まわりから見れば―2
私の肌は、日焼けすると赤く熱を持つ。
「遊ばないの?水着になるの、イヤ?」
さっさとエア入りのマットを借りてきた聡美が言う。恥ずかしいだけで、別にイヤなわけじゃない。スポーツウーマン・聡美の長い足とか、大学生の女の人たちの綺麗なラインとかと較べられたくはないけど。プールサイドで服を着たまま、他の人を待っているだけなんて、逆に不細工だとは思う。
「せっかく来たんだから、泳ご」
聡美に手を引っ張られて流れるプール。ぷかぷか浮きながら流れていたら、トオルさんたちに追いついた。
「手毬ちゃん、泳げるんだ。意外」
トオルさんの言葉に、軽く膨れる。運動神経、なさそうに見えるんだ。あたらずとも遠からずだけど。そりゃ走るのは早くはないし、ボールを遠くまで投げられたりはしないけど、日常生活に支障があるほどは鈍くないつもり。
ビーチボールをパスしあいながら、ただ流れていく。誰かが受け損ねただけで、笑いが起きる。はしゃいでいるときって、大学生も高校生も変わらないな。
休憩時間のサイレンが鳴って、一度ビニールシートに戻った。 シャツを羽織ろうとしたら、大学生の男の人のひとりに話しかけられて、おどおどする。
「日焼けとか気にしてるの?焼かない派なわけ?」
「日焼けすると、すぐ真っ赤になっちゃうんです。痛いから」
なんか、すごく無遠慮な視線の人。怖い。
「一緒に来たお友達は人懐こいのに、君はガード固そうだな」
どう答えていいのかわからなくて、泳いだ視線をトオルさんに拾われた。
「手毬ちゃんはゆっくり馴染むタイプなんだから、急にいろんな突っ込みしないでくれる?」
トオルさんが話を引き取ってくれて、ほっとした。
「トオルのロリコン。高校生の女の子、可愛いもんな」
「放っとけ。羨ましければ自分も探せ」
え?あれ?私とトオルさんってやっぱりカップルなの?横にストンと腰を降ろしたトオルさんの顔を改めて見てしまった。躊躇えた視線が絡んで、トオルさんは小さく笑ってから私の頭にポンと手を置いた。
「慌てないの。俺も慌ててないから」
なんだか、すごく意味深、だ。
ちょっと飲んでから帰る、なんて言ってる大学生たちと別れて、聡美と駅から歩く。
「手毬、すごく大事にされてるように見えた。こっちが日陰、なんて呼んで貰っちゃったりして」
「だって、私が日に焼けるの怖がってたから」
「どうでもいい子に、そんな気は遣わないよ。あたしにそんなこと言う人はいなかったでしょ」
聡美はもうみんなと気軽に話ができるし、私みたいに怯んだり乗り遅れたりしてない。トオルさんが私にだけ気を遣ってくれたのは、私が輪に入りきれないからだと思ってた。
「手毬、鈍い」
鈍い……んだろうか。