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第38話 断罪の大鎌

第二十階層のダンジョン内は全体が揺れていた。

道にヒビが入り、魔物は逃げ、立っていられないほどに揺れ、奥から体験した事のないほどの威圧がダンジョン入り口まで届く。

しかしダンジョンの外は何も無いかのように静かだった。

中で高レベル過ぎる戦いが行われている事を知るものは一人もいなかった。

ダンジョンが崩壊すると思うほどに階層主のいる部屋を含め半壊していた。

階層主の部屋からは金属音が混じった戦闘音がダンジョン中に響いていた。

悪魔王は片手に槍を装備し接近、遠距離どちらでも対応できるようになっていた。



「ハハハッ!!!」



だが悪魔王がどんな装備をしようと、どんな対策を取ろうと意味はなかった。

悪魔王の攻撃を部屋の中の上下左右の壁を余す事なく利用して、全体に飛び移りながら避け、見失った瞬間に一撃を与え続けていた。

正面から来たと思えば消え左斜め上から、後ろから来たと思えば消え正面とエルの速度に対応できていなかった。

熱線、魔法を放つも当たるわけもなく、槍を振ろうとも当たらない。

意思のある者ならばとっくに心が折れている。

だが階層主には意思などなく、エルは動く人形でしか無いと認識していた。


身体中に切り傷が隙間なくつけられ、遂に悪魔王は膝をつこうとした時、悪魔王の胴体へ体を回転させ蹴りを入れると、悪魔王は壁まで飛ばされた。

蹴り飛ばされ壁へ打ち付けられた悪魔王の動きが止まった瞬間を逃さず、体が空中に浮いている状態で空を蹴り悪魔王へと迫る。

普通ならば空中に浮いて無防備になるところを、そこに壁があるかのように何も無いところを蹴り宙を飛ぶ。

すると悪魔王が苦し紛れに熱線をエルへ放った。



「あっぶね!!」



間一髪で避けるとエルは距離をとる。

すると瀕死の状態であった悪魔王の傷が無くなり、大量は大幅に減っているが元の状態へと戻った。



「なかなか死なないな」

『しぶといねー』

「…ただの人形みたいな魔物かと思えば

楽しませてくれるじゃない」

『でもそろそろ終わらせないとプレイヤー来るんじゃない?』

「ふむ…そうだな名残惜しいが仕方がない…

とは言っても後どんだけ攻撃すればいいのか」

『んー…人形だったら魂が宿るって言うし?』

「これが人形と分類されるのか?

…まぁ、だとしたら」

『うん』

「『刈り取る!!』」



そうしてる間にも悪魔王は動くが、少し本気を出しているエルには遅く見えた。

エルは刀を収めると、更に魔力を上げる。



「アリス!!纏え!!」

『了ー解!!』



フードを取ると、エルの周りに風が巻き起こる。

色のついた純白な風がエルを包むように吹くと、アリスから流れる魔力がエルへ覆い被さるように纏う。

すると黒いローブが白へと変わり、灰色の髪は一部分が白へ変化すると、左目の瞳が透明になりアリスと同じ瞳の色をしていた。

そしてエルの片手に大鎌が出現すると大鎌を両手で回す。



「〈断罪の大鎌〉」



これはアリスが第一王女へ振るおうとした技である。

[断罪の大鎌]

エルとアリスとの合わせ魔法。

女神の魔力をその身に纏う事で、女神と同じ魔法や女神の武器を使うことができる一つの技。

この魔法は対象の者へ向け、その者の犯した罪に対して判決を言い渡し罰するというものである。

そして対象の者の罪の重さから威力が変わり、犯した罪が重ければ重いほど大鎌の威力が上がる。



「罪多き者よ、判決を言い渡す…

お前は有罪

死をもってしてその罪を償え」



悪魔王が槍をエルへ振るおうとした時、エルは悪魔王の後ろにいた。

左肩から斜めに切り込みが入り、悪魔王の上半身は地面へ倒れる。

斬撃を入れても傷跡しか残らない筈のこの世界の魔物へ鎌を振り抜き、悪魔王の上半身を真っ二つに斬り離した。

そして悪魔王の体は炎に包まれ消えた。


[completed the stage]



『あっ!』

「やべ…」



するとここで問題が起きた。

振り抜いた〈断罪の大鎌〉の威力があり過ぎたせいで、階層主の部屋まで斬り込みが入ってしまっていた。

ここまでは大丈夫。

だがこの斬り込みは階層主の部屋だけでは止まらず、この世界に斬り込みを入れてしまっていた。

下は第一階層まで、上は第九十九階層にまで達していた。



「崩れないよな?」

『知らないよ…』



汗をかきながら崩壊しないか不安になっていた。

それでも崩れることはなかった。



「ふぅ……よかった…

あぁ心臓に悪い」



問題ないことがわかると、エルは安堵し第二十一階層へ続く扉に手をかける。

扉を開けるとそこは森の中だった。

第二十階層の扉の奥の美しい森林に言葉を失う……というわけではなく。



「………うへぇ、コッチにまで届いてたか」

『〈断罪の大鎌〉だよ?

罪のない人々を巻き込んで死に至らしめる世界を作ってんだから、そりゃあ威力もでるよ」

「……ということは、この世界の罪ってことか」

『そういう事』

「なら〈断罪の大鎌〉は各階層主に有効って事だ」

『!、そういえばそうだね』



断罪の大鎌が罪として認識していたのは階層主の悪魔王及びこのゲームの世界だった。

罪も無い人々を強制的にデスゲームに参加させ、命を奪う行為を重罪として判決を下していた。

命を奪う目的の世界や魔物が対象であり、プレイヤーやNPCは除外されている。

そして各階層主の攻略の際、断罪の大鎌が重罪と判決を出した時点で一々発動し再度判決を下す必要がなく使えるようになっていた。



「とはいえ、死亡者ゼロ!

第二十階層攻略完了〜〜」

『おめでとーー!!』


パチパチパチパチ!


第一階層以来の攻略での犠牲者は一人として出ない結果となった。

ダンジョンの攻略速度も他の階層と比べると一時間以上の差をつけていた。

そして何よりダンジョンへ入り階層主の部屋の奥にある扉を開けるまで、エルは一つのダメージを負う事なく無傷での攻略であった。



「はぁ……なぁアリス」

『何?』

「この世界を作った奴らの世界ってどんなところだろうな?」

『え?』

「イレギュラーとはいえ、俺たちの世界と繋がってんだぜ?

しかもこの世界を神が作ったんじゃなく人が作ったと聞けば……気になるだろ?」

『うん!確かにね!』



エルはこのゲームの世界を作った者が住む世界に興味を示した。

ゲームという形で世界を広げ、このような神秘的な世界を神が作ったのではなく人の手で作った。

しかしこの世界は人の命を奪う目的の世界となってしまったが、この世界を作る技術を持つ者がどんな世界に住むんでいるのか気にならない方がおかしかった。

だが今はプレイヤーの住む世界に行く方法が無く、方法が見つかるまで諦めるしかなかった。

そしてエルがプレイヤーの住む現実世界へ行くのはもう少し先の話。

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