第42話 変装
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ありがとうございます!!
ここから100話以上を目指して頑張りたいと思います!!
いつも通りの朝、いつも通り店内を掃除してから開ける。
武器を作り商品として並べる。
来店してくるプレイヤーと雑談をして、商品を売る。
夜になると店を閉めて一日を終える。
このいつも通りの生活を送り、エルは退屈だと思った。
その理由は、いつもエルが人気のない時間帯を狙い真夜中にダンジョンへ入る筈が、プレイヤーがエルが入ろうとした時間帯にダンジョンへ入って行くからである。
そのせいで第二十六階層を攻略しようとしても、プレイヤーが邪魔でダンジョンに入る事が出来なかった。
しかし良いこともあり、店の売り上げがほんの少し上がっていた。
だが喜びは一瞬だった。
この姿をアリスに見られ心配された。
退屈すぎてテンションがおかしくなっていたみたいだった。
そしてエルは真夜中にダンジョンへ行くのをやめ、時間をずらし早朝に攻略を行うことにした。
(この時間帯なら大丈夫だろ)
『……だと良いね』
(何だよ?
何が言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ)
『いやね…
私はエルが良ければそれで良いと思ってるよ?
人の事をあーだこーだ言うのは好きじゃない訳』
(?)
『でも敢えて言わせて貰うね…』
(何?)
『ダサい!!!
何その仮面は!!?』
「何だと!!!」
『ダサいでしょ!!?
どう見ても!!』
「何処が!!?」
早朝からエルの怒鳴り声が街中に響き渡る。
今エルが着けている仮面は、黒く光が反射するような色をし、目の部分に穴が空き、口が耳にかけて裂け鋭い歯が並んでいる…
そんな仮面をエルは装着していた。
これはエルがゼロの世界にいた頃、暇な時に作っていた仮面であるが、仮面をつける日なんて来ないと思っていた。
そしていざ着けていると、我ながら中々のセンスをしているのではないかと思った。
アリスからダサいの一言を突きつけられた時には耳を疑った。
アリスからのあり得ない一言に、エルはアリスが周囲の人々には見えていない事を忘れ、大声を上げてしまったのだ。
「ケッ!
どうせお前にはこの仮面の良さがわかりゃしねぇんだ」
『わからなくて結構です〜
私にはその仮面の良さは理解できません〜』
「なら寝てろ!!」
朝早い時間だった事から、エルのこの大きな独り言はプレイヤーには聞かれていなかった。
アリスの声はエルにしか聞こえていないので、一人で大声を出している変な奴と認識されてもおかしくはない。
変人認定を辛うじて避けることが出来た。
一部を除いて…
エルは仮面を外すことなくダンジョンへ潜ろうとした時だった。
何者かに背後から喉元に剣を突きつけられた。
(ん?)
「失礼します…
脅す形となり御無礼かと思いますが、ご質問をさせていただきます。
貴方がこの地へ来た理由をお伺いします。
見た限りですが[devils joker]の者ですよね?
[devils joker]の構成員がダンジョンへ潜るとは考えにくかったもので…
さらに[devils joker]の構成員は全て把握していますが、貴方のような者の情報は入って来ていません。
新しく所属された方ですか?」
「何言ってんだシウラ?」
「え?」
振り向かずとも後ろから剣を突きつけて来た者が誰であるのかわかった。
殺気、声、喋り方からしてシウラであった。
シウラが仮面をつけたエルだと気づかず、格好からして[devils joker]の構成員だと勘違いしてしまっていたのだった。
「!?、エル様!!?
しっ失礼致しました!!」
「…あぁ、お陰で初対面の頃のお前を思い出した」
シウラはエルに気づくと慌てて剣を収め、見事な土下座を披露した。
早朝だった事から、[神風]の副団長が仮面をつけた変人に土下座するという異様な光景を団員に目撃されることはなかった。
「……それでエル様は朝早くにどちらへ行かれるのですか?」
「その質問をそのままお前に返したい」
「私はダンジョン内の調査を行い、団長への報告です」
「それ副団長のやる事か?」
「仕方がないですよ…
私以外の団員が調査を行うと、有益な情報が手に入りませんから」
「……大変だな」
「…ところでエル様はそのような格好でどちらへ?」
「ん?俺は調査じゃなく攻略…
前は夜中に行ってたんだが、やたら人が多くてな…
だから一眼の少ない時間を選んで朝早くに仮面をつけてダンジョンへ潜るんだ」
「……大変ですね」
シウラはダンジョン内の調査、エルはダンジョンの攻略と中に入る目的は同じだった。
エルは一人で攻略を行う為、面倒ごとを避けていた。
一眼の少ない時間を選び、変装をして、揉め事を引き起こす原因となるものを削っていた。
何より一人でいる方が周りに気を回す必要が無く、それが心地よかった。
シウラは命の危険が及ぶダンジョンの調査を一人で行い、無事に帰還し団長へ報告するのが目的であった。
命を落とす確率が高い中、一人で調査するのは団員が足手纏いであるからだった。
例え実力はあっても、シウラの戦いを目にすれば高い自信は消え去る。
シウラからして見れば口に出さずとも戦闘時に周囲に気を配らない戦い方から、団員に邪魔だと無意識に空気で語っていた。
そして団員たちはシウラに近寄らないようにしていた。
そこから[冷血女王]と呼ばれるようになった。
「じゃあ久々に二人で行くか?」
「!、……フフッ望むところです」
「腕鈍ってないだろうな?」
「それは心外ですね…
[神風]副団長とはいえ、私は団長よりも強いですよ?」
「[神風]の団長って強いのか?」
「プレイヤーの中では五本の指に入ると言われています
勿論、エル様を除いた五本ですけど」
エルとシウラは笑いながらダンジョンへ入って行く。
あの[冷血女王]が仮面をつけた男と一緒に攻略を行うのは、[神風]の団員やその他プレイヤーからすれば有り得ない光景だった。
人に化けているシウラはプレイヤーから見ても美人であり狙っている者も少なくなかった。
それでも手を出そうとしないのは、[冷血女王]の肩書きが阻止しているからであった。
だが今、[冷血女王]は男とダンジョンへ入って行ったのだ。
「……今の見た?」
「うん、あの[冷血女王]が男と歩いてた」
「何なんだアイツ?
あんな奴見た事ないぞ」
「私も…」
「……っていうか何?あのダサい仮面
あんな仮面、実装されてたっけ?
「知らない…」
「それにしても[冷血女王]が親しげにする人なんていたんだ」
「それは俺も驚いた」
「………ちょっと後をつける?」
「うん」
「そうだな」
この時エルとシウラがダンジョンへ入って行ったところを、四人のプレイヤーに目撃された事はエル達はまだ知らない。
そしてここから四人のプレイヤー達により、エルの知らぬ間に予想外の展開へと流れて行った。




