推理1
家に着いた後、式は早速謎について考えてみた。
「まずは、写真を徹底的に調べようか」
翼からもらった写真を全て印刷して机に並べた。
まず式は、7月26日の写真を見てみた。
空が暗いので、夜に撮られているのだろう。時間を確認してみたら、21:35と表示された。
他の写真と違って、この写真だけ夜に撮られているようだ。
翼の左腕には、傷がしっかりとついていた。生々しさが残っているため、傷を負ってからあまり時間が経っていないのだろう。
どうやら26日に傷を負ったのは間違いなさそうだ。
だがこれだけではまだ謎は解けない。
「とりあえず、二つ目を見てみるか」
次に式は7月27日の写真を見た。
こちらは昼に撮られた写真だろう。空も明るい。撮影時間は10:27と表示された。
この写真には傷は存在しない。
翼が言うには、このときには傷は負っていないという。写真をよく見てみるが、確かに傷痕はついていない。
翼の言うとおり画像が加工されていないのだとすれば、本当にこの日は傷を負っていないのだろう。
「最後に、こっちの写真か」
式は7月28日の写真を見た。
こちらも同じく昼に撮影されている。撮影時間は14:10と表示された。
この写真には、左腕に傷がついている。26日の写真と比べると、こちらはある程度回復しているようだ。
写真を見て調べられるのはこんなところか。
「それと、谷口くんがヒントを言っていたな…」
翼がくれたヒント。
まず、未来にも行くことができるということ。つまり、過去と未来両方に行くことができるという。このカラクリをどう見破ればいいのだろうか。
次に、遠い過去や未来には行けないということ。式はこの証言が翼がタイムスリップをしているわけではないという根拠になると考えている。
明確な根拠があっての考えではない。
「一日二日なら何とかすれば誤魔化せる気がするんだよな…」
その何とかが今はわからない。
だが、数日しか戻ったり進んだりすることができないというのが、妙に現実感を与える。
最後のヒントが、タイムマシンに乗らなければタイムスリップはできないという。タイムマシンとは一体何なのだろうか。
「とりあえず、ネットで調べてみるか」
式はパソコンの電源を入れ、インターネットでいろいろと検索してみた。
だが、どのサイトを見ても式が翼に言った方法であるウラシマ効果のことしか書かれていない。
「やっぱ、ネットで答えを探すのは無理があるか」
自分で答えを出すしかない。
一週間という時は、長いようで短い。
翼には負けたくないと思っているので、この問題は必ず解くぞ、と式は意気込んでいた。
だが、式にはそのほかにも気になることがあった。
「写真の谷口くんの彼女は、何故こんなに暗い表情をしているんだろう」
どの写真も翼は笑顔で写っているが、彼女の方は暗い表情だ。
旅行なのに、何故このような表情をしているのだろうか。
「もしかしたら、これも謎に関係あるのかもしれない」
考えてみるが、一向にわからない。
「…やっぱり、新しい手がかりが必要だな」
調べものは明日にして、今日はもう休もう。
式は風呂に入ったあと、すぐさま布団を敷き床に就いた。
翌日、式は学校に行き、榊に質問をしてみた。
「ねえ榊さん、過去に行く方法を知ってる?」
「何を言っているのですか、式くん。過去に行けるわけがないでしょう」
一蹴されてしまった。
「そ、そんなこと言わずにさ、何か知ってることないかな?」
「といわれましても…」
榊は考え込んでしまった。
「光の速さで移動すれば、過去にいけるというのは聞いたことがありますが、信憑性は薄いですからね…」
「…俺と同じこと言ってるよ、榊さん」
やはり人に聞いても答えは出なかった。
ならば、本になら何か載っているかもしれない。
式はそう考え、図書室に向かうことにした。
「それより式くん、今年の海外研修の行き先についてなのですが…」
「ありがとう榊さん。俺は図書室に行って調べてみるよ」
式は榊の返事も聞かずに教室から出て行ってしまった。
「あっ…。まったく、話はまだ終わっていませんのに」