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二十二話

 夕食の時間から、二時間ほど過ぎた頃。

朔たちの戦闘能力について当たり障りのない内容だけを宰相に伝えたウルスは、一方的に交わされた約束を守るため、現在朔たちが利用している部屋の前に居る。

扉を叩き、相手から入る許可を得たウルスは、意を決して朔たちが待つ部屋に入室する。

 

 

「……何してんだ、お前ら」



 険しい目つきで三人を睨みつけるウルス。

これから深刻な話になると予期していたウルスの覚悟を裏切る三人は、夕食を過ぎてもなかなか来ないウルスに、ただ待つだけの時間に飽きてぶつくさ言い出した葵の為に、朔が持っていたトランプで遊びながら待つことにしたのだった。



「思ったより来るのが遅いんで、遊んで待ってた」



 悪びれる様子もなく理由だけ告げる葵に毒気を抜かれ、ウルスは朔たちと同じテーブルに着く。



「――それで、考えは決まったか?」



 テーブルに散らばっていたトランプを回収し終わった朔が、本題を聞く。



「……大分、迷ったが決まった。――お前の提案は断らせてもらう」



 ウルスの言葉に凜は動揺してしまうが、ウルスの話しにはまだ続きがあった。



「――提案は断るが、お前が言うように勇者の嬢ちゃんが使いもんになるまでの間は黙っててやるよ。それで強制的に召喚しちまったお前達に対して、俺が出来る詫びだ」



「俺達の協力はいらないと?」



「ああ」



 朔たちにとって、メリットしかない話。提案そのものは断ったが、これなら文句を言われるようなこともないと思ったウルスは、これで話は終わったと、席を立ちこの場から立ち去ろうとすると背後から――



「――つまり、ウルスの抱えてる問題は、やっぱり国に関わる一大事って事か。なら無理にでも、俺たちはお前に協力することになる」



 朔の言葉に驚きウルスは振り返る。



「な、何言ってんだ。俺は別に何の問題も――」



「嘘つけ。何の問題も抱えてなかったら、俺が話を持ち掛けた時にすぐ答えが出せただろ。それが出来なかったって事は、俺たちが協力してくれるメリットを考えて、あの場で答えが出せなかったんだろ?」



 朔の推論が図星だったのか、言葉が出ないウルス。



「だが、なんで俺に協力する必要がある?」



「――そりゃ、ウルスさんを助けたいからに決まってるじゃない」



 何の思惑もなく、ただ助けたいだけだと、ストレートに気持ちを打ち明ける葵。口には出さないが凛も同様な眼差しをウルスに向ける。なにか裏があるのではないかと勘繰っていたウルスとしては後ろめたさを感じてしまう。

 二人と付き合いの長い朔は、ウルスの気持ちがよく分かるので、苦笑してしまう。



「取り敢えず話してくれないか? もしかしたら、何か助言できることがあるかもしれないし、この事は他言しないことは約束するから」



 ――それも一理あるか、と朔の言い分に納得したウルスは、元の席に戻り、長い話になると前置きすると、ウルスは自身が抱えている問題を打ち明け始めた。





 これから話す話は、何の確信もない主観的な意見だ。だからこそ誰にも話せなかった訳なんだがな。――だから、お前たちには俺の話を聞き終わったら、客観的な意見が欲しい。



 話は先代の陛下が生きていた頃――五年前まで遡る。その頃から、魔物が活発化して世間を騒がしていたが、幸いこの国では、目立った被害も出ることなく、平和の日々が続いていた。



 ……そんな日々が急変したのが、現国王陛下の長男――アレックス王子の十五歳の誕生日、成人を迎える一ヶ月前の事だ。

 何の予兆もなく、先代の陛下が急逝された。急な事態に国中がパニックに陥ったよ。戸惑う民をまとめ、完璧な舵を取ったのが今の陛下――イディオだ。

 周りの者たちは亡き父に代わり、立派に務めを果たそうとしているイディオを見て、王に即位することに何の疑問も抱いていなかったよ。



 亡くなる数日前に『イディオには王位を継がせる訳にはいかん。王位を継ぐのは数か月後に成人を迎えるアレックスか、ウィリアムのどちらかになるだろう』と哀しげな眼をした陛下を聞いてしまった俺以外。



 その事をイディオ自身に伝えたかは分からないが、それから数日後に陛下は亡くなり、イディオは即位。あまりにもタイミングが良すぎるだろ?



 考えたくもないが、俺はイディオが実の父を暗殺したんじゃないかと考えてる。



 戦闘畑の俺じゃ、五年経った今でも、殆ど何も掴めてないがな。……ただ、この五年間で大きく変わったこともある。



 昔から少数ながらも存在していた、権力を笠に着て、民を虐げる貴族派が台頭してきたこと。

 それを率いているのが、アレックス王子だということくらいだ。……昔はあのような民を虐げるような方ではなかったんだがな。


 

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