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第32話 攻略開始(当日)

「ヨッシャ行くぞーーーー!!!

ワハハハハハハハッ!!!!」



朝から元気が有り余り、外で叫んでいるのはヤマトだった。

男と女で部屋を別々に分け、宿で一泊した時ヤマトは明日が楽しみにし過ぎて殆ど寝ていなかった。

早朝シウラはエルを起こすのが日課となっている為、眼が覚めるとエルの泊まる部屋へと向かう。

シウラの行動にミカルは驚いたが、シウラの後を歩きシウラと共に部屋へ向かいセンを起こしていた。

ヤマトはと言うと、誰よりも早く起き外で待機をしていた。

準備を終え外へ出ると空かさずヤマトはダンジョンへ走って行く。

その姿は子供そのものだった。

そして入り口の前へ着くと、前日に打ち合わせをしていたプレイヤー達が集まっていた。

命をかけた攻略に心が決まっていない人々がいる中で、1人のプレイヤーが一人一人に声をかけて緊張をほぐしていた。

死ぬかも知れない、それはエル達にとっては日常で感じているが、プレイヤー達はそうではない。

死とはかけ離れた生活を送り、突如死を間近に感じ様々な感情が葛藤しているのが見て取れた。

そんな彼らとは対照的にヤマトは子供が遠足に行くような表情をしていた。



「早く行こうぜーーー!!」

『朝から元気だね〜』

『そこがヤマトの良いところですよアリス様』

「……そうだな

それじゃあ楽しむか!!」



入り口の横でプレイヤー達が覚悟を決めかねている間にエル達はダンジョン内へと足を踏み入れた。

ダンジョン内はエル達の世界のダンジョンの洞窟というよりも、人工的に作られた物だと疑うものだった。

辺りは暗く、地面は結晶のような素材で作られ整理され、上空は天井が高く星空が映っていた。

これをダンジョンと呼べるのかわからなかった。



「何だよこれ」

「自然が作り出した…という物では無いな」

「普通ダンジョンって洞窟みたいな場所にあるんじゃ無いの?」

「これがゲームなんですかね…」



余りにも神秘的な光景に目を奪われ、注意を怠り魔物が近づいてくるのに気づくことはできなかった。

魔物はエルを目掛けて襲いかかる。

だが対象が普通のプレイヤーであれば、不意をつくことはできただろう。

相手が悪すぎたのだ、魔物はエルに無言で蹴り飛ばされた。



「何だ?ゴブリン?」

「……でも少し違いますね」

((蹴り飛ばしたよコイツ…))

「新種?」

「いえ…多分この世界の魔物では無いでしょうか」



エルに飛びかかった魔物は、壁に埋まっていた。

容姿はゴブリンに似ていたが、姿は少し誤差があった。

整った装備、肌は赤く、尻尾が生えている時点で違ったが、見た目はゴブリンだった。

未知の魔物を観察していると、魔物の体が赤く燃え上がり消えた。



「何だ?倒すと消えるのか…」

「コレは現実世界と違いますね」

((何で冷静なのこの2人))



この後に同じ様な魔物をエルが、あくびをしながら殴りと蹴りで倒していった。

エルの魔物の倒し方を見て、この時全員が思った「やっぱりあの2人の弟だ」と。

ここまで大した魔物はおらず、ダーメジを負うことなく進んで行った。

普通ならば未知のダンジョンに警戒しながら進み階層主の場所まで時間を多く使い、周りに注意を払い進む。

だが普通とは違いエル達は注意を向ける素振りすら無く、ダンジョンを散歩するかの様に歩いていた。

道中、罠が仕掛けられていたがエルとシウラは何処に罠が仕掛けられているかわかっているかのように次々と回避していった。

そして一時間もかからずに階層主のいる部屋の前へと到着した。



「……呆気ないな」

「そうですね、魔物の強さもそれ程でも無く罠の仕掛けも甘かったですし」

「後ろの連中が来るの待つ?」

「どちらでも」

「……時間があるなら一つ聞いてもいいか?」

「何?」

「…お前達どうやって罠を見極めてるのかと思ってな」

「………あぁ、勘だ」

「勘!?」

「勘というか……なんて言うんだろうな

何となく「ここら辺に罠が仕掛けられてる」ってわかると言うか…

攻撃が来るって少量の殺気が肌に刺さって来る感じがするんだ」

「殺気が?」

「そうそう…でも人から発せられる殺気と罠…人が仕掛けた物はまた別物で、人を殺す殺気とは違って、ここに仕掛ければ相手にダメージを与えられるって言う意図がある気との違いだよ」

「ほぅ…」



センは道中に仕掛けられている罠を軽々と避けるエルとシウラに疑問を持ちエルに質問をした。

その質問にエルは答え始める。

エルは空気中に漂う気を読み取り避けていた。

この世には様々な気があり、心気、意気、豪気、色気、士気、惚気、鋭気、殺気、狂気と他にもざまざまな気が存在している。

それらを感じ取り察知して避けていた。

因みにエルとシウラはこれらを日常的に感じ取らなければならない生活を送っていたため認識がずれていた。



「そんな事、普通できねぇだろ」

「そうか?」

「気を感じるなんて……一体どんな過酷な所にいたんだ?」

「場所が過酷と言うか…な」

「過酷なのは、お二方の指導です」

「「あぁ…成る程」」

「?」



経験者は語る、既に体験したセンとミカルはシウラの一言で納得した。

最早ここに書くまでもないが、ミヨコとサクヤの事であるのは言うまでもない。

2人に会っていないヤマトは、この場にいる唯一の幸せ者であった。

そして雑談をしている間に後ろからプレイヤー達の戦闘音が聞こえて来るところまで来ていた。



「やっと来たか…」

「遅いですね」

「いやいや、逆だと思うぞ?」

「アタシ達が早すぎるんだよ」

「え?そうなの?」

「そりゃそうだろ?お前が魔物を一撃で倒し続ければな…」

「フーン……じゃあもう中入るか?」

「おう!良いぜ!」



プレイヤー達がここまで着く前に、階層主のいる部屋の左右の扉に手を掛け開く。

部屋の中は暗黒に包まれ、部屋の状態がわからず階層主の姿も確認することができなかった。

すると上空から光が差し地面へと反射すると、部屋一面に光が広がり部屋の真ん中には階層主らしき魔物の姿があった。



ググッ…ガアァァァァァァァァァァア!!!



階層主の咆哮が響き渡り、第一階層内全てへ音が反響した。

深緑の肌、黄色い目、人型の姿をして、鰐の顔をしており、右手に大剣、左手に盾を装備しており、筋肉質な体で血管が浮き出ていた。

鰐の姿をした人型魔物だった。

剣が通るかわからない鰐の歪な形の鱗が頑丈さを物語っていた。



『コレは…』

「おいおい…道中の魔物とレベルが違いすぎるだろ…

第一階層に出てくる奴じゃないぜ」



目の前にいる階層主のレベルと、道中に遭遇した魔物を比べてもその差は歴然だった。

道中の魔物がレベル1とするならば、階層主のレベルは20を超えるものだった。

ゲームの不具合が出たのか、元から第一階層の階層主がこの魔物だったのか、エル達に知るよしもない。

ゲームを知らないエル達にとって、コレは難易度の高いダンジョンだった。



「来るぞ!!」



そして階層主が動き、大剣を振り上げエル達に目掛けて振り下ろす。

階層主の攻撃を左右へとそれぞれ躱すと、振り下ろした大剣が地面を裂いた。

その衝撃により礫が飛び、エル達の視界を奪われると、今度は横薙ぎに大剣を振り抜いた。

その攻撃も読んでいたかのようにエルとシウラは伏せて避けると、後ろへ飛び着地をするとエルは刀身の無い剣を抜く。

しかしここでエルに予想外のことが起きた。



「チッ……やるか

〈錬成〉……ん?」

「エル様!!」

「!?、マジか!!」



エルは階層主が横へ剣を振り抜き遠心力を使い尻尾でエルを攻撃すると、エルは飛ばされ壁へと減り込むと、手に持っていた刀身の無い剣が地面へ転がった。

シウラは飛ばされたエルを目で追うと、そのまま立ち尽くす。

セン、ミカル、ヤマトも同じくその光景に愕然とした。

エルは一瞬何かに気を取られ攻撃を受けた。

それは錬成が発動せず、剣を作れなかった事に気を取られていた。

魔法を発動することが出来なかったのだ。

階層主との初対戦は予想外の事が起きて幕が開けた。

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