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第20話 混乱

かけられた〈隠蔽〉を解き本来のレベルを王女へ見せる。そしてエルのレベルを見て驚愕した。ギルドカードに出ていた数字は845と出ていたからである。それはこの世界の平均である数字をはるかに上回っていた。一般の冒険者のレベルはAランク冒険者のパーティーでもレベル93が最高であり、伝説の勇者や世界最高峰である賢者の2人のレベルは163であった。王女は開いた口が塞がらなかった。



「まさか〈隠蔽〉を使われてたとはな…」

「そうですね、さすがに気づきませんでした。

因みにサクヤさんは、あの受付の方の意思を操っていたようですし気づきませんよね」

「嘘!?」

「…登録時の事を鮮明に思い返しますとあの受付の方にも不信感がありましたから。」

「……怖」



あの時、魔法をかけられていたのはエルとシウラだけでは無かった。ギルド内にいた全ての者に魔法がかけられていたのだ。その魔法は例え〈鑑定〉スキルを使おうとも魔力を感知し気づくことはできない。ギルドを覆う魔法を誰にも気づかれずにエル達のレベルを隠蔽していたのだ。そしてその他に隠蔽魔法だけではなく、ギルド内にいた者達の常識をズラし、レベル1で測定不能という結果を聞いても測定不能にしか意識がいかないようにしていた。エルにもシウラにもギルドマスターにも気づかれず、ギルドを覆う魔法を発動していた。そして念には念を入れ、受付の女性の体へ乗り移りエル達へ説明していた事にもエル達は気づいておらず、この時初めて気づき鳥肌が立っていた。



「はぁ…じゃあ時間も無いし退散するか」

「そうですね」

「うん、もういいだろ?」

「むぅ…まだ聞きたい事が山ほどあるけど、頭の整理が追いつかないからね」

(アリスのこと聞かれるかと思ったけど…)

「セン…解除して良いよ」



日も暮れ、街明かりが灯る時間帯となりようやく解放された。相手が知りたいことは話し、自分が知りたいことは知った。この国に留まる理由は無くなり、直ぐにでも勇者が誕生する領地へ向かおうとし、立ち上がり背筋を伸ばし後ろを振り向いた瞬間

王女が入ってきた時と同じように、勢いよく扉が開き2人の女性が部屋へと入ってきた。


「ん?」

「あっ姉上!!母上!!」

(マズイ!!)

「へぇ、あの2人が」

「…………」

「シウラ…蔑んだ目をするんじゃありません」



入ってきたのは王妃と第一王女であった。

2人の登場に周りの人々はザワつき、王女とセンは何故か焦り始めていた。そしてエルの横から顔は隠してはいるが、シウラは王妃と第一王女の胸元を見て冷ややかな視線を向けていた。不機嫌な理由は2人の豊満な胸を見てのことである。エルフ族は外見こそ美しくほっそりした体型をしているため胸の大きさは殆ど無く、指摘してはいけないエルフの女性への禁句だった。学園内にいた時からシウラは不機嫌であり、第二王女の胸へと視線を向ければ蔑んだ目を向けていた。普段は上品な性格のシウラだが、不機嫌になれば例え作り笑いをしても辺りの空気が冷たく感じる気がするので、シウラから発生する空気に耐えきれなくなったエルはこの場を早急に立ち去ろうとしたが



「ミカルちゃん?」

「はい?」

「姉上じゃないでしょ?お姉ちゃんでしょ?」

「………おっ…お姉ちゃん…」

「ハイ!宜しい!」

「ミカルちゃん?」

「はい…何でしょうか母上…」

「お母さんでしょ?」

「………お母さん」

(何これ…)



ミカルは先程まで棍棒を振り上げ脅迫していた時とは打って変わった様子を見せていた。

2人が現れた瞬間、透かさず棍棒を背後へ隠し引きつった笑顔をしていた。2人は見るからにおっとりとした性格をしており、いかにも王族って感じが出ていた。そういう性格をしている人程怒らせたら怖い。ミカルはそんな2人に対し、自分とは正反対の性格であり姉と母親があんな性格をしているせいか苦手意識が顔に出てしまっていた。



「…それで…あっ…お姉ちゃんとお母さんは何でここに?」

「え? 来ちゃダメだった?」

「そんな事は…ないけど…」

「だってほら!2日後に教会が勇者様の誕生の儀を行うでしょう?

王族の私達が魔王倒すのために動いてくださる勇者様に激励を送らないといけないじゃない?

それでね!ノルミ公爵領へ明日出発するにあたってお父様に相談に来たの!」



この時初耳と言わんばかりの反応をミカルは見せ、国王を睨むと国王は明後日の方向を向く。教会が勇者の誕生の儀を行う事をミカルの耳には入っていなかった。勇者誕生の儀に出席する事は、魔王を倒し世界を救う重大な責任を負う使命である故に国王にも教会からの招待は届いていた。しかしエルの話を聞いた国王はどうすればいいか悩んでいた。世界を救うには魔法を倒さなければならない、だが魔王を倒せばゼロの世界から魔物が押し寄せ世界が崩壊する。勇者誕生の儀を本当に行なって良いのかと悩んでいた。そしてミカルに話が届いていない理由は、単純にミカルが勇者に興味がなく適当に流し聞いた覚えがないだけであった。ミカルはその事を思い出し、国王から第一王女に視線を向ける。見るからに勇者誕生の儀を楽しみにしていた。



「お父様!勇者様が魔王を倒してこの国へ帰って来た時には、勇者様と婚約しても宜しいかしら?」

「はい!?」

「だって勇者様よ?

世界を救うために自ら過酷な道を選んで魔王との死闘の末に世界を救いになってくださるなら、生涯この身勇者様に捧げても良いと思うの!」

「…………」



第一王女の爆弾発言に国王とミカルは開いた口が塞がらなかった。完全に第一王女の頭の中はお花畑であり、今何を言っても聞く耳を持たない事を悟ってしまった。王妃と一緒に国王の元へ来た事で、王妃の了承を得ている事を国王とミカルは察していた。一度決めた事は何があっても曲げない第一王女の性格から、誰が今何を言っても無駄であるとわかると諦めたかのように肩を落とす。



「良いわよね?」

「……好きにしなさい」

「やった!!じゃあ勇者様が誕生した時に婚約を……」

「?」



国王からの了承を得て喜び、両手の指を顔の前で重ね左右へと揺らし第一王女は勇者と婚約する時期を離そうとした時、突如話すのを止めると右を向いて固まった。その先には、目を瞑り、腕を組んで立ったまま寝ていたエルの姿があった。第一王女の視線に気づいたシウラはエルを揺らし起こすと顔を起こしたエルの目の前には第一王女が立っていた。



((まさか…))

「ん?何?」



第一王女は顔を熱らせ、少しずつエルへと近づいていく。この時エルとシウラは少なからず嫌な予感がした。国王、王妃、ミカル、セン、騎士長と何かに気づいた表情をしていたからである。第一王女がエルを見つめ、歩み寄り、敵意を向けていない事から、考えられるのは1つだった。そしてエルの目の前で足を止め、口元を両手で抑えたまま…



「好きです…結婚して下さい…」

「お断りします」



第一王女はエルに一目惚れをして、前置きもなく求婚を申し込む。それをエルは間を空けずに断った。

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