……そうだ!ちょっとその仮面付けてみたら?」
「え……」
「いいじゃん!減るもんじゃないし」
「じゃあチョットだけ」
ミルリアに促され、エルの仮面をアイルがつけた瞬間だった。
場所は変わりアイルたちのいる世界とは別のエル達のいる世界
そこでアリスがエルと話していると何かに反応した。
『ん!?』
(どうした?)
『………何でもない
暇だから寝るね』
(わかった)
アリスは何かを感じ取り眠りにつく…と見せかけて
エルの仮面をつけたアイルの目の前にアリスが現れる。
『ちょっとちょっと……変なところから信号が送られてきたかと思えば…
なーんでエルの仮面をつけてるの?』
「わっ!!」
「何!?」
「えっ…え?」
『ん?あぁ…私の姿は仮面をつけたあなたにしか見えないよ』
突然の出来事にアイルはアリスを見て大声を上げて驚き、何の前触れもなく現れたアリスに困惑していた。
アリスの姿がアイルにしか見えないとわかると、一人で騒いでいるとミルリアに思われることを避けようとし、直ぐに口を閉じる。
(何!?何これ!!え!!何なの!!?)
『何なのってこっちが言いたいよ
あぁーあ、エルの仮面を勝手につけて…』
(この仮面を取り戻しに?
嫌!返さない!!これは私のもの!!
あれ?外れない…)
『何やってんの…しょうがないなぁ』
アリスが仮面に触れるとアイルの顔に引っ付いていた仮面が外れたが、仮面を外してもアリスの姿がアイルの瞳に映っていた。
『その仮面は素材に魔鉱石を使ってエルが仮面を作りながら魔力を注ぎこんで作った特注品だよ
[認識阻害]の効果を持っているけど、相手が初対面じゃなければ効果は発揮しないと思っていたけど…
普通の人間がつけるとこんなにも変わっちゃうんだ』
(え?)
『ミヨコとの生活に嫌気がさしたエルがミヨコから逃れる為に泣きながら作ったやつだけど…
[認識阻害]の効果が出ないで終わった失敗作と私は思っていたんだけど、エルがつけて効果が変わったのかな?』
(………??)
『それにしても………ここがプレイヤーの現実世界か
凄いね、人類の技術の進歩ってやつだね』
(仮面を取り返しに来たわけでは?)
『それはエルが君にあげたものだ、取り返そうとは思わないから安心しな
ただエルから求婚を受けた事実は妬ましいと思っているよ』
(………)
エルがアイルに求婚した事実を聞いた時、アリスはアイルの命を奪った後に魂を食らおうと思っていた。
しかし今となってはそんな事をする気は無く、アイルに嫉妬している気持ちは変わらないが、不思議とアリスの中には殺意はなかった。
(エルは元気?)
『ピンピンしているよ』
(そっか)
『心配しなくとも、君がエルと会える日は来るよ』
(えっ…)
『私が来ることができたんだよ?可能性はある』
そのことを聞いてアイルの口角が緩んだのは言うまでもなかった。
エルがこの世界に来る可能性はゼロではない、だがエル達がこの世界に足を踏み入れた時、世界は混乱するであろう。
学者の研究材料にされたり、世間から注目を集めることになるとしても、アイルには不思議と不安はなかった。
それはエル達が世間の人々が思っているよりも、普通ではないことが一番の理由だった。
アリスがらしくもなくアイルに告げるとあることに気付いた。
『今わかったことだけど
君が仮面をつけている間、私は君の体に乗り移ることができるみたい
今度君の体を借りてこの世界を見てみたいな』
(うん…いいよ)
『やった!!楽しみにしているよ』
アリスとアイルの間でちょっとした友情が芽生えると、アリスはアイルとの会話を終え元居た世界へと戻った。
「有香…大丈夫?」
「うん」
アリスの姿が見えていないミルリアは、暫く黙ったままとなったアイルを心配すると、アイルはアリスとのやり取りをミルリアに話す。
そしてエルに逢う日を楽しみにして時が来るのを待つことにした。
エルのいる世界とは別に、アイルの世界でも戦いが始まることはまだ誰も知らない。
まだまだ続きますよぉ!!




