Ⅱ
「か、株!?」
源は驚いていた。
予想外の解答に、と言うよりは、見え透いた嘘に、だ。
少なくとも本人はそのつもりだ。
「そんなわけないでしょう。」
「いいえ、事実です。」
「嘘を吐くな!」
「嘘ではありませんよ。」
「たしかにあなたは以前株を購入していたことがあるみたいだが、最近は無かったはずだ。」
すると教祖はこう言った。
「……まあ、無理もないかもしれません。ここ最近は非公開の株しか買っていませんでしたから。」
「非公開の、株?」
源の顔が少し青ざめた。
「おそらくあなたがたがいくら調べても分からなかったのはそのためでしょう。」
「そんなバカな!!」
「とにかく私は、私利私欲のために他人から無理矢理お金を巻き上げるようなことは一度もありません。……もういいですか?」
そう教祖が聞くと、
「いいや、まだです!」
いきなり源が開き直った。
「まだ、明らかにおかしな点が一つ、あなた方にはあるじゃないですか。」
「一体なんのことでしょうか?」
「まだしらばっくれる気か!」
そして源は前方の「あるもの」を指さしつつ、大声で教祖に言い放った。
「あなた方が祀っているあの『御神体』、どう見ても美少女フィギュアじゃないか!!」
源が指さした場所、祭壇の上には小さな祠のようなものがあり、その中にはまるで、魔法少女もののアニメに出てきそうな女の子のフィギュアが飾られていた。
「フィギュア?…なるほど、フィギュアですか。あなたにはあれがフィギュアに見えますか。」
「どう見てもそうだろ!!」
「いいえ、我々にとってあれはれっきとした御神体…むしろ神そのものですよ。」
「ふざけるな!!誰がそんなことを簡単に信じ――」
「み、源さん。」
源の部下の一人が怯えた様子で源の言葉を遮った。
「なんだ!!」
「ほ、本庁から入電です。…退去せよと。」
「なんだと!?何かの間違いじゃないのか?」
「いえ、間違いありません!」
「ありえない……」
源は愕然とした。
ふと教祖を見ると、教祖は全てを悟ったような様子で静かに笑っていた。
「貴様、何かしたのか?」
「いいえ、私は何も、しておりません。」
「……そうか。」
そして、源は部下の方に向き直り、そして
「お前たちはここで待機してろ。俺が直接確認してくる。」
と言い残してその場を去った。
数分後、配置についていた警官も含め、全員撤退した。