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第33話 階層主

「うっ……クソッ…イテェ」

『大丈夫?』

「流石に今のは痛かった…」

『だろうねー…ダイレクトに食らってたからね』

「何が起こった?

〈錬成〉が発動しなかったよな?

……魔法が使えねぇのか?ここ…」

『んーー……わかんない』

「まぁいいや」



壁に埋まったエルは、少しのダージを与えられていた。

予想外のことが起き、困惑したが直ぐに起き上がり服についた埃を払った。

エルの無事の姿を見てシウラは安堵した。



「エル様!!無事でしたか!!」

「あんなので俺がやられる訳が無いだろ?

それよりもシウラ…龍牙を寄越せ」

「え!?龍牙ですか?」

「そうだよ、錬成が使えないからな。

ていうか使ってやらないと切れ味が落ちる」

「……わかりました」



シウラは剣を出す際に〈収納〉魔法が発動しなかったが、魔法の出力を上げることで魔法を発動した。

そして〈収納〉魔法から剣を取り出し、エルへ投げ渡した。

[神刀・龍牙]

柄から剣先まで全てをドラゴンを素材として作り出したゼロの世界のドラゴンと同等、それ以上の力を持つ刀である。

普段の〈錬成〉魔法で作っている両刃剣とは違い刀身が反り、片方に刃、もう片方は棟と特殊な形をした剣である。

刀は異世界から転移して来た者が開発したとされている。

エルは鞘から刀を抜き、階層主へと歩みを進める。



グルルルルルッ…


「……トカゲが…舐めた事しやがって

その装備ごと刺身にしてやる」



階層主を目の前にエルは魔力を解放する。

普段の数倍の魔力を外へ放出すると、エルは先程何故〈錬成〉魔法が発動しなかった原因がわかった。

この世界はエル達の世界よりも魔素が薄かった。

前日にシウラが聞き込みを行い、その後に確かに言っていた。

魔力があるが薄く普段の数倍の魔力が必要なのだ。

いつも通りの魔力の量で〈錬成〉を発動できる訳がなかった。

その事を忘れていたエルは壁に飛ばされ、ちょっと逆ギレをしていた。

階層主が咆哮をあげ、突進しながら大剣を得るに向かって振り下ろすが、そこにエルの姿は無かった。

気がつけば階層主の背後にエルは立っていると、次の瞬間無数の切り傷が階層主の体に入れられた。



「ん〜〜〜???

斬った感触が無いな」



両足、胴体、右手首、左肘、首、左目の順で階層主をエルは斬り裂き、階層主の頭を飛び越え背後へ着地した。

しかしエルの手には肉を斬った感触がなかった。

階層主の体に切り傷は残っているが、暫くすると消えた。

そして体を背後に振り向き、大剣を振るう。



「おいおい…普通なら致命傷だぞ?」

(あの連撃を受けてもまだ動けるとは…)

(剣技〈蟠龍〉)



龍がドクロを巻く姿を浮かべるように、横に振るう大剣を力を逆らわずに流す。

攻撃を流され勢いをつけすぎた階層主の体制が崩れると、階層主の頭上からシウラが剣を振るう。

階層主は左手の盾でシウラの攻撃を受け、上へ向けると打ち合わせをしたかのようにミカルと錫杖の仕込み刀を抜きセンは盾が上へ向いた処を狙い、階層主の胴に交差するよう斬撃を浴びせる。

しかし斬撃の感触が無く、切り傷が入るも暫くすると消える。

後どれだけのダメージを与えれば倒せるのかわからなかった。

するとそこへヤマトが動く。

背後へ下がるとその場にしゃがみ込み、両手地につけた瞬間…



「〈大地の束縛〉」

「「「はぁ!?」」」

「えっ…」

『嘘でしょ!?』



ヤマトが地面に両手をつけた時、地面が浮き上がると、そして地面にヒビが入りそこから樹の根が出現し階層主の動きを封じた。

これにはその場にいた誰もがヤマトの行為に愕然とした。

ヤマトの属性は回復魔法であり、大地を操る能力は無い筈だった。

しかしこの時ヤマトは属性の常識を覆した。

これは回復魔法〈超速再生〉

対象に触れることにより、普通の回復魔法の治癒を遥かに上回る速度で治癒を行う魔法である。

この魔法は世界中探してもヤマトしか使える者はいない。

その回復速度は0.1秒未満であり、触れるだけでどんな怪我でも治すことができる。

だがこの時ヤマトが行ったのは人の治癒ではなかった。

樹木の再生、既に死滅した樹木を回復、再生させ樹の根についている癖を修復しながら階層主を目掛けて根を伸ばして束縛を行なった。

ヤマトの回復対象は人のみでは無く、魔物、植物にも有効であった。



「ヒャヒャッ!、動きは封じたぞ!」

畳み掛けろ!!」

「あぁ、そうだな!

〈無空一刀・屠龍〉!!」

「〈妖風・鎌鼬〉!!」

「〈渦雷飛龍・迅雷刺突〉!!」

「〈瞬光滅却〉!!」



束縛された階層主を目掛け、四つの剣技が放たれた。

[無空一刀・屠龍]

空間に斬り込みを入れ無空間を作り出す程の龍殺しの一刀、その斬撃は階層主を斬るだけでは止まらずその後ろの部屋の壁にまで斬撃が入っていた。

[妖風・鎌鼬]

剣に風を纏わせ、振り抜くことにより風を相手に浴びせ無数の斬撃が対象へ切り刻まれる。

[渦雷飛龍・迅雷刺突]

雷を体に纏わせ、雷を剣に凝縮させ龍の形へ具現化し刺突をする事により雷の龍が対象目掛けて一直線に射抜く。

[瞬光滅却]

光魔法を剣に注ぎ、攻撃の範囲を広げ、広範囲の光の斬撃を飛ばす。

対象の命が尽きるまで攻撃が可能で、ある意味反則な剣技。

どの剣技も遠距離の相手に与えるものである。

だが四つの剣技を受けてもなお、階層主は倒れなかった。



「マジか…アレを食らってまだ立つか」

「……いえ、少し待ってください」



剣技を受けた階層主は大剣と盾を地面に落とすと、苦しみ出し咆哮をあげる。

そして階層主の全身の皮膚が剥がれ舞い上がると体が炎に包まれ消えた。

すると空中に「completed the stage」の文字が映し出された。



「これなんて読むんだ?」

「知らねぇ」

「この文字とと同じような言葉をミヨコさんが偶に話してましたが…意味はわかりませんね」

「あー…あの何言ってるかわからないやつ…

アレと同じか…てっきりあの人が自分で作って気に入ったやつだと思ってたよ」



こうしてエル達は階層主を倒し、第一階層を攻略した。

奥にある階段の先に扉が現れ、エル達は向かって行き扉を開け第二階層へ足を踏み入れたのだった。




「おい…見たか?」

「あぁ…何だよあの連中

βテストを受けた人たちか?」

「βテストを受けたにしても…

アレはあり得なくない?」

「うん、あんな装備と武器は実装されていないぞ?」

「しかもあの階層主をたったの5人で倒すなんて…チートかよ」



後から来たプレイヤー達に階層主との戦闘を目撃された。

そして少し楽しんでから出ていき深く関わるつもりのなかったエル達はこのオンラインゲームで一番の注目を集める事となり、このゲームの世界から出るタイミングを逃すのだった。

階層主との戦闘はその日のうちにプレイヤー達に広まった。

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