表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
27/55

家族になれる―4

 頭がぐるぐるする。理解できたのは「お父さん」と呼ばなくてもいいってこと。でも母と結婚したんだから、当然父なんだと思うんだけど。

「あのね、てまちゃん」

 前島サンは私の顔を覗きこむように言った。

「親と子供が揃ってれば家族ってわけじゃないでしょう?違う形の家族もあるって僕は思ってるんだけど」

「よく、わかんない」

 母に助けを求めようとしたんだけど、母はまた別のことを考えてるみたいな顔をしてる。指を組み合わせてその上に顎を乗せる、何かを言いたい時の母の癖。私が相談したかったのは、前島サンを何て呼べば良いかだけだったのに。ここで「家族のありかた」なんて話したくない。だって、私にはわからないもん。

 

「徹君、手毬が混乱してるから、その話はまた今度」

 母が助け舟を出してくれたので、少しほっとする。

「手毬が徹君になんて呼びかければいいか迷ってるなんて気がつかなかった。ごめん」

 母は話を本題に戻した。

「確かに、前島手毬が前島徹を苗字で呼んだらヘンだよね。名前じゃダメ?」

 大人の男の人を名前でって、呼びにくい気がするんだけど。徹さん?徹君?徹ちゃん。口の中でブツブツ言ってたら、前島サンがくすぐったそうな顔をした。

「てまちゃんと麻子さんの声が似てるから、なんか不思議な感じ」

 

「てまちゃんが呼びたいように呼んでくれたらいい。できれば、呼び捨てじゃないほうがいいなあ」

 いくらなんでも、呼び捨てにはしない。

 赤ちゃんが生まれて、家族の呼び方がバラバラだと困らないかなあ。そう言ったら、言葉を理解するまでに一年近くあるよと笑われた。

「その時までに何らかの形になるんじゃない?麻子さんをお母さんと呼ぶのだって、強制じゃないでしょ?」

 焦る必要はないんだからね、そう言いながら前島サンは私の髪を掻き混ぜた。子供にするみたいなことで、本当はあんまり嬉しくないんだけれど、黙って髪の毛をくしゃくしゃにされていた。

 そして、ぼんやり「親と子供が揃ってれば家族ってわけでもない」ことについて考えようと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ