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第1話 追われる男

主人公登場!!

夜―それは日中とはうって変わり暗闇に包まれる時。

夜―それは夜行性の生物以外寝静まる時。


それは、栄えあるエアゾル帝国の帝都エスペランサから西10キロメートルにある騙しの森でも変わらないことである。だが、その日は違っていた。いつもなら静まりかえる森の中、青年クラウス・シュバインオーグはなによりも速く走っていた。いや、逃げていた。


「うおおおォォォオ!なんでこんな所に、Aクラスモンスター《レクス・ドラゴン》がいんだよ!って、なんかブレス吐いてきやがったぁぁ!」


寸でのところで身を翻し、レクス・ドラゴンが吐いたブレスを避けるクラウス。彼がここまで驚いているのには理由がある。


ここ騙しの森はその名の通り木や土、落葉などに擬態し、獲物が油断しているところを喰らう魔物モンスターしか生息していないのだ。だが、そんな所に擬態するどころか風景に馴染もうとする気も無いように目をギラギラと輝かせ、涎を垂らしている恐竜のような肉食動物がいたのだ。驚くのも無理はない。


「くっそ!ふざけんなよ、この蜥蜴モドキがぁ!ッ!」


まるでクラウスの罵倒に反応したかのように、レクス・ドラゴンの攻撃はその烈しさを増していく。


「ふぅ、今のは危なかった。だいたい、なんで俺がこんな目にあってんだよ。夜のクエストなんて受けたのが失敗だったか?」


そもそも、彼が何故この獰猛な肉食動物に追われるようになったかというと数時間前まで遡る。



  ◆◆◆◆◆◆



「お~い、クラウスちゃん?今日はクエスト受けるのかな?」


と、中年特有の弛んだ下っ腹がこれでもかというほどシャツを圧迫している男《エバンス・クルーホ》が似合わないというより気持ちが悪い声で食事中の俺に話しかけてきた。


「ん?エバンスか。今日はクエスト受ける気はねぇよ。」


嘘だ。俺は、今日すでにクエストを受注している。例え、すでに受注してなくてもこの男エバンス・クルーホと俺クラウス・シュバインオーグがパーティーを組んでクエストを受けることはないのだ。何故?と思うかもしれないが、理由伏せておこう。彼の尊厳のためにも…


「そうかぁ~。オジサン残念。じゃあ、またねぇ~~~。」


そして、彼は話し掛けて来たとき同じ声で去って行った。


(あいつも普段は面倒見のいい普通のオッサンなんだがなぁ……)


こんな風にくだらないことを思いながらも、食事の手を休めない。俺はこれから夜のクエストにむけて英気を蓄えなければならないのだから。


今回俺が受注したのはAランクの採取系クエスト。採取でAランクのクエストにまでいたったのには理由がある。まず目的地である騙しの森だ。ここは熟練の冒険者でも油断したらあっという間に喰われてしまう人外魔境なのである。次に、今回のターゲットであるツリー・ティアーズは騙しの森の最奥にいるAランクモンスター《ヴァジュラ・ツリー》を攻撃して泣かす必要があるからだ。その他にも要因はあるが割愛しておこう。


「さて、そろそろ出ないと夜の内につかねぇな。オネーサン!おあいそ~。」


「はーい。」


そして俺は食事処を後にした。



 ▽▽▽▽▽▽



「ふぅ~。思ったより着くのに時間が過かちまったな。」


夜もかなり更けたころ、俺はようやく騙しの森の最奥に辿り着くことができた。


「さ・て・と、パッパと泣かせて終わらせちまうか。」


目の前で安眠を貪っているであろうヴァジュラ・ツリーにむけてひとりごちる。実は、ヴァジュラ・ツリーは昼に泣かすとなると非常に困難であり場合によっては泣かないまま討伐してしまう可能性があるのだ。しかし、それは夜、とりわけ睡眠中となるとたった一回の片手剣による斬撃でも泣いてしまうのである。だから、俺はわざわざ夜にこのクエストを受けたのだ。別に、昼間に行って強引に泣かせる手段もあったが、俺のポリシーは”なるべく労力を減らして確実に依頼を成功させる。”に尽きるのだ。冒険者仲間には真面目にやれだのなんだの言われるが、失敗するより断然ましだと思っている。


「てなわけで、サクッと依頼達成させてもらうぜ!」

俺は剣を振り下ろした。



 ▽▽▽▽▽▽



結論から言うと涙は想定通り簡単に採取できた。呆気なかったと言っていいのかもしれない。一撃入れた後、反撃の一つでもとんでくるかと思ったが、こっちが同情しそうな勢いで泣いていたので、飛んできた涙を回収した後に適化呪術である【スリープ】を使って寝かせた。


「なんだか、罪悪感しか残らなかったな……。はぁ~、よし!こんな時はさっさと帰って寝よう!」


自分に言い聞かせるようにその場を後にしようとした瞬間――


  ――メキッ…メキッメキッ……ドサッ――


右から木が倒される音がした。いつもならそのまま気にせず去ってしまうところを何故かその時だけ、何だ、という好奇心に負けてしまい、導かれるように音源に向かってしまった。そこには鋭い牙をみせ、その隙間から涎をたらし、いかにも腹を空かして獲物を探しているレクス・ドラゴンがいた。


「はっ?」


俺から出たのはそんな間抜けな声だった。いや、そんな声しか出せなかったのだ。レクス・ドラゴンはもともと砂漠や荒野といった乾燥地帯にしか生息していないのだ。そんな生物が森に現れるなど来たことがない。


そんなことを考えていた間に、俺の声に反応したのかレクス・ドラゴンが俺の方を向き、俺と目が合った。視線と視線がぶつかる。そしてレクス・ドラゴンは久方ぶりの獲物を見つけた歓喜の咆哮をあげる。


「ギィィィィヤャャャャァァァッァ!」

「ぎゃあああああァァァァァァァァ!」


それと同時に恐怖の悲鳴をあげて逃走する俺。好奇心は猫をも殺す、こういう状況を指すのだろう。現に今俺は、獲物を逃がさんとするモンスターに追われているのだから……




とりあえずの第1話。主人公ちゃんと書けたかな?不安です。次話はレクス・ドラゴンとの戦闘と次のクエストの発表。次々話はようやくヒロイン登場!!。な、感じです。感想などもらえると幸いです。それでは次話で。

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