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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
21/55

友達を招く―1

 退屈な夏休みが来た。運動部の子たちは、毎日部活があって忙しそうだ。聡美なんか、合宿まであるって楽しみにしてる。

 美術部はスケッチのハイキングが一回。しかも、家から歩いて行けるところだ。秋の文化祭までに作品をひとつ完成させるようにと指示されたけど、週に2回の活動日は、お喋りだらけのだらだらした活動。

 図書室の解放日も来る人はちらほらで、司書の先生も張り合いがなさそう。

 

 宿題は、やる気まったくなし。読書感想文と美術のポスターだけを最初の一週間で終わらせたら、あとはどうでも良くなった。昼間にテキスト開いたって、問題なんか読んだ端から忘れちゃう。

「毎日ゴロゴロしてると太るよ、手毬」

「洗濯物取り込んだり、お風呂の掃除したりしてるもん」

 最近、背伸びしたり屈んだりの動きができなくなったらしい母は、ずいぶんふっくらしてきた。朝方に足が攣ることが多いという。8月の終わりから産休に入るので、仕事が忙しそうだ。

 

 みゅうが家に遊びに来る。私の祈りは神様に届かなかったらしく、前島サンは在宅だった。みゅうなら、きっと大丈夫。よそのおうちと違うなんて、バカにしたりしない。

 自分に言い聞かせてもやっぱり緊張して、私は朝からそわそわしていた。だけど前島サンにも、顔を出さないでとは言えなくて、やっぱり遊びに来てなんて言わなければ良かった、と後悔し始めた頃にチャイムが鳴った。

 玄関に一番近く座っていた前島サンが、気軽に立ち上がった時に気がつく。いつもの半ジャージと首の伸びたTシャツ、つまりパジャマのまま。しかも、ヒゲ伸びてるし。思わず、シャツの裾を掴んだ。

 

「その格好で私の友達の前に出ないで」

「え?だって、コンビニくらいまで、いつもこのままだけど」

「ダメ!着替えてきて!」

 私、前島サンに、こんなに強い口調でモノを言ったのは初めてかも。ハイハイ、と返事をして寝室に向かった前島サンは、妙に嬉しそうだった。

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