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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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新しい人を迎える―3

 生まれるのは、母と前島サンの子供だ。知っていることと理解していることは違う。私は理解していなかった。そして、唐突に理解した。

 今、前島サンと生活していても、私に生を授けたのは前島サンではなく私の父で私が今まで成長してくる過程を大切にしてくれたのは、父だ。覚えていないほど短い期間だったけど。病院のベッドの脇に私の写真を置いておくほどに、大切にしてくれていたのだ。前島サンが「お父さんと違う」って言ったのは、そういう意味だったんだ。


 じゃあ、前島サンは?親子じゃなくても家族になれるって言った前島サンは、私をどう思っているんだろう。今まで、前島サンがいることに慣れなきゃってばっかり思ってたけど、前島サンも私がいることに慣れていないことに気がつかなかった。

 嫌われてはいない、邪魔に思っていたりもしない、と思う。きっと、母や生まれてくる子供だけじゃなく、私も含めて「家族になれる」と言ったんだろう。

 前島サンが母と家族になろうと思ったときに、私は母とすでに家族だった。もしかしたら前島サンこそが、疎外感を感じていたのかもしれない。


 ただ、ひとつは覚悟しておかなくてはならない。生まれてくる赤ちゃんにとっての前島サンは、紛れもなく「お父さん」だ。ここまで育ってしまった私を見守るのと、何もできない状態から成長に関わって行くのとでは全然スタンスがちがう。だから、私の立ち位置はまだ未定のままだ。


 以前、母が仕事で遅くなって祖母の家で夕食をとるとき、母はきまって「ごめんね」と言った。私はいつも「ふたり家族だもん、大丈夫」って答えた。なんでもない、普通のやりとりで。一緒に生活してるんだから、気を遣わなくてもわかってるって思ってたから。

 自分の中にヒントを見つけた気がする。大事なのは、そんなことなのかも知れない。大丈夫、はっきりしないけど大丈夫だ。



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