新しい人を迎える―7
赤ちゃんのいる日常は慌ただしい。祖母は平日に来て泊まっていったり帰ったりを繰り返していたが、それも二週間程度だった。母は常に眠そうで、私が帰宅するとリビングで和と一緒に寝ていることも多い。夜中に何回も起きなくてはならなくて、続けて眠れないそうだ。祖母が来てくれている間、祖母が洗濯や食事の支度をしてくれていたのだけれど、母に任せたらあまりにも大変で、私と前島サンも手伝う。祖母にずいぶん教えられたらしく、前島サンの洗濯物の干し方は幾分マシになった。
母が家事をしている間、和が泣きだすと「抱っこしてて」と母に渡されることがある。本を読んでいたり絵を描いていたりすると、面倒くさい。
でも、私が抱いて揺すると泣きやんだりするんだ。前島サンは抱っこがとてもヘタらしい。私が抱きあげて泣きやむ和を恨めしそうに見たりする。実は、私は内心得意だったりするんだけど。
「やっぱり女の子の方が赤ちゃんの扱いは上手なのかなぁ」
なんて軽くへこんでる前島サンは、ちょっと可哀想かも。
文化祭の準備で部活の時間が増え、委員会の時間も増えて私も忙しくなってきた。文化祭が終わるとすぐに中間考査が始まるし。和の顔は毎日ちょっとずつ変わってくる。
「手毬の赤ちゃんの頃とよく似てる」
母がミルクを飲ませながら、そんなことを言うのでちょっとびっくりした。
「私はパパ似だって言わなかったっけ」
「うん、おかしいね。だけど、本当によく似てるのよ」
写真の父と前島サンの見かけは、全然似ていない。
前島サンは和にすっかり夢中で、まだ使えない赤ちゃんの玩具なんか買ってきちゃう。それだけじゃ不公平だと思うのか、私にもケーキなんか買ってきちゃう。そんなことで赤ちゃんにやきもち焼いたりしないんだけどな、なんて思いながら、ケーキは美味しく食べちゃうんだけど。そして、やっぱり眠っている和のほっぺをプニプニつついてみたりしてる。
私の父が私にしたっていうことを、前島サンが和にする。前島サンの優しい表情を見ながら、思う。私も、あんなふうに可愛がられたんだ。
淋しいような嬉しいような不思議な感じ。でも、嫌じゃない。