表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/76

第41話 情報収集

センは第一階層の地下にある管理室で現実世界、仮想世界、プレイヤーの事を調べていた。

プレイヤーは死とは無縁の生活を送っていたところに、命を落とす危険の無い筈のゲームで生と死の境目を歩いている状況に何の前兆もなく立たされていたのだ。

死への恐怖、後悔、懺悔、そういった負の感情がプレイヤーの身を包んでいた。

生き残る為に、攻略する為に生き急ぎ第二階層から第十九階層まで死の連鎖が止まらなかった。

常に死が間近にある生活をしていたエルには死への恐怖が無縁だった故に、プレイヤーの気持ちがセンの話を聞くまでわからなかった。



「成る程ね」

わたくしもギルドへ所属するまでは、プレイヤーの気持ちなんて興味がありませんでしたのでセンの話を聞くまでは理解が及びませんでした」

「だからお前は団員から冷血女王と言われているんだ」

「えっ…何ですかそれは、初耳なんですが」



ダンジョン攻略の際、シウラは眉、目元、口元を動かさず無表情で魔物を相手にしていた。

中にはプレイヤーがシウラの命を狙ってくる例もあった。

しかしその際にもシウラは表情を崩さずに対処を重ねていた。

シウラのその姿をプレイヤーから自分の手を汚してでも生きる為には手段を選ばないという姿勢に見え、そして冷血女王という異名が付いた。



「それでその石碑はどうした?」

「急に謎の斬撃が上から降ってきて部屋諸共石碑も破壊された」

「………ソウデスカ」

「アンタ今何で目を逸らしたの?」



センがいつ石碑で調べていたのかエルはわかってしまった。

管理室を部屋ごと破壊したのは原因はエルであるからだ。

エルが第二十階層で階層主の悪魔王に与えた[断罪の大鎌]が管理室と石碑を破壊したのだ。

目を少し逸らした瞬間をミカルは見逃さなかった。



「まさかとは思うけど……数日前の大きな破壊音…それと何か関係ある?」

「ギクッ!」

「ふーん、心当たりがあるんだ」

「大きな音……それは突如空間に切れ込みが入ったアレですか?」

「………」

「どうなの?」

「………俺がやった」



そこから説明と説教を合わせて三時間を超えた。

第二十階層から第二十五階層まで一人で攻略した事、アリスの力を借りて世界ごと破壊しそうな威力の魔法を放った事、洗いざらい全て話した。

プレイヤーやこの世界のことを忘れ、エルはミカルに激怒された。



「アタシが帰った後に行ったの?」

「正解」

「全くアンタは…」

「いやぁ…俺もアリスも、あそこまで威力が出るとは思わなくてな

正直焦った」

「はぁ…女神との合わせ技なんて…

世間に知られたら大変なことになるわよ?」

「それは大丈夫だ、あの技は罪人にしか発動しない」

「へぇ…[和名持ち《ネームド》]にそんな技が使えるのか…アーシも初耳だ」

「ん?もういいのか?」

「いや〜?ミカルとのスキンシップはまだ足りない

でもそっちも気になる

女神との合わせ技ってヤツ」



[和名持ち《ネームド》]と女神の合わせ技

女神の魔力を自身に流し纏わせ、自身の魔力と女神の魔力を融合させると、普段の魔法の数倍の威力を放つ事ができる。

だがエルが使った技は、試行錯誤して編み出したオリジナルであるが故に他の[和名持ち《ネームド》]と女神がエルと全く同じ技を使えるとは言えなかった。



「憑いてる女神が違うからな、合わせ技については自分に憑いてる女神と相談しろ」

「そうだな、そうするよ」



ヤマトは納得すると、ミカルとのスキンシップに戻る。

ヤマトの動き止まり少し安堵していたミカルだったが、再びヤマトが動き出すと引き離そうと顔を押しのけたり手を払ったりしているが離すことは出来ない。

遂には涙目で助けを訴えかけてきたた。

しかしヤマトを止められる者はいない。

前にセンがヤマトを止めようと試みた事はあったが、全て失敗していた。



「よし!今日はこれで解散するか!」

「んなっ!!」

「マジで!?」

「そうですね」

「あぁ」

「んじゃ!お疲れー!」

「お疲れ様でした」

「お疲れ」

「ちょっと待ってよ!!

せめてアタシを助け…」

「それじゃあミカル、部屋に戻ろうか!」

「いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」



この日の夜、女の悲鳴が第十八階層に響き渡った。

そして次の日の朝にはヤマトが街中で女プレイヤーにナンパをしまくっていた。

ミカルは1日部屋から出て来なかったという。



「ヘイ!そこの彼女!!

アーシとお茶しない?」



この報告をしてきたのはセンだった。

現代世界の事をより詳しく知る為に、プレイヤーから話を聞いていたところ、ナンパしているヤマトを見かけたそうだった。



(相変わらずだなアイツは…

ミカルも可哀想に)

「アレお前さんの知り合い?」

「いや?全然?」

「そうか……最近よく聞くんだよ

女が女をナンパしてる噂…

まさかとは思ったが本当にいたんだな」

「そうだな」



センが今話している男は、この世界でセンが知り合ったプレイヤーである。

この男は前戦から引き、主に情報を提供したりアイテムの交換を中心に活動しているものである。

常識的に考えれば、攻略を急ぐプレイヤーと情報を提供し安全な位置で誰かが攻略するのを待つ者とは生きられる確率は大幅に違う。

事実この男みたいに前戦から身を引き、情報提供や鍛冶屋を開くプレイヤーは少なくなかった。



「それで?

今日は何の用で来たんだ?」

「そうだな…

現代の事は聞いたし、このゲームの創作者、現代のプレイヤーの状況、武器、装備の事は聞いたから…

じゃあギルドの情報を聞こうか」

「ギルド?」

「何か色々あり過ぎて何が何だかわからないんだよ」

「[神風]、[銀翼の天使]、[月虎]、[devils joker]

有名どころはこの四つと小規模のギルドが複数ある

後はギルドに所属していないがパーティーを組んでる奴らもいる。」



[神風]はシウラが現在所属しているゲーム攻略に力を入れ、ゲーム屈指の実力者が集う緑色の鎧や騎士服を装備している大多数のプレイヤーが所属しているギルドである。


[銀翼の天使]は主にゲーム内の治安を守り、階層内に複数の隊員が配置されゲームの規則を破り反則行為をしていないかの見回りを行なっている。

ゲーム内での殺人を抑制にも貢献している。


[月虎]神風に負けず劣らずの実力者が所属している少数精鋭のギルド

攻略にも積極的に参加しているが、月虎からは未だ犠牲者は出ていない。


[devils joker]犯罪者ギルド

この世界での死は現実世界と同じ死である事を理解していながら、殺人を繰り返す最悪のギルド。

アジト、構成員、リーダーが不明でありギルドの情報が全くない。



「ところで実は妙な噂を耳にしたんだが」

「?、アレじゃなく?」

「お姉さん本当に綺麗だねーー!!

アーシが男だったらほっとかないよ!!」

「………あぁ…アレじゃなくて」

「どんな?」

「攻略組に加わってる奴から聞いたんだが

知らない間に各階層が攻略されているのは知ってるだろ?

余りにも早すぎると誰もが不思議に思って、各ギルドの団員にそいつが聞きたんだとよ!」

「何を?」

「それがな、そいつの話によると、一気に十九階層から二十五階層までを攻略したのは一人だって話だってよ」

「それはマジか?」

「それがわからねえんだ

誰も一人で攻略した奴の姿なんて見ちゃいないからな

そんなチートみたいな奴がいるわけがないと思うんだが…

可能性があるとしたら[冷血女王]だろう」

「……ソウダネ」



センはこの男の予想が外れているのをわかっているが、表へは出さなかった。

このゲーム世界での謎となっている空間の切れ込みとダンジョンを一人で攻略している奴が同一人物だと知っていても言わなかった。



「それで俺の知り合いが近々二十六階層を調査しにいくそうで

これは噂関係無く、二十六階層のダンジョンへ入るってよ」

「へぇー…」



センはこの時、まさかこの男の知り合いとエルがダンジョンで鉢合わせになるなんて思いもしなかった。

エルの戦っている姿を目撃すれば誰もがチートだと思うので注意を払っていだが、センは話を少し聞き流しエルへ連絡するのを忘れた。

第二十六階層の攻略している姿をエルは初めてプレイヤーに目撃される事になったのを、エルはまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ