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翔太

作者: Toshi

今から書く文章は僕が、僕の為に書くものです。出来るだけ読みやすい文章で書きたいと思う。出来るだけ最後まで書きたいとオモウ。




「絶対に誰にも話てはいけない話って知ってる?」

僕の友人が突然怖い話をしないか?と持ちかけてきた。


友人とは中学からの付き合いでそういう話が好きなのは昔からだった。


昔から小太りでよく言えばガタイが良く、悪く言えばポッチャリな友人は怖いものなんてないとよく言っていた。


怖いものなんて無いと言いつつ怖い話が好きなのはやっぱり怖いからなのか?それとも見たことが無いことに対する単なる恐怖心からなのか。


そんな彼が22歳。俺も22の時。

うちで二人で泊まる事になった。

彼はいつも泊まりに来る時はポテトチップとコーラを忘れない。

いい歳した大人が昔から変わらないんだよ。


僕は隣で酒を飲みながらいつも彼が話するのはうんうんと聞いている。


時には怖い話もよくされた。



今日は珍しく友人はポテトチップとコーラを忘れてきている。なんだかソワソワして落ち着きがない。


「とりあえず座れよ。どうしたんだよ?」

僕は彼に座るよう促したが彼は首を横に振って喋り出した。


「なぁ。絶対に誰にも話てはいけない話って知ってる?」

「なんだもう始めるのか笑?来たばっかりだしなんか食べよ…

「いいからさ!知ってるかって聞いてるんだよ!?」


彼は僕の言葉に被せ気味に、焦る様に言ってきた。


「いや…知らないねぇ。けど絶対に話したらいけないならどうせ聞け無いじゃん俺笑

そんな話できないならするなよなぁ〜」


ここでようやく座椅子に腰をかける友人。


「いや、今日はその話をしに来たんだ。いいかこの話は一語一句間違える事が許され無いんだ。俺が話始めたら喋るのも、話に対するリアクションもやめてくれ。じゃあ準備はいいか?」


「待て!じゃあトイレだけ行かせてくれ!」


いきなり訳のわからない事を言い出して話始めようとする友人の顔は真剣そのものだった。僕はトイレに行き心を落ち着かせてから友人の話を聞くことにした。


「いいか?じゃあ始めるぞ?」



題 私の翔太 2002年7月18日


生まれたばかりの時から私が寝ようとすると決まって泣いた。私がいくらよしよしとあやしてもいっこうに泣き止む気配がない。けれど私は寝なくても大丈夫よ。あなたがそばに居てくれるならね。そんな翔太を私は大好きだった。


翔太はいつも我儘ばかり言って私を困らせた。ご飯はいつも自分のタイミングでしか食べない。突然田舎の祖母に会いに行くと言い出したら玄関に靴を履いて座り込み、ちっとも動こうとしない。

けどそんな翔太を私は大好きだった。


翔太はいつも困った事があると泣いた。自分の思う通りにいかない事。風邪を引いて思うように体が動かない時。翔太は隣の街まで聞こえてるんじゃないかと思うほどに泣いた。

けどそんな翔太を私は大好きだった。


翔太が6歳の誕生日を迎えた日。

私の買ってきたケーキをひっくり返した。なぜなのと聞いたら僕はチョコレートのケーキが食べたかったからだよ。と答えた。私はそれを聞いてごめんねと言って抱きしめた。このケーキは私が責任を持って食べるからね。

大好きな翔太。


そんな翔太が、今日私が少し目を離した隙に庭からいなくなっていた。翔太!翔太!と何度呼んでも返事がない。私は目眩がした。庭に赤いものが見えたから。血のようなものが見えたから。その血は家の中まで続いていた。血を辿っていくと押入れの方に続いていた。翔太と呼んでも返事がない。翔太と呼んでも返事がない。その押入れをゆっくり開けた。私は涙が止まらなかった。翔太の指は一本ずつ切り落とされて。翔太の髪の毛は血が滲むほど乱雑に切られ。翔太の膝と肘は反対の方向に曲げられていた。全身がドス黒く血まみれになっていた。

翔太。私の翔太。なんでこんなことになってるの?目はどこに行ったの?鼻と唇はどこ?翔太なんで?どうしたの?翔太。翔太。翔太。


こんな私に翔太がゆっくりと立ち上がってママのせいだ。って言ってきた。


我儘な翔太。無責任なママのせいよね。翔太ごめんね。翔太。全ては私の責任よ。何も心配しなくていいわ。こんな風にした人を必ず見つけ出して。同じ思いをさせなくっちゃ。


大好きな翔太。


ここまでで友人の話は終わり「ありがとう。やっと楽になれる。」と一言だけ言ってとても嬉しそうに帰って行った。



翌日、友人はアパートの6階から飛び降りて死んだ。その顔はとても笑顔だったと友人の父親から聞いた。



この話を僕が友人から聞いたのが3ヶ月と11日前。

あれから僕は毎日の様に知らない女に追われた。監視された。

部屋にいても。トイレにいても。風呂に入っていても。会社でも。

いつもその女は僕の事を見てきた。それだけじゃない。毎晩僕が寝ていると突然ハッキリと出てきて あなたでしょう? と質問し剃刀の様な物で僕は傷つけられている。眠ることもできない。常に見られて鬱のようだ。もちろん今も見られている。やめてくれ。やめてくれ。

僕は死を感じている。もうすぐ殺されるんだと。


友人との会話にはまだ言ってない事がある。


「この話を他の人に話た人間は楽になれるそうだ。ただ元々はこの母親の遺書らしいんだ。だから文章でも一字一句間違えずに読み切って貰えればその人は楽になれるらしい。ありがとう。やっと楽になれるよ。」


僕もやっと楽になれる。怖くて辛い日々が終わる。読んでくださった皆さんありがとうございました


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