表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦う教祖さま!  作者: 牧場サロ
第二話:教祖様の日常
9/43

Ⅴ:仕事の後は

 ふう、とため息を一つはくと、風呂場に反響した。

 やはり一仕事終えた後の風呂は格別だ……などと言いたいわけではなく、単純に疲れた。

 久々の<当たり>で派手に動きすぎた事も原因だが──


 ……あの悪霊、メチャクチャな攻撃しやがって。



      *



 黒い裂け目に悪霊が呑み込まれた後、

「今のは一体、何なんだ?」

 と、今にも腰が抜けてしまいそうな様子で、源がそう聞いてきた。

「……詳しいことは後で説明します。まずは…」

 俺は遠藤さんに近づきながらポケットからまた<お札>を取り出した。

 今度は五芒星と「忘」の字が書かれている。

「あ、あの…教祖様?」

 遠藤さんはすっかり恐怖に怯えてしまっている。

 無理もない。

 突然家が、家族が、そして自分が訳の分からない現象に巻き込まれたのだから。

「今日のことは、早めに忘れてしまった方がいいでしょう。」

 そして俺はそのお札を遠藤さんの額につけた。


 その後、俺と源の二人がかりで遠藤さん一家を部屋へ移動させた。

 

「私はもう少し残ってやることがあるのですが…あなたはどうしますか?」

 俺がそう聞くと、源がグッタリした様子で

「一旦気持ちを落ち着けたいから、先に帰る。」

 と言い、そのまま帰っていった。

 ……明日になったら、夢か何かだと思い込むんじゃないだろうか。


 そして源の姿が見えなくなると、

「おぬし、むやみに強制解錠を使うなと何度も言っただろう?」

 という低い、だが悪霊の声よりははっきりとした声が聞こえた。


 声の方をへ振り返ると、まだ黒い裂け目が開いたままだった。

 そして裂け目の奥には、声の主…いわゆる閻魔大王がいた。


「久しぶりだな、サタン。」

「ここでその名を口にするな! 今の私は閻魔だ!!」

 怒られた。

 当然だ。

 ……まあ、もちろんわざと言ってやったのだが。

「悪い悪い。それで、あんたが出てくるなんて珍しいな。……何か訳ありか?」

 すると閻魔は少しうつむきながらこう言った。

「……実はあの悪霊、地獄から脱走した悪霊なのだ。」

「脱走?そりゃ地獄も大慌てだったろうな。」

「奴だけではない。他にも悪霊、妖などが同時多発的に大量脱走した。」

「……何だと?」

 閻魔が嘘をついている様子がないので別に彼を疑った訳ではないが、それでも一瞬自分の耳は疑った。

 すると閻魔が改まってこう言った。

「おぬしに、頼みがある。」

「何だ?」

 大体予想がついたが、あえて続きを促した。


「おぬし達も、手伝ってはくれないか?」


 その言葉を聞いた俺は当然、

「是非、協力させてくれ。」

 そう、言ったのだった。



      *



「また面倒事引き受けちゃいましたねぇ。」

「まあ、閻魔大王様のお願いとあっちゃ、断れるわけないだろ。」

「それもそうですね。あ、そういえば、ますたーさっき空飛んでませんでしたか?」

「ああ。あれは単純に残った式神達を集めて足場を作っただけで、厳密には飛んでいた訳じゃない。」

「なるほどそんな技があったのですか。」

「それにしても、破れた式神の分、補充しとかないとなあ……」

「ですねー。」

 と、俺とスイはゆったりと湯船に浸――


 ……………ン?


「……って!す、スイ、いつからそこに!?」

 スイが普通に俺と一緒に風呂に浸かっていた。

 ちなみに、スクール水着姿である。

「ふぇ?さっきからずぅーっといましたよ?…ますたーが考え事に夢中になっていたので、静かに入りました。」

 と、スイが言った。

 しかし……


「だから、勝手に入って来んなっていつも言ってるだろーが!!」


 俺は完全にブチ切れ状態だった。

 こんなところ、源にでも見られたら速攻で逮捕されるんだろうな……とか思っていると、

「まあまあ、背中流してあげますから。」

 そうスイが言った。

 ……とりあえず、落ち着け、俺。

「流さなくていいから。早くここから出て行って。」

 俺は冷静に答えた。

 だが──

「分かりました。……ますたーは私の背中を流したいのですね。」

 と、スイが頬を赤く染めながら言った。


「話聞いてたかあぁぁぁ!?」


 全く伝わっていなかった。

 というか、聞く気すらなさそうだ。

「このままじゃ俺、本当にロリコンだと勘違いされてしまう……」

 などと思ったことをつい口に出していると、


「大丈夫です。ますたーは最初からロリコンですから。」


 スイがとんでもないことを言いやがった。

「俺はロリコンじゃねーよ!!何回言ったら分かるんだ!?」

「あ、でも私500歳超えてるから幼女には入りませんね。」

「そういう問題じゃねえぇぇぇ!!」

 もう何の話をしているんだ。

 あと見た目は完全に幼女じゃねーか。


 ……先ほどから風呂場で叫びまくっている俺だが、近所迷惑にはなっていない…と思う。

 元々このビルは防音・吸音構造になっている。

 風呂場の窓も閉めてしまえばどんなに叫んでも、あまり外へ音が漏れないようになっているのだ。


 この後も俺とスイは会話になっていない会話を繰り返し、結局お互いの背中を流し合う方向で決着した。




 ……………ところで、そろそろ気づいている方も多い思うが、スイは普通の人間じゃない。


 そもそも、人間ですら、ない。

※次回掲載日未定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ