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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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立場が違う―1

 中間考査の2日前の日曜日、私はとてもイライラしていた。気が散って上手く暗記できないのが和の泣き声のせいに思えてしまい、聡美と待ち合わせて図書館に行くと、グループ学習の席は満員だった。

 ぜんぜんはかどらない。家に帰って前島サンがソファで眠っているのを見たら、腹が立ってしまった。私は思うようにいろいろなことが動かないのに、前島サンは呑気に寝てる。それはもちろん前島サンのせいじゃなくて、たまのお休みくらいお昼寝するだろうけど。和がも起きてもぞもぞと動いている。母は洗濯物を畳んでいる。


「なごちゃん、ただいま」

 顔を寄せたら、ちょっと臭い。

「なごちゃん、ウンチしたみたいだよ」

 そう言って自分の部屋に入ろうとしたら、母に呼び止められた。

「だって私、これから勉強するんだもん。徹さんが寝てるじゃない」

 なんで勉強しなくちゃならない私が、和のオムツ換えなくちゃならないの。別にたいした時間をとる訳じゃないし、和のウンチはそんなに臭くない。だから、これは完璧なヤツアタリだ。気が散っているのは和や前島サンのせいじゃなくて、私が勉強したくないからなのだ。


「悪いけど、お願い。すぐかぶれちゃうから」

 母は洗濯物を畳む手を休めずに言う。

「やだ。勉強する」

 ただ、意地を張りたいために口答えをした。寝起きのボーっとした顔の前島サンが目に入った。

「徹さんに頼めばいいじゃない。パパなんだから」

「手毬にだって妹でしょ」

 いつもの母なら、このへんで自分が立ち上がるのに、今日は折れてくれない。

「手毬に頼んだのよ。オムツ替えてあげて」

 母の手は止まって、顔は私に向いていた。

「やだって言ったじゃない」


 ひっこめようがなくなった言葉を前島サンが引き取った。

「麻子さん、強制するようなことじゃないでしょ。てまちゃんはイヤだって言ってるんだから、僕がそれくらいします」

 これで私の主張は通った。不満がある筈はないのに。

「いいっ!私がやる!」

 前島サンの言ったことが何故か余計にカンに触ってしまい、私は支離滅裂になった。自分でも何がどうしてイヤなのか、すでによくわからない。腹を立てながらオムツ替えシートの準備をしていると、前島サンに腕を掴まれた。

「僕がやるから、いい」

 静かな口調で、別に怒っている訳じゃないのに、私は妙に怯んでしまった。母とは違う威圧感。



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