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第48話 間違った選択

【祝】6000pv!!°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

ありがとうございます!


頬を叩かれ、胸ぐらを掴まれている光景に周囲にいる人々は、只々呆然としていた。

だが一人、周囲とは違う反応をしたものがいた。

アイルがエルの胸ぐらを掴み、顔を引き寄せた瞬間、剣を抜きアイルの首をはねようとした。



「シウラ」

「…ッ!……はい」



エルはアイルへ敵意をむき出しにしたシウラに声をかけると、シウラは一息つくと気持ちを落ち着かせ剣を収めた。

しかしシウラの鋭い視線はアイルに向けられたままである。

アイルのこの行動にどうしていいかわからず、ライムたちは止めるタイミングを失った。



「…………」

「…………」

「……ちょちょっとアイル?」

「えっ…どっどうしましょう…ライムさん」

「俺に聞かないでくれ…」



エルとアイルの睨み合いが五分間続き、ようやくアイルの口が開く。



「………そんなに私たちが信用できない?

そんなに私たちが邪魔?

あなたにとって私たちは足手纏いでしかないの?」

「……そうは言っていないだろ」

「そう言っているように聞こえるのよ

大人しく待っていればいいですって?

ふざけないで!!

それであなたが死んだら私には後悔しか残らないのよ!!」

「いや…別に死ぬわけじゃない…」

「この世に絶対なんてないのよ!」



この時アイルの訴えが何を示しているのか、この時エルは漸く気が付いた。

アイルはエルがまた一人で攻略を行おうとしていると思っていたのだ。

死ぬ確率が一番高い第二十七階層攻略に誰の手も借りずに攻略を行うのは、プレイヤーからすれば自殺に等しかった。

例えここまで一人で攻略を行ってきたとしても、エルが死ぬつもりであると見えてもおかしくはなく、よって大人しく待っていろというのは、エルが死ぬ時を黙ってみていろと言っているのと同じだった。

しかしライムたちは何もできずに黙って見ているのとは違い、エルの手助けをすることができる。

だがエルはそれを拒み、自身の力のみで解決しようとしていた。

エルから見ればライムたちは実力不足であることは重々承知であるが、それでも何かエルの役に立てることはないかを探して力になろうとしたところで、エルからのあの言葉である。

エルは決してライムたちを邪魔者扱いしているつもりはなく、プレイヤーを死なせないための最善策だった。

だがこれにアイルは不服だった。

これにアイルは怒り、我慢できずにエルの頬を叩き、胸ぐらを掴む。

その後の訴えで、アイルが何を思っているのかを理解したのだ。



「何か勘違いしているようだが、俺は第二十七階層を一人で攻略するつもりはない

だからさっきシウラに他の奴らを呼ぶように言っていただろ

聞いてなかったのか?

それに俺は死ぬつもりなんて全くない」



アイルの心情を悟り、死ぬという選択肢すらなかったことを理解してもらうために、らしくもなく言葉を選んでアイルの誤解を解くことに専念した。

普段のエルならば「それがどうした」と言い放ち、相手を怒らせていた。

これにシウラは珍しいものを見たかのような表情をエルに向けていた。

ただアイルを安心させたいという一心でアイルにかけた言葉だった。



「…………本当に?」

「あぁ…、信じられないか?

ならそうだな…」



ここでエルは後になぜこの言葉が出たのかと後悔するほどに間違った選択をした。



「俺の残りの生涯をお前にくれてやる」


…………


「「「はぁ!?」」」

「……ん?」

「……エル様……今何と仰いましたか?」

「…………俺…今何て言った?」



エルは自分が今何を言ったのか気づいたとき、自分でも表情が真顔になっていることがわかった。

自分でもなぜこのようなことを言ってしまったのか、考えれば考えるほどにわからなくなっていった。

それ以上にシウラもなぜエルがあのようなことを言ったのか理解できなかった。

エルの口から絶対に出ることはないと思っていたからなのか、シウラは意識が飛びそうになった。

エルは過去にエルに同じような言葉を掛けられ、言われ慣れすぎていた。

だが自分も誰かに言ってみたいとは思わなかった。

しかし安心させるために言ったことが、言葉を選びすぎて出た言葉が求婚とは誰が思うだろうか、言った本人ですら驚いているのだ。

エルは頭を悩ませた。

今エルの中で眠っている問題児アリスがこの事を知れば面倒だからである。

幸いアリスは寝ており、問題発言を聞いていない。

問題はシウラであり、既に放心状態…確実に気付かれる。

だが一つだけアリスに気づかれない可能性があった。

それはアイルが先ほどの言葉をまともに受け取ってはいないという可能性…

その可能性があれば確実にどうにかできる問題だった。

そんな希望を抱きアイルに視線を向けると…



「……っ」

(…マジか)



アイルは顔を赤らめていた時点で、微かな希望は消え失せた。

なんということでしょう、アイルはエルの言葉をまともに受け取ってしまっていたのだ。

少女が初めて恋をしたかのような表情を浮かべ、胸元を手で抑えていた。



「…………」

「…………さてと…シウラ、そろそろ行こうか」

「……はい」



これ以上この空間にとどまることに耐えかね、エルは直ぐにこの場から離れようとしたが、この場を去ろうとしたとき、アイルがエルの服をつかみ引き止める。

そしてエルの仮面の奥にある瞳をまっすぐ見つめていた。



「ねぇ……さっきの本気?

本当に……貰っていいの?」

「…………好きに受け取ってもらって構わない」



アイルは顔を赤らめ、目に涙を浮かべていた。

エルの放った言葉が真実であるかを幸せそうな表情を浮かべながら問い掛ける。

問うてくるアイルの表情を見たエルは、自らの過ちによって出た言葉だとは言えず、答えの判断をアイル自身に委ねた。

エルの返答を聞いたアイルは、嬉しそうに小さく笑った。

そのアイルの表情を見たエルは溜息をつき、その場を後にする



(……クソッ、そんな顔をされたら間違いでした何て言えねぇだろうが)

「…………」

「シウラ」

「………はい」

「一刻も早く攻略を終わらせる

そんでもって……なかったことにするぞ」

「はい!!」



エルはこの時、このゲームを一刻も早く攻略すると誓った。

そしてこの事実をなかったことにしなければ、自分の命が危ういからである。

もしこの事実をアリスとあの二人が知れば、死ぬほうがマシであるようなことが起こるからである。

エルから見ても、他の人から見ても重度のブラコンであるミヨコとサクヤに知れ渡れば、エルは確実に外出禁止となり、死ぬまで二人のそばから離れられなくなるのは確実だった。

そうならないためにエルは放心状態のシウラを正気に戻さなければならなかった。

そして攻略する事でプレイヤーは現実世界へ帰還し、それぞれの世界へ戻る。

アイルたちとは攻略を終えた瞬間に別れることにはなるが、最悪の未来は免れる。

二人からに捕縛から逃れられる道は一つしかなかった。

エルは最後の攻略へ向かうのだった。



「フフフッ…」

「…………良かったな」

「……おめでとうございます」

「……帰る前にちゃんと住所聞いときなさいよ?」

「うん…」



ライム達から祝福を受けているアイルにはエルと共にこの世界にいられる時間が残り少ないことは知るわけもなく、アイルは喜びを噛み締めていた。

そしてエルとの別れは一刻一刻と迫って来るのだった。

デスゲーム編はあともう少しで完結です

熱い戦いでラストを占め新章に入れるように頑張ります


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