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花つける堤に座りて  作者: 蒲公英
花つける堤に座りて
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居場所を広げる―5

 食卓を沈黙が支配しているなんて、良くない言い回しだろうか。3人とも黙ってテレビを見ながら食事をしている。テレビでは、人気のアイドルグループが踊りながら歌ってる。

「てまちゃんは好きなアイドルとかいないの?」

 答えても、前島サンはそれが誰だかわからずに話が途切れた。私からは、前島サンへの話題も母への話題もない。学校の友達のことも、読んでいる本のことも、別に話したいとは思わない。小学校の頃は、あんなになんでも喋っていたのに。

「友達みたいな親子」と「友達」って全然違う。もう、友達みたいとも思わなくなっちゃったけど。

 

 学校のどの先生が好きとか、誰かの髪型が可愛いとか。同じ年の友達同士なら当然の話題があって、それに賛成したり反対したりのお喋りができるのに、家でそんな話をしたって母には関係のないことだし、もちろん前島サンにも関係ない。読んだ本の感想を言っても仕方ないし、部活で何してるかなんていちいち言わない。

 困ったな。

 みんな、家でごはんの時って何を話してるんだろう。

 

「え?家で親となんか喋んなーい。話、合わないし、ウザイしー」

 聡美の返事は明快だった。

「学校でだって話が合わないヤツとなんか喋んないもん」

 それで、いいの?

「兄貴となんか、1年くらい口利いてない。ムカつくし」

 ちょっとびっくりして、それから安心した。聡美みたいに家にも学校にも心配事なんてなさそうな人でも、親と話したりしないんだ。

「手毬って家の中でまでイイコ?」

 逆に、そんな風に質問された。うちは、よそのおうちと違うから、なんて言えないけど。

 

 そうか、話題がなければ無理して話さなくてもいいのか。そういえば、母とふたりだけだった時だって、ひっきりなしに喋ってたわけじゃないし。そう思うと少しだけ気楽になって、私はその日からリビングに顔を出せるようになった。

 前島サンには、まだ謝れないけど。

 


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