表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/76

第51話 completed the game

【祝】8000pv!!°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

ありがとうございます!

正直前に次回【デスゲーム編】完結と書いた自分をぶん殴りたくなりました

ですが無事書き終えよくやったと自分を褒めたくなりました。

これが最後、そう思うほどにエルは落ち着いていた。

観音菩薩の形態の変化で、シウラたちの緊張感が高まる。

普段ならば気分が高まり、無謀と分かっていても相手に立ち向かっていたエルだったが、エルは静かに剣を構えていた。

そして魔力を高めると翠の靄状の光がエルを包み込み薄い翠の光はエルの体を覆う。

すると濃い色をした魔力が炎のように左目に留まる。

このエルの姿にアリスと部屋の外で中の様子を見ていたミレスは、一人の女神の姿が頭に浮かぶ。



『(……この雰囲気…まさか)』

『(そんなはずは……しかしあれは…)』



するとエルの髪先が一部分、翠に変色していく。

アリスの魔力を纏った時のように、エルの髪の色が変わった。

そして部屋中を覆った魔力がシウラやセン、女神であるアリスにまでに幻覚を見せる。

森の中で木漏れ日が射す、そんなエルの幻覚によって自然を感じていた。

この幻覚をエルは無意識で発動してしまっていた。



(!!……これは幻覚か?いつからだ?エルの左目が光ったときか?

……いや、今考えていてもしょうがない、〈解呪〉)



このエルの幻覚を逸早く、センが解く。

観音菩薩が発動した〈解呪〉を一目見ただけで、センは〈解呪〉を使うことができた。

エルの幻覚を見ていたシウラとアリスは、センの〈解呪〉で幻覚が解ける。



『……今のは』

「セン助かりました」

「気にするな

それよりも……エルがあぁなっている以上、何が起こるかわからん…

俺たちも気を引き締めるぞ」

「………はい」



現在のエルの姿はセン同様に、シウラも初めて見る姿である。

アリスはエルの姿に心当たりがあるようではある、しかし確信をもって答えることはできなかった。

それは外で中の様子を見ているミレスも同じであった。

だが今はそのことについて討論しているところではない。

エルの変化に驚いている間に、観音菩薩は動く。

[千手観音菩薩]へと変形した姿となり、千本全ての手に武器を装備していた。

これにシウラとセンは身構え警戒をした。

だがエルは目をつむり、息を吐いた。

そして観音菩薩が一気に四方八方から全ての武器を振りぬいた時、観音菩薩との戦闘は一気に加速する。


場面が変わり入口付近では、ヤマトが体力の回復を早めるために眠りについている横で、ミカルが階層主の部屋の前に到着したプレイヤー達ともめていた。



「もう一度言ってみろ!!」

「何度でも言ってあげるわよ?

大して実力のないあなたたちがいても邪魔になるだけ、回れ右をして大人しく帰りなさい」

「百合カップルの片割れが調子に乗るんじゃねぇよ」

「別に調子に乗っているわけじゃないけど」



ミカルは第二十七階層を攻略に来た[神風]、[銀翼の天使]、[月虎]の団員が階層主に挑もうとし、階層主の部屋に入る前に止めていた。

今の状況を考えると、彼らが加わったら無駄に死者を出すだけとなると判断したミカルはお引き取り願おうとしたのだが、何かが間違いこの状況となった。



(何で怒っているの?事実を伝えただけなのに…

言い方が間違っていたの?

なら……)

「あなたたち程度の実力じゃあ足手纏いなの

だから邪魔をしないでもらえるかしら?」

「ミカル…その言い方で納得して帰る奴がいるわけないだろ」

「ヤマト、あなたはまだ寝てなさい」

「大丈夫だ、もうだいぶ回復した

前線に戻る」



ミカルがプレイヤーともめている横で、ヤマトが起き上がり背筋を伸ばす。

そして白衣を拾い着なおすとポケットから乾燥させた草を紙で巻いた筒状のものを取り出し、口にくわえ火をつけると、煙を吐いた。



「フーーーーーーッ…」

「ヤマト…何それ」

「ん?これか?これは乾燥させた植物を紙で巻いたものなんだよ。

これがうまくてな!やらないぞ?」

「あれ煙草じゃ……」

「バカ言え、煙草なんて実装されているわけないだろ」



ヤマトが吸っているのはタバコであるが、【アースガルズ】で実装されていないものであり、エルの世界でも出回っていない代物である。

だがヤマトは驚くことに、独学でタバコを完成させたのだ。

ミカルが知らなくて当然である。

ヤマトは煙草をくわえたまま、階層主の部屋へ入っていこうとしたが、入口の前で足を止めると振り向きプレイヤー達の方へ視線を向けるとタバコを掴み、煙を吐く。



「フーーーーーーッ……

攻略したいって気持ちはわかるが、お前らがあの中に入ってできることがあるかね…

よく考えてから中へ入るんだな」



ヤマトはそう言い放つと中の様子をプレイヤーたちに見せる。

実際に見てもらった方が理解できると思ったからである。

中で何が起こっているのか、それを見たプレイヤーたちは驚愕した。

あまりにも仮想世界であるとはいえ、チートなんて言葉では物足りないくらいの人間離れした動きに、プレイヤーたちは固まり邪魔をせずに黙って見ていることしかできなかった。



「はぁ…かっこいいなぁ…」

「……え?」



プレイヤーたちに忠告するように部屋の中の様子を見せたとき、ヤマトは階層主とエルが戦っている姿を見て信じられない言葉を口にした。

この世界に来てプレイヤーの可愛い女の子、または綺麗なお姉さんにしか興味を持たなかったヤマトがエルの姿を見てかっこいいと言ったのだ。

これにヤマトから一番被害を受けているミカルには衝撃だった。

やまとが発した言葉

聞き間違いかもしれないと考えこんでいると、ヤマトが部屋の中に入っていくのに気づき、ミカルはヤマトの後を追った。

すると……



「待って!!」

「ん?おっ!可愛いなお前!」

「ヤマト!!」

「冗談だよ、冗談……

何?」

「あの……その……えっエルは…」

「あ?エルなら……!

あーー!!なるほど!!」

「?」

「お前か!!エルが求婚したっていう子は!!」

「…………何で知って」

「あぁ~あ、残念…

こんなかわいい子に求婚したとわかっていたら、今すぐからかっていたところだが…

状況が状況だからな~」



ヤマトがエルに加勢しようと中に入ろうとしたとき、一人のプレイヤーがヤマトを呼び止める。

その声にヤマトは首を動かし視線をプレイヤーに向ける。

そしていつもの癖が出るとミカルに怒られた。

女のプレイヤーはヤマトにエルの居場所を問うと、ヤマトは一瞬で察した。

ヤマトはプレイヤーの表情、仕草、声のトーンから相手の感情を読み取り、このプレイヤーがエルに求婚されたアイルだと一瞬でわかり、その瞬間ヤマトはにやつきが止まらなかった。

今すぐにでもアイルと一緒にエルをからかいたいところだったが、今はそれどころではない。



「しょうがねぇ…じゃあ中に入ってエルの最後の勇姿をその目に焼き付けろ。

その間、アーシとミカルがお前を守ってやる」

「………ありがとう」

「気にするな、エルの嫁さん

お前らはいいのかな?こいつのパーティーメンバー」

「……じゃあ頼む」

「フフッお願いするわ」

「あっ…よろしくお願いします」



アイルの他にライム、ミルリア、ショーカが後に続き階層主の部屋の中へと入っていく。

そして想像を絶する戦いが部屋の中で行われ、これが最後だとは知らずに、アイルたちはこの世界で最後となるエルの戦いをその目に焼き付けていた。


金属と金属の激しい衝突音と攻撃が地面に当たることで地面にひびが入り揺れていた。

そして武器を所持した千本の手から繰り出される上下左右前後斜めからの攻撃がエルに襲い掛かる。

しかし変幻自在の剣捌きで手首を軽やかに円の字を書くように反し、観音菩薩の攻撃を凌ぐ。

避けられない角度からの攻撃は剣でいなし、その他の攻撃は最小限の動きで避けていた。

だがエルは避けるだけで終わらずに観音菩薩へ攻撃を与えていた。

エルの軽快な動きは見る者を魅了していた。

上段左右正面からの攻撃は、その向かってくる力に逆らわずに向かってくる力を利用してて剣で攻撃の進路をずらしと体に当たらない方向へ逸らし、そして足元を狙い横なぎに来る攻撃は側宙でかわす。

観音菩薩から絶え間なく繰り出される攻撃を、部屋中の隅々まで動き回り攻撃する機会をうかがいながら攻撃を受けることなく避け続け、この時のエルは完全に観音菩薩の攻撃を見切っていた。



(あぁ…何だろうな…これ

頭の中がクリアになっているせいか、視野がいつも以上に広がっている

それにいつもの俺なら目の前の強者と戦っている時は感情が高ぶり、我を忘れていた

でも今回は…音が遮断された空間にいるみたいに静かで、落ち着く…

必要なものだけが頭にあるせいか体がよく動く…

……いや、こんなもんじゃない!!

あの二人は決してこの程度の力で満足はしない!!

まだ…ギアは上がる!!

それでこの戦いで限界値を振り切ってやる!!!)


「ハハハッ!!!」

「ん!!?」



エルの異変にいち早く気付いたにはヤマトだった。

医師であるが故の観察眼とエルの魔力の動きから、エルの異変にアリスよりも早く気付く。

魔力の増量だけではなく、髪の色の変化ではなくもっと別のエルの異変、それはアリスしか知らないものだった。

しかしヤマトはそれを表には出さずにアイルたちの護衛に集中した。



(………あいつの左目…それだけじゃねぇ

右腕、右脇腹、左脚…)



一人の医者としてエルの状態を見ているが、見れば見るほどに謎は深まるばかりだった。

短時間ではあるがエルと同様に女神の魔力を使っただけで、体力、魔力が枯渇した状態となったヤマトは、長時間女神の魔力を使い続けているエルがありえなかった。

異常と言ってしまえばそれで終わりになるが、ヤマトはそれで終わらせたくはなかった。

だが今それを考えているほどの時間はなかった。



「ッ!!」

「!!」



この日、エルの二度目の変化にサポートをしていたシウラとセンはエルから離れるように後ろに引いた。

湧き上がるようなエルの中にあるただならぬ気配が殺気と共に膨れ上がる。

その瞬間、炎または魂のように左目に留まる光はより一層濃くなり、エルの髪の色が翠と白が混ざった色へ染まる。

次から次へと湧き上がる魔力、鋭さが増す殺気、シウラとセンは後ろに下がり「これ以上踏み込むのは危険だ」と本能が後ろから手を引くようにして止めた。

今の状態のエルをサポートしようとしても邪魔になり、エルの攻撃に巻き込まれる恐れがあったからだ。

普段ならば周囲をよく見て動いていたが、今のエルには周りが見えているのか怪しかった。

だからシウラとセンは後ろに下がったのだ。

すると観音菩薩の攻撃がピタリと止み、それと同時にエルも地面に両足をつけ、観音菩薩の正面に立ち相手の様子を伺った。

観音菩薩は所持していた武器を全て離し、中心部にある本来の観音菩薩の手を胸の前で合わせた。



「………嘘だろ」

「……エル様」



その他の観音菩薩の無数の手はエルに向け、その手に光が凝縮していった。

先程エルに放ったものとは比べ物にならないほど威力と光の数が増えていた。

これに対しエルは、表に出し続けていた魔力と殺気を抑え、何もない状態の無となっていた。

そして……


〈念陽…〉


(……見えた)



観音菩薩の無数の手〈念陽弾〉が放たれようとした瞬間、エルは観音菩薩の前から消えたと同時に、〈念陽弾〉は放たれる前に消滅した。

気づくと観音菩薩の肩から腰までにかけて一本の線が入っていた。

そして目の前にいたエルは観音菩薩の後ろにおり、[龍牙]を鞘に納めた時、観音菩薩の体が徐々に炎に包まれていった。



「……見事」



魔物である観音菩薩の口から言葉が発せられると、それを最後に観音菩薩は炎とともに消えた。

【アースガルズ】の最終ボス、観音菩薩はエルの手によって倒された。

観音菩薩の体が完全に消えると、エルはアリスの魔力ともう一つの魔力を解き、変色していた部分が元に戻った。

観音菩薩が倒されると、空中に「completed the stage」の文字が浮かび上がり部屋の外で待機をしていたプレイヤーたちは歓喜の声を上げる。

それと同時にプレイヤーたちの体が発光していき、各階層のプレイヤーたちの体が発光しプレイヤーたちは空へ登っていく。



「…ゲームをクリアしたのか」

「やった…やった!!帰れる!!」

「うぅ…よがっだです…」

「エル!!……えっ」

「悪いが…俺らはここまでだ」

「………?」

「俺はお前らと共にはいけない」



アイルたちはエルの言っている意味が分からなかった。

ゲームをクリアしたのにもかかわらず、エルも他にシウラ、セン、ミカル、ヤマトの体に変化がなかった。

百階層の階層主を倒しゲームをクリアしたことにより世界が崩壊していく中、次々とプレイヤーの体が空へ登っていき、体が発光して徐々に消えていく。

そしてアイルたちの体も空へ登っていく。

エル達は地に足がついたまま空を見上げ、登っていくプレイヤーを見届けていた。



「エル…シウラさん…」

「エルさん!!シウラさん!!」

「ちょっと!!冗談でしょ!!?

これで別れるなんて!!

ねぇ!!エル!!シウラ!!」

「……お元気で」



ミルリア、ショーカは大粒の涙が溢れ、手で拭っても拭っても涙は止まらなかった。

突如訪れた別れ、それを事前に知っていなければシウラも大泣きをしているところだった。

今は涙を流しながら別れを惜しむ二人を笑顔で見送り涙が出ないように必死に我慢をしていた。

しかしここで泣くわけにはいかなかった。

ミルリアとショーカの以上に、この残酷な事実に直面して涙を流した者がいたからであった。



「嫌だ…嫌だよ!!エル!!

こんなのってないよ!!

あなたの残りの生涯を私にくれるって言ったじゃない!!

嫌だよ!!これで別れるなんて!!

ねえ!!エル!!」



アイルはエルに向かって泣き叫ぶ。

だがいくら叫んだところで、エルはアイルと共にいけはしない。

元々二人は住む世界が違い、その事実をアイルは知らなかった。

大粒の涙を流すアイルを見て、エルは仮面に手を当てる。

そしてライムたちの前で初めて仮面を外し、最後にこの世界でエルと会ってから一度も素顔を見せる事のなかったエルの顔がプレイヤー達の瞳に映った。

エルは片手に持つ仮面をアイルに投げた。



「………えっ」

「じゃあな」



エルは最後に手を挙げ、別れの動作をプレイヤーへ向けて送った。

それを最後にアイルたちの体は光とともに消えた。



「……最後の最後でソレは……ズルイよ」



エルの素顔がアイルたちの瞳に移り、笑顔で見送られプレイヤー達は現代世界へ戻った。

目を覚ますとアイルの目には病室の天井が映り、手には何故かエルの仮面が置いてあった。

現実世界に戻ったアイルの枕は涙で湿っていた。



「…………噓つき」



[completed the game]

次回から新章に入ります

ですが【登場人物紹介】か【デスゲーム編】のその後の閑話を入れるかもしれません

そこらへんはまだ未定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ