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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
44/55

それぞれの形―2

 明けて、元旦。よく晴れたお正月だ。


 近所の小さな神社に初詣に行く。考えてみたら、4人で一緒に外に出るのは、今まで和のお宮参りだけだった気がする。やっぱり、中心にいるのは小さな和なんだな。寒いのに、ベビーカーの中でもこもこに包れた和は、ごきげん。最近、ちょっとだけシートを起しているので、まわりをキョロキョロしている。

 途中で聡美に会う。やっぱり家族連れ。なんだ、「ウザい」お兄さんってカッコいいじゃない。


「手毬の妹?うわー、ちっちゃい!」

 走り寄ってきた聡美は、和の手を触ってみながら新年のあいさつをしている親同士に視線を走らせる。

「やっぱり、手毬の家族っていいじゃない。みんな優しそうで、こんな可愛い妹もいて」

 可愛いけど、最近始まった夜泣きで全員叩き起こされるんだけど。

「聡美のお兄さんだって、いいじゃない。背が高くてスポーツできそう」

 見た目だけよ、と聡美は肩をすくめた。家の中のことって、外からじゃわからない。


 神社で手を合わせてから、ひとりで行きたいところがあって、先に家に帰ってもらった。引っ越してきたばかりの時に見つけた土手。


 4月にここに立っていた時、私は本当にひとりきりだった。母は遠くなり、前島サンは知らない人で、知っている顔なんてひとつもない場所に住み始めたんだから。

 今、土手に花は咲いていない。枯れた草が風になびいているだけ。


春は春、なつはなつの

花つける堤に座りて

こまやけき本のなさけと愛とを知りぬ


 犀川がどこにあるのか、まだ調べていない。本当の情けとか愛だとかがどんなものだか、私にはよくわからない。春になれば、ここにはまた花が咲く。桜が咲いたら、その頃にはベビーカーにちゃんと座れるようになる和も一緒にお花見しよう。


 私の花つける堤で。


fin.


中学生編は、ここで終わります。

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