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第26話 [最強]vsエル

主人公がボコボコにされる回です。

一言で言えば今起こっている現象は災害である。見るもの全てが口を揃えて言うであろうこの光景。しかしそれは自然によって起こったものではない。

普通の人間ならばコレは自然による災害であると口を揃えて言うだろう。しかしコレは人為的な…と表せるものなのかと言われると違うと思うが人が起こしたものであると表現せざる得ない。今センとミカルが見ているのは正に頂上決戦を表しているかのような化物同士の戦闘だった。だが戦っている当人の姿はその目に映っていなかった。


大地が揺れ、雲が切り開かれ、辺りに暴風が吹くと無数の衝突音が四方八方から響き渡る。



「〈加速〉、〈筋力増加〉、〈能力全向上〉、〈魔力上昇〉、〈並列思考〉、〈風圧抵抗軽減〉、〈重力軽減〉、〈攻撃速度上昇〉、〈制限解除〉…」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」



持ち合わせているスキルを全て使い、彼女を迎え撃つ。気が抜けない攻防が続き一瞬でも止まればそこを狙われ、常に動き回らなければ攻撃を受けてしまう。世界の頂点を決める頂上決戦のように見えるが、今戦っている二人は殴り合っているだけであり、殴り・蹴り・頭突き・投げのみだった。空に飛び、地面に打ちつけられ、投げで建物を破壊したりしているせいで戦争よりも激しい戦いになっているのではなく、ただ単に人外すぎる動きは誰が見ても戦慄するだろう。最強を目指していたものはこれを見て何を思うのだろうか。魔王を倒す使命を持った勇者はこの戦いを見て何を思うだろうか。この戦いを見て心が折れてしまったか、



拳の風圧のみで形あるものを破壊している拳を受け続けているエルは嘗てゼロの世界で、[最強]の彼女の下で力をつけていた。

内容はひたすら実戦訓練の連続であり、エルと共にいたシウラは何度も臨死体験をしていた。そんな彼女の前で言ってはいけない言葉があった。それは「限界」、彼女の指導に耐えきれず限界の言葉を使った時には、


――それは肉体面と精神面の限界であり生命の限界ではない


と耳を疑うような発言をして、エル達を死ぬ直前まで追い込む。

気を途切れさせず、目の前にいるミヨコに集中する。

エルが初めて攻撃を正面から事に笑みが止まらない姿を見て、エルは再度気を引き締める。

さっきまで手加減をしていた状態から、どう動いてくるのかを予測しても勝ち目は皆無であり無事では済まない。少しのミスも許されず、隙を見せるなんて事は絶対にしてはならない状況が続いていた。 ミヨコの連打は終わる事がなく、速度は落ちるどころか更に速さを増していく。2人の攻防は近づく事ができないほどに激しさを増していく。



「ハハハハハッ!!!」

(クソッ! どんどんギアが上がっていく!!)

「ほらほらほら!!!まだまだこんなもんじゃないよぉ!!!」

「!! 嘘だろ」

「これは頑張っているエルへのご褒美だよ!!」



地面に降り立ったところでミヨコが動きを瞬間だった。ミヨコは地面に拳を打ち下ろした。その次の瞬間



「〈大地の芸術アート・オブ・ザ・アース〉」



その一撃はこのあたり一帯の地形を変えた。大地は歪な形へ変形し、天高く柱が創造されたり、地の一部が浮かび上がったり、それはもうとても言葉では表現しきれない程に神秘的な光景だった。この戦いを近くで見ている者はこの光景に見とれているだろうが、エルにそんな余裕はなく、ミヨコの技の発動により一層気を引き締めていた。

そこからはもうエルは防戦一方だった。自分の作り上げた地形を駆使しながら戦っているミヨコに対して、エルは殆ど宙に浮いた状態となっていたのだ。次第に速度もぐんぐん上がっていき、動きを目で追うのがやっとの状態となった時、集中力が限界まで高まり、エルの鼻から血が流れ出る。それを拭う暇もなく、気づく時間もある訳がなく終わらない連打を回避する事に集中していた。笑いながら攻撃してくるミヨコに対し、エルは精神、肉体の限界寸前まで追い込まれていた。そして繰り出される拳を諸に受けた瞬間、右手の骨が軋み、骨にヒビが入る。動きが止まる。



(うっ……)

『エル!!前!!』

「しまっ…」



ヒビが入った骨に気を取られた隙に防御が遅れ、下から突き上げるようにミヨコの右拳が、エルの顎を撃ち抜き、ミヨコのショートアッパーで顔は完全に上へ向く。そしてエルの口から血が吐き出された。



「ガハッ……」

『エル!!』



意識が飛びかけ、上へ向いた視線を戻し上から両手をミヨコの首を目掛けて振り下ろすが、両手を掴まれ攻撃を封じられる。この後勝負を決める連打がエルへ襲う。掴んだエルの両手を引き寄せ頭突き、左膝をエルの溝へ減り込ませ、右拳を左頬へ撃ち抜き、エルの頭が地面へ倒れようとした時、


左アッパー → 左ボディ → 右アッパー → 左脚の蹴りを右ボディ → 右左のワンツー → 右のハイキック


それをまともに受けエルの防御が間に合わなくなり、そこを間髪入れずに打撃の猛攻の連打がエルを襲い。そして少し間を置き体を少し宙に浮かせてから鳩尾目掛け飛び蹴りを入れられエルの体がくの字に折れ曲がり、吹っ飛ばされる。



「グフゥッ!!! ………クソ」

「イィィィィィィィヤァッ!!!」



ズカァァァァァァァァァァァァアン!!!



蹴り飛ばされたエルは数十メートル先まで胴体が地面を跳ねながら飛ばされ、一瞬、体が浮いた時、上空へと飛んだミヨコがエルを上空から勢い良くエルを踏みつけた。衝撃が上へと流れ爆発音と共に土が上へと高く上がり、地面に亀裂が入る。



「エル様!!」



音が収まり土煙が晴れると、そこには大きな穴が空きその中心で血だらけのエルの体が半分埋まっていた。ミヨコは穴から地上へ飛び移り頭をかきながら神屋センの近くで座る。シウラは直ぐに回復薬を持ってエルの元へ向かっていった。



「本当に強くなったね!楽しかったよ!

でも、まだまだだねー 私が加減をしないくらいに強くなりなさい!」

(あれで加減?)



あれほどの威力を出していながら、ミヨコはエルに加減をして戦っていた。この事実を気を失っている状態で、シウラに少し開いた口から回復薬を飲まされているエルには全く聞こえていなかった。回復薬を飲んでも全快までには時間がかかるほどの怪我を負った。シウラが持ち合わせている回復薬を全て飲ませている時



「…ミヨ、やり過ぎだ」

「サクヤさん……」

「あ!サク!何してんのこんな所で」

「何って…お前がエルに怪我を負わせた時はいつも私が治してるだろう

大体お前はいつもやりすぎなんだ」

「そう?」

「はぁ……取り敢えず上へ運ぶぞ」



二人掛かりで上へと運び、寝かせたエルをこの世界で[災厄の龍]と言われているサクヤの治療が始まる。魔導式を展開し、エルの診断を開始すると、全身打撲、78箇所の骨折、数カ所の裂傷、筋断裂の診断結果が出る。この結果にサクヤはミヨコを睨むと、口笛を吹きそっぽ向いた。サクヤはため息をつくと、エルの体へ〈時間操作(タイム・コントロール)〉で時を止めると、血流を止まっている状態で折れた骨が臓器へ刺さっている箇所を治癒魔法で修復していき、体内の治癒を終え打撲と裂傷の治癒を始める。そして薬草を染み込ませた包帯を体へと巻いて治療を終えた。



「後は頼んだぞ」

「わかりました」

「はぁ…勇者を見てこいと言ったのに何でお前がここにいるんだ」

「だって!起きたらエルがいなかったんだもん!」

「当たり前だ、私がこの世界へ送ったのだから」

「はぁ?何で!!ふざけんじゃないよ!!」

「当然だろう!!お前はエルを縛り過ぎだといつも言っているだろう!!

これは正当な理由からの判断だ!!」

「なぁにぃ!!」

「……そもそも私はそんな事を話しに来たんじゃない 仕事の話をしに来たんだ!!」

「仕事?前にやったばっかじゃん!!休ませろぉ!!」

「そんなわけにはいかない また…奴が動いて、別の世界が重なったからな 仕事の時間だ」



サクヤはエルの治癒を終え、ミヨコと言い争っていた。しかしサクヤはエルとは別件でこの地に訪れていた。それはこの世界で例のない事が起こり始めた事を伝えに来ていた。好き勝手やっている奴が始めてから続く世界の連鎖を止めるべくミヨコとサクヤは動いていた。サクヤが伝えに来た出来事は、不本意ながらエル達を巻き込むこととなった。



「お遊びは終わりだ さっさと準備をしろ」

「チッ…全知全能《クソ爺》……余計なことしやがって」

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