表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
34/55

新しい人を迎える―7

 赤ちゃんのいる日常は慌ただしい。祖母は平日に来て泊まっていったり帰ったりを繰り返していたが、それも二週間程度だった。母は常に眠そうで、私が帰宅するとリビングで和と一緒に寝ていることも多い。夜中に何回も起きなくてはならなくて、続けて眠れないそうだ。祖母が来てくれている間、祖母が洗濯や食事の支度をしてくれていたのだけれど、母に任せたらあまりにも大変で、私と前島サンも手伝う。祖母にずいぶん教えられたらしく、前島サンの洗濯物の干し方は幾分マシになった。


 母が家事をしている間、和が泣きだすと「抱っこしてて」と母に渡されることがある。本を読んでいたり絵を描いていたりすると、面倒くさい。

 でも、私が抱いて揺すると泣きやんだりするんだ。前島サンは抱っこがとてもヘタらしい。私が抱きあげて泣きやむ和を恨めしそうに見たりする。実は、私は内心得意だったりするんだけど。

「やっぱり女の子の方が赤ちゃんの扱いは上手なのかなぁ」

 なんて軽くへこんでる前島サンは、ちょっと可哀想かも。


 文化祭の準備で部活の時間が増え、委員会の時間も増えて私も忙しくなってきた。文化祭が終わるとすぐに中間考査が始まるし。和の顔は毎日ちょっとずつ変わってくる。

「手毬の赤ちゃんの頃とよく似てる」

 母がミルクを飲ませながら、そんなことを言うのでちょっとびっくりした。

「私はパパ似だって言わなかったっけ」

「うん、おかしいね。だけど、本当によく似てるのよ」

 写真の父と前島サンの見かけは、全然似ていない。


 前島サンは和にすっかり夢中で、まだ使えない赤ちゃんの玩具なんか買ってきちゃう。それだけじゃ不公平だと思うのか、私にもケーキなんか買ってきちゃう。そんなことで赤ちゃんにやきもち焼いたりしないんだけどな、なんて思いながら、ケーキは美味しく食べちゃうんだけど。そして、やっぱり眠っている和のほっぺをプニプニつついてみたりしてる。

 私の父が私にしたっていうことを、前島サンが和にする。前島サンの優しい表情を見ながら、思う。私も、あんなふうに可愛がられたんだ。

 淋しいような嬉しいような不思議な感じ。でも、嫌じゃない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ