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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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新生活―4

 どうしたら子供ができるのかくらい、私だって知ってる。授業にもあったし、友達や本からの知識だってある。母と前島サンがそんなことしてるなんて、想像したくもないけど、やっぱりそうなんだろう。ちょっとじゃなくて、かなり気持ち悪い。そうやって考えると、マンションの部屋割りで母と前島サンの寝室が私の部屋から離れているのは、間取りの都合だけじゃないんじゃないか、なんて余計に気持ちの悪い想像をしてしまう。思春期の子供のいる家は禁止、とかの法律ができればいいのに。

 

「てまちゃん、学校どうだった?」

 帰ってくるなり前島サンはケーキの箱を食卓に置いた。入学のお祝いのつもりなんだろうか。母が入浴中なので、味噌汁を温めながら返事をする。

「まず、着替えてこないとお母さんに怒られるよ」

 前島サンは、言わないと背広のまま食卓についてしまう。きっと、ひとりで生活していた時はその場でワイシャツとかを脱いで、そのまま食事していたんだろう。ドラマなんかで見る男の人の一人暮らしは家に帰ってもかっこいいけど、前島サンはパジャマ代わりのダサいジャージだ。そう思ってる私もスウェットの上下。一緒に生活するって、こんな格好を見せ合うことなんだな、と納得しちゃう。

 

 前島サンがケーキをサーブしてくれたので、3人分の紅茶を入れた。母はツワリが長引いているとかで、私が母の分まで食べた。こんな夜中にケーキなんて食べたら太っちゃう。前島サンが一生懸命気を遣ってくれるので、そんなこと言っちゃいけない気はするんだけど。

 

 前島サンをどう呼んだら良いのかわからないので、今は「ねえ」とか「あのさ」とかって言う。赤ちゃんが生まれたら、きっとその子は前島サンを「パパ」と呼ぶんだろう。その時、私は前島サンをどう呼ぶのかがわからない。赤ちゃんと一緒にパパって呼べれば、きっとそれが一番いいんだろうけど。私も前島さんになった今、いつまでも母の夫を前島サンと呼ぶのはあまりにも変だ。だけど、母にも前島サンにも、なんて呼んでいいのか相談しにくい。食器を軽く洗って、私は自室に引き上げた。ドアを閉めて、溜息をつく。居間でそんなことをしたら、母が気にするのを知っている。

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