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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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新しい人を迎える―2

 雨の日の図書室は、いつもより人が多い。いつもの出窓の席に座っていたら、委員会の日じゃないのに司書の先生に手伝いを頼まれた。今日こそ、砂漠で黄金を守るグリフォンの絵を思い浮かべたかったのにな。

 返却本を書架に戻していたら、珍しく聡美が顔を出した。ソフト部は、雨の日でも廊下でトレーニングしてるはずなんだけど。

「生理の二日目だから、休んだ」

 あっさり口に出す聡美にびっくりした。私はまだ、誰にも言えない。


「手毬のお母さん、もうじき赤ちゃんが生まれるんでしょ?」

「なんで知ってるの?」

「夏休みにスーパーで会ったから。お父さんと一緒に買物してた」

 お父さんって前島サンのことだろうな。親と一緒に買物に行って、お母さん同士が挨拶すればすぐにわかっちゃうことなんだ。知られたくないって精一杯思ったって、同じ地域で生活してるんだから。私の図書室の仕事にキリがついたところで、聡美と一緒に帰ることにした。


「手毬のお父さん、若くて優しそうでいいなあ」

 聡美はみゅうと同じことを言う。羨ましがられることなのかどうか、わからない。

「聡美のお父さんってどんな感じ?」

「ウザい、うるさい、ダサい。人の話を聞かない。やせてるのにお腹だけ出てる」

 聡美はポンポンと言い、にやっと笑った。それは前島サンには全部当て嵌まらないな、と思ったら少しだけ優越感。私の手柄じゃないけど。


 私は母とふたりだけの生活が長かったので、母が体調が悪い時や良いことがあったことはすぐにわかる。それはきっと、家で見ている相手がお互いだけだったからなのだろう。急に家族が倍に増えようとしている今、母だけとの関わりの密度で接するなんて可能じゃない。赤ちゃんが来たら、きっと中心は赤ちゃんになる。母と前島サンと赤ちゃん。

 あれ。私だけがはみだしてるみたいな気がする。母が産むんだから当然私の妹なんだけど、私は前島サンの子供じゃないし。なんだか、すっごくフクザツ。

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