第六章
第六章
「俺たちは敵対する気はない、話し合いの場を設けてもらいたい。」
そういうと戦士は驚いた顔で
「獣人なのに話し合いを求めるのか?」
といった。この世界の獣人は戦闘狂ばかりらしい。
構えを解かないまま思案顔をした戦士を見て俺は心の中で
([究明する者]起動)
と念じる。
『告-主の命令を感知。命令を求めます。』
こいつの機能に思考の補助があったからできるであろう技能について聞いてみる。
(思考を加速するとかできるか?)
『解-思考補助の派生技能【思考加速】により可能です。加速範囲は0.0001~10000倍です。』
『問-【思考加速】を実行しますか?』
今は相手がしゃべりだす前に自分のこれからの行動を考えたいから、
(最大で実行しろ。)
と念じる。
『告-主の選択を感知。【思考加速】発動。』
そう言葉が返ってきた瞬間、体が急激に重くなったように感じる。というかほとんど動かない。思考だけ加速して体が動きについていけなくなったからだろう。
これで1秒が2時間45分ぐらいになった。とりあえずこの[究明する者]について知ることにする。
(お前の能力の基本はわかったが何ができるか簡単に説明しろ。)
『解-[究明する者]の根幹的な技能としての概念である、主の思考の補助、主に忠実な独立した思考、現在感知している事象の詳細な分析、をもとに多くの技能が備わっています。
主の思考の補助、から派生した主な技能は
思考の加速…現在起動されている技能、思考の基本的な速度を上昇、下降させる。
出来る範囲での思考の代替…[究明する者]が得意とする計算などの思考を主の代わりに行うこと。
主に忠実な独立した思考、から派生した主な技能は
身体の自動行動…先ほどまで起動されていた技能、独立した思考による身体の制御
主の命令なしの思考…主の命令を待たずに主の危険を察知し警告する能力。
事象の詳細な分析、から派生した技能は特になく、この技能は他の技能との組み合ることによって力を発揮します。
感知できる事象は
視覚情報
聴覚情報
触覚情報
味覚情報
嗅覚情報
主の心身情報
の7つです。
これらの3つ技能は独立した技能ではなく、[究明する者]の大きな特徴を表したものです。』
これを聞いて俺は考える。この説明を聞いた限りでは[究明する者]は異世界召喚された人物に与えられるチートとしては破格の応用範囲の広い技能だと思われる。この技能をフルで活用すれば戦闘経験のない俺でも戦場に立ってやっていけるほどである。
しかしこれから起こるであろう交渉戦のことを考えるとあまり芳しくない。さっきから聞いている限りこの技能はコミュニケーションにおいては現代のAIと同じ程度しか持ち合わせてないと見える。
つまり今早急には使えないが後々使えるであろう技能と考えられる。
では今俺はどうするべきかを考えると、目の前の戦士の返事を待ってからしか次の行動が選べないという結論に至った。
(思考加速解除)
すると急に体が軽くなり、一瞬よろける。
「隙あり!」
すると、戦士っぽい男がまた突っ込んできた。どうやら俺がよろめいたから隙をついて仕留めるつもりらしい。
『告-主の危機を感知、身体の自動行動の強制起動を報告。目の前の戦士の無力化を試みます。』
そう聞こえたかと思ったらまた俺の体は[究明する者]の管理下に入り戦士の突きをギリギリで躱す。その瞬間相手の懐に入りに刀の柄頭で腹を打ち付けて無力化しようとしたが、
「フンッ‼」
戦士は急に速度を上げてこれを回避する。どうやら異世界ではデフォで出てくる身体強化というものを使ったらしい。
『告-対象の身体能力の大幅な上昇を感知。この世界の魔法によるものと推察。主の体でも強化が可能なことを確認。実行します。』
と聞こえると、急に俺の体は周りの物を置き去りにするような速さで動きだし一気に戦士を無力化した。
『告-対象の無力化に成功。[究明する者]を終了します。』
どうやら俺はこの戦士に初戦で勝ってしまったらしい。これからのことを考えると頭の痛くなるようなことではあるが相手の思うようにされるよりはいいだろうと思い込んで頭の片隅に追いやる。
そして今のことを一緒に召喚された3人に説明するために振り返ると
「…は?」
そこには誰もいなかった。




