第39話 一人の冒険者
報告遅れました
(*'∇')/゜・:*【祝】*:・゜\('∇'*)
3000pv
40話だけデスゲーム編から離れます
新キャラ登場です!
場所が変わり、エル達がゲーム内へと入った場所から数万キロ離れた都市、ナヒヤ帝国内。
ここで新たな[和名持ち《ネームド》]が動き出す。
【ナヒヤ帝国】
世界最大の軍事国家。
世界征服を目論み、冒険者や表に出ていない実力者を引き抜き騎士団に所属させ皇帝直属の騎士団を立ち上げる。
そして魔法の研究を行ってはいるが、さらなる高みを目指すというものではなく、亜人を捉え人体実験を行なっている。
帝国は世界征服を成し遂げるためには、どんな手を惜しむことなく使い、帝国が最強国家である事を証明する目的で動いていた。
そんな状況下の中、一人の冒険者が帝国へ訪れ、歩くだけで街の人々を魅了していた。
至極色の頭髪、水色と黒のオッドアイ、その姿は歴戦の戦士であれば一目で敵わぬと思わせるほどのオーラを醸し出していた。
「おい!そこのお前ちょっと待て!」
「?」
「冒険者の分際で皇帝陛下からの招集を断るとは何事だ!!」
彼の背後には鎧を纏った騎士たちが剣や槍を冒険者へ向けて構える。
怒りの形相を浮かべ、いつ冒険者へ切り掛かってもおかしくはなかった。
この冒険者は帝国の皇帝から書状が送られ呼び出されていたが、中身を確認せず破り捨て街を出ようとした。
そして今の状況となっている。
「………」
「!!、……この…お前達!あの愚か者を引っ捕らえろ!!」
冒険者は一回後ろに振り返るも、一瞬騎士達を見ただけでそのまま歩いて行く。
この行動に騎士達は冒険者へ一斉にかかる。
冒険者は歩きながら腰にある剣に触れた、その次の瞬間に騎士達は地面に転がっていた。
冒険者は歩みを止める事なく歩みを進めていた。
その光景を捕らえるよう指示した騎士は、突如倒れた者達を見て目の前で何が起こったのかが一瞬の事で理解できていなかった。
騎士は頭に血が上り、状況を理解ができていないまま、剣を抜き冒険者へ切り掛かろうとした。
しかし動こうとした時、騎士の意識が途切れ他の騎士と同様に地面に転がる。
騎士達が当然倒れた様子を目撃している人々が理解できずに固まっている間に、冒険者は帝国から出て行った。
暫くすると兵士が現場へ到着すると、騎士達を運び目撃した人々へ事情徴収を行なっていたが、この騒動に多数の目撃者がいるにも関わらず、上手く説明できたものは一人としていなかった。
「…俺からの招集を断るとは…身の程を知らないやつだな」
「無礼極まりないですな!皇帝陛下の招集を断るとは…
引っ捕らえて処刑しましょう!」
「まぁ待て、俺は奴の実力を見込んで配下にと思ったのだ。
それに我が帝国から一人の冒険者が逃げられるわけもない…
死にたくなければ俺の配下に加われと脅せば直ぐに奴の方から現れるだろう?」
「左様でございますな!どんなに腕に自信がある冒険者とて、我が帝国の力に屈するでしょう」
そして騎士を冒険者の元へ向かわせた皇帝は、招集を断り騎士が冒険者に倒された知らせを受け、直ぐに兵士に元凶となった冒険者を連れてくるように命じると、次の日から帝国で騒動を起こした冒険者は指名手配となる。
冒険者の目撃情報が出れば直ぐに帝国の兵士が駆けつけていたが、冒険者と対峙した兵士は一人残らず返り討ちとなった。
予想外の全滅の知らせを聞いた皇帝はムキになり、何度も冒険者へ刺客を送るが、結果は同じだった。
送り出した兵士は全員が重傷であるが、命を奪われることはなく生きて帰ってきていた。
帰ってきた一人の兵士は皇帝の元へ向かい玉座の前で報告を行う。
「(……人はそれぞれが違う考えを持ち、その考えが必ず正しいと勘違いしている。
間違いを正さず、誤った道を選択していることに気がつかない。
貴族出身の者は皆、自分が間違っていても認めない。
その貴族特有の性格が視野を狭くし、その傲慢な考えが思考を鈍らせる。
国王も同じ、一番であることに執着し簡単な問題でも力で解決する。
自分たちが強者であると勘違いしている愚かな人間どもに、俺を倒すことは出来ない。)…と」
「………クソが」
「何という無礼な奴だ!処刑だ!必ず捉えて処刑しましょう!」
「そうだな…俺に楯突いた事を後悔させてやろう…
殺しても構わん!奴の首をここへ持って来い!」
ここで皇帝は引き下がることはせず、冒険者を捕らえる事をやめなかった。
勝てないとわかっていても、皇帝のプライドが邪魔をしていた。
大多数の兵士を失っても負けを認めたくなかった。
冒険者の警告を受けても、自分に危険が及ばぬがいいことに兵士を無駄に消費していた。
『お〜お〜、頑張りますな〜
帝国諸君は』
「………」
『勝てないとわかっても引けないとは…
頭の悪い証拠ですな〜』
「……あの若い皇帝、少しはまともな判断が出来ると思っていたが…見当違いだったか」
『彼は先を見て行動ができないタイプなのだね〜
どう頑張っても、未来が見えている者を相手に勝機など無い事など猿でもわかるのに〜
あっ…未来が見えるって知らないか〜』
帝国は相手を間違った。
大きな損失が出たとしても、帝国は止まることができなかった。
たった一人、その甘い考えが大きな失敗だった。
冒険者の実力を見誤り、皇帝や貴族の根拠の無い自信が皇帝や貴族の愚かさを物語っていた。
帝国が相手にしているのが[和名持ち《ネームド》]だという事を知る者は誰もいなかった。
皇帝は再び兵を冒険者の元へ送る。
今度は国一つ落とせる程の数の軍をを出兵させた。
そして軍が現地へ到着した時、冒険者は来るのがわかっていたかのように平野の真ん中に一人立っていた。
『また懲りずに来ますな〜』
「……あれが帝国の選んだ選択…
今度ばかりは全員を生かして帰せる自信はない」
『ん〜?アレを見ても余裕ですかい?』
軍の中には人ではない者もいた。
帝国の人体実験によって生み出された人ではないもの。
魔物、亜人、人間の融合体、彼らは怪人と名付けられた戦闘兵器だった。
怪人の後ろに魔術師が控えており、怪人を遠隔操作するためである。
傀儡魔法を使い怪人を操り、意思のない怪人は魔術師に操られる。
人体実験により生み出され、意思を強制的に失った怪人はただの肉塊に過ぎない。
「いつも通りやればいい」
『……う〜ん、先が見えるって不便ですな〜』
冒険者に焦りはない。
顔色を変えず、表情を変えず、鼓動を変えずに普段通りに目の前の問題に対処する。
冒険者から感情を読み取るようなものは一つもなかった。
軍を前にしても無表情であり、帝国自慢の怪人を目の前にしても変わることはない。
命を奪う時でも、自分が死ぬ時でも、彼は何も感じない。
人間が持つ大切なものが冒険者には欠けており、彼の持つ唯一の感情は無であった。
そして冒険者は腰にある、柄から剣先まで全部が黒で塗りつけられ、両刃の鎬には赤い線が描かれている漆黒の剣を抜く。
そして体から魔力が炎のように舞い上がるのでは無く、服を着ているように体に魔力を纏っていた。
「…祈れ、お前らを救う奴がいるのなら…
努力して死者を出さないよう配慮するが、万が一の場合はせめてもの情けに苦しむ事なく冥府へ送ってやろう」
これに怪人達は意思を失っているにもかかわらず、本能が危険と訴え体が震えていた。
冒険者の不気味な雰囲気が強制的に怪人達の恐怖心を引き出した。
体を自由に動かせれば直ぐにでも逃げ出したい怪人の気持ちとは裏腹に帝国軍は進む。
冒険者の言葉では言い表せない不気味な雰囲気をを感じない帝国の軍は、自ら命を捨て無駄に兵士を消費した。
帝国は間違った選択をして、過ちに気付いた時には手遅れだった。
帝国は、
Sランク冒険者[和名持ち《ネームド》]
天塚ケイシン
を敵に回した。




