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二十話

 葵とウルスの一戦は、剣を交わせば交わすほど、剣戟は烈しく熾烈を極める戦いになり、最後には互いの攻防に耐えきれなくなり木剣の方が先に折れるという結末となったのだが、その程度では熱が下がり切れない二人は『だったら真剣で勝負だ!』と口を揃えて言い出したので、流石に訓練でそこまでやる必要はないと朔と凛の二人掛かりで止めに入り、何とか終着を迎えることに成功した。





 中断させられたときは、二人とも文句を言っていたが、落ち着きを取り戻した二人は朔達に自分の非を謝りだした。



「ごめん、楽しくて熱中しちゃった」



「全くだ。こんなに白熱したのは久しぶりだ」


 

 謝ってはいるものの、よっぽど先程の戦いが楽しかったか、和気藹々と戦いの事を振り返る。このまま放置していては、延々と話していそうな二人にこの後の予定を聞く。



「で、この後はどうすんだ? 俺もお前と戦うのか?」



「当然」



 その言葉に目の色を変え肯定するウルス。葵と同様に相当の実力者だと期待しての事だろう。本当に強い奴と戦うのが好きなのだろう。生憎と、葵程好戦的な性格ではない朔にとっては、そのように期待されても全然嬉しくない。

 なので、始める前に過剰に上げられているハードルは下げておくことにする。



「言っておくが、俺は葵ほど強くないからな」



「それは戦ってみて判断するさ」



 それだけ言うと、予備の木剣を取って先に歩き出すウルス。朔も面倒臭そうに木剣を持ってウルスの後を追う。



 ――こうなってしまっては仕方ない。どうせなら平和ボケして鈍った身体のキレでも点検することにしよう。





 剣を構え向かい合う二人。片方は気怠げに、片方は好戦的に。前者は朔で、後者はウルスである。

 朔の態度に、不満の声を漏らすウルス。



「戦いを始める前から、なんてツラしてんだ、辛気くせぇ」



「生まれつきこんな顔だ。それよりさっさと始めようぜ、さっさと終わらせたい」



「……どんだけ戦いたくないんだよ」



 と言いつつ、早く始める事には異存はないウルスは木剣を構え直す。これまで同様に先手を譲る気で待ち構えるウルスだが、朔は一向に向かって来ない。



 ――数分間待ってはみたものの、全く動く様子の無い朔に、いい加減痺れを切らすウルス。



「いい加減攻撃してこい! そっちが来ないなら、こっちから行くぞ!」



 怒鳴りつけると、朔はぽかんとした顔を浮かべる。



「ん? 言ってなかったか? 俺はカウンター主体だから、俺の方から攻撃することなんて滅多にないぞ?」



 当たり前のように言う朔に、数分間待たされたウルスのこめかみに青筋が浮かぶ。



「それならそうと、さっさと言え!」



 怒りの形相を浮かべたまま、朔に突進する。その勢いに猪突猛進とはこういう事か……ウルスは熊だけどな、と暢気な事を朔が考えてる間にウルスは上段からの一撃を繰り出す。当たれば先ず間違いなく脳天が勝ち割れること間違いなしの一撃に、朔は慌てて一歩退き、ウルスの攻撃を躱す。

 


「怖っ! あんなもんに当たったら、木剣でも死ぬぞ?」



 ぶつぶつと文句を言う朔に、問答無用に追撃するウルス。



「――っ! 話の最中に、攻撃、すること、ない、んじゃ、ないか!?」



 ウルスの容赦のない猛攻撃を紙一重で掻い潜りながら、必死に抗議する朔。それがウルスには余裕があるように映り、猛攻に拍車がかかる。流石の朔も抗議する余裕がなくなり、躱すことに専念する。





「兄さんも、よくあれだけの攻撃を躱せますね」



 ウルスの攻撃を只管ひたすら躱す朔を見て感心する凛。



「そりゃ、ウルスの癖と間合いを読んでるんだから、朔なら体力が続く限り躱し続けるんじゃない?」



「……真面まともぶっていても、割と出鱈目ですもんね兄さんも。でも、躱すだけで攻撃する気がないんですかね、兄さんは」



「久々の異世界に来たから、勝負勘でも取り戻そうとしてるんじゃないの?」



 それきり、朔達の一戦に集中する葵を見て、凛も今後に少しでも活かすためにと、朔達の戦いに集中し始めた。





 何十という攻撃を朔に浴びせるも、当初は慌てて避けていた朔は、次第にキレが増し難なく躱し始める。

 これ以上攻撃しても躱されるだけだと確信したウルスは、呆れた目で朔を見る。



「……お前ら、やっぱり実力隠す気なんてなかったろ?」



「隠す気はあったさ。けど、葵がお前大丈夫って言ったんだろ? なら、大丈夫だ」



「勘を信じるのか? そういうタイプには見えないが」



「葵は勘だが、俺のは経験談だ。こういった類の葵の勘は百発百中だ」



「だから、俺が上に偽りの情報を流すと?」



 仮にも国に忠誠を誓っている騎士である俺に国を裏切れということかと問えば、朔は首を振る。



「そこまでは、流石に望んじゃいない。必要最低限の情報に絞ってくれると嬉しいだけさ。その実力に相応しい時期になるまでは」



「それは、勇者の嬢ちゃんが戦力になるまでってことか? それで、この国に何のメリットが?」



「協力してくれたら、お前が悩んでいる事を俺達が全力で協力してやる」





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