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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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新しい人を迎える―1

 最後の宿題追い上げ一週間で夏休みが終わり、入れ替わりのように母が産休に入った。私は、10月に開催される文化祭に出品するための作品を作らなくてはならない。夏休みに何も考えなかったツケが回って、今頃デッサンを始める。グリフォンとかケルベロスとかを描きたいな、と思っていたんだけれど、空想画ってびっくりするぐらい構図が浮かばない。

 夏休みに少しでも考えとけば良かった。

 

 学校から帰ると、毎日母が家にいるのが慣れない。学校で何かあった?なんて聞かれても、毎日答えるような事件なんてない。授業中に聡美とおしゃべりしてて先生に怒られたとか、絶対言わないし。

 家の中は少しずつ赤ちゃんを迎える準備が始まっていて、家に帰ると母がベビー用品店の紙袋をごそごそと整理していたりする。

 全部びっくりするくらい小さくて、見ているだけで楽しい。赤ちゃんを入れて歩く籠(クーファンとかいうらしい)なんて、温泉なんかにある脱衣籠よりも小さいくらい。女の子らしいので、全体的に淡いピンク色。

 

「お母さんが入院したら、おばあちゃんが来てくれることになってるから、心配しなくていいよ」

 助かった。私がお洗濯も料理もしなくちゃいけないかと思っていた。前島サンの料理の腕はまったく上がっていないし、洗濯物を干しながら母に文句を言われてる。夕食の後、食器下げるときに油モノとそうでないものを重ねちゃうし。私にまで指摘されて「麻子さんがふたり」と呟く前島サンは、子供みたいでおかしい。

 徹さんと呼ぶと私も照れて、呼ばれる前島サンも照れて、これが自然になるころにはもう赤ちゃんがいるのかなと思う。

 

「赤ちゃん、私も抱っこしたりミルクあげたりしていい?」

 当然、と母は笑いながら返事をした。

「徹君より手毬のほうが頼りになるかも知れないね」

 そう言われると、姉になるんだって楽しみになる。電車の中とかでたまに見る、泣いている赤ちゃんはとても声が大きい。やっぱり、うるさかったりするのかな。ブサイクだったら困るな。ちゃんと可愛いって思えるだろうか。

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