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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤を離れて
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すぐには馴染めない

ゴールデンウィークの少し前、トオルさんから連絡があった。

―花見をした場所でバーベキューをするから、友達を誘っておいで。

私のことなんて、すぐに忘れてしまうと思っていたから、誘ってくれたことがとても嬉しくて、すぐに「行きます」と返信をした。

 賑やかなイベントが好きな聡美を誘うと、行く行くっとすぐに返事が来た。おしゃれで活発な聡美なら、きっと大学生の中にもすぐ溶け込んじゃうんだろう。そう言えば、彼女のお兄さんも大学生になった筈だ。


 聡美と土手に着くと、大学生たちはもうバーベキューの支度をすっかり終えて、シートに座るところだった。

「あ、手毬ちゃん、こっちこっち」

 トオルさんの他、お花見で顔に見覚えのある何人か。聡美を紹介して、隅っこに座らせてもらう。女の人が気を遣って缶ジュースを差し出してくれた。

「肉、焼けたぞお」

「ビールくださあい」

 ぼんやりとしているうちに、聡美はいつの間にか大学生の中にすっかり入ってしまってはしゃいでいる。

 あれ、私、浮いてるかも知れない。

「居心地悪い?」

 後ろから声をかけられてギョッとすると、綺麗な女の人だった。

「あなた、手毬ちゃん。おとなしそうだものねぇ。大丈夫?」

「大丈夫です。楽しんでます」

 答えたあと、思い直して付け加えた。

「ごめんなさい、雰囲気壊してます?」

 女の人は大きく笑いながら否定してくれた。

「あの連中に、そんな気遣いする繊細なヤツなんていないわ……トオル!女の子誘っといて放っておかない!」

 缶チューハイを何本も抱えたトオルさんに声をかけながら。


「あーっ!聡美、お酒なんて飲んで!」

「かたいこと、言わない言わない。いいじゃん、こんな時なんだから」

 聡美ったら、ずいぶん調子いい。私はますます取り残された気分になってしまう。

トオルさんが横に来てくれたんだけれど、すでにお酒臭い。

「手毬ちゃんは大勢は苦手だった?今度は俺だけで誘うからね」

 大勢が苦手じゃなくて、気後れしてるだけなんだけど。それを説明して、わかってもらえるんだろうか。困った顔をしたのは、自分だけが場に馴染んでいないって気持ちだけ。


 トオルさんは私の頭にポンとひとつ手を置いて―――そのまま、膝に顔を埋めてしまった。

 お酒、弱いんだね。俺だけで誘うからねっていうのも、覚えているのかどうかわからないな。ただ、トオルさんの掌が触れた頭のてっぺんだけが妙に暖かかった。

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