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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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学校に訪れる―2

 さて、文化祭当日。

 美術室と図書室の受付で、時間が細切れになる。クラス展示のほうは運動部の子たちが主体になってくれているので良かった。みっつも仕事したら、一日が終わっちゃう。

 時間が合わないから、みゅうと一緒には回れないな。見慣れた校内だから別にいいんだけど、なんか楽しみが減った気分。


 美術室の前でペアの子と受付に座っていると、前島サンがにこにこしながら近寄ってきた。何も受付にいる時間に来なくてもいいのに。タイミング、悪すぎ。

 受付に記名してもらいながら、思わず横を向く。

「てまちゃんの絵はどこ?」

 外で、話しかけないで。これは前島サンが恥ずかしいからじゃなくて、多分母が来ても同じように思う。家の人を同級生に見られるって何で恥ずかしいんだろう。


 私がとってもぶすったれた対応をしたので、顧問の先生が近付いてきた。

「前島、身内の方か」

 記名を見ながらそう言って、前島サンに会釈をしたので、前島サンも頭を下げる。

「お世話になっております。前島手毬の父です」

 気恥ずかしそうに、それでも父と発音した前島サンの顔をポカンと見つめてしまった。先生もずいぶん驚いた顔はしたけれど。あ、前島サン、赤くなってる。私も顔が熱い。

 案内してこい、と先生に言われた。

「やですっ!名前書いてあるし!」

 ここで自分の絵の前に、ふたりで一緒に立てる人なんて絶対いない。


 美術室をゆっくり一周した前島サンは、私の絵の前でしばらく立ち止まっていた。先輩たちに比べると私の絵なんか全然ヘタクソだから、あんまりじっくり見ないで欲しい。見たいと思ってくれて嬉しいなんて、一瞬でも思った私がバカだった。

「じゃ、あと図書室に寄ったら帰る。ブックレビュー書いたんでしょ?」

「読まなくていい!」

 わかったって言いながら、きっと図書室にもじっくりいるだろう前島サンの背中が歩いていく。

 前島手毬の父です。耳の中にこだましてるみたい。

 交代時間まで、私はペアの子とお喋りもしないで前島サンの言葉を反芻していた。



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