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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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新生活―3

 「お友達、もうできた?」

入学式から先に帰ってきていた母が、私にコーヒーを出しながら言う。

「一日でなんか、友達になれるわけないじゃん」

大人って、子供同士が群れていることを友達って表現する。子供には「友達」と「知らない人」の2種類しかないって思っているみたい。母は、それはそうねぇと頷いた後、自分のコーヒーを持って食卓の向かい側に座った。

「コーヒーなんか、飲んでいいの?」

「一杯くらい飲んでもいいじゃないの、ケチ」

友達みたいな親子、親戚も友達も私たちをそう評した。

私も去年まではそう思っていたけど。


 母の恋人を紹介されたのは、6年生になってからすぐのことだった。母よりも7歳も年下なので、友達のお父さんたちよりも遙かに若くて、イメージが狂う。その前から母はずいぶん綺麗になったし、帰りが遅くなるからと祖母の家で食事することが増えたので、恋人ができたことには気が付いていたんだけど、それで私と母の生活が変わることになるとは思わなかった。私自身が外で新しい友達を増やし、休日に母と過ごす時間が減っていたので、母の外出が増えることは、何でもないことだったのだ。


 母に前島サンを紹介された日、私は警戒心でいっぱいだった。

「手毬ちゃんですか、こんにちは。」

彼は窮屈そうに膝を折って、私と目線を合わせた。私が知っていた大人の男の人は、親戚のおじさんと学校の先生だけなので、なんだかもの珍しい。

「君のお母さんとお付き合いしてる前島と言います。仲良くしてね」

子供扱いしない口調が気持ちよかったので、前島サンと私は、すぐに仲良くなった。「いとこのお兄さん」くらいの仲の良さだけど。


 前島サンと一緒の時も、母は私と接する時には普段通りにしようとしていた。それでも、時折見える甘えた仕草や拗ねたような口調は、私の知らない母だ。イヤな言い方をすれば、母の顔じゃなくて、女の顔。今まで協力し合って上手に回ってきたと思っていた母との生活は、表面上だけのように思えてしまい、私は母と「友達みたいな接し方」ができなくなった。


 そして、先々月急に結婚が決まった。母のお腹に、新しい命が宿ったから。



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