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人とカマキリ

作者: 平田智剛
掲載日:2026/10/30

「男を食べるなんて、女尊男卑ね」


私が言うと、メスカマキリは食事を止めた。


「あなたも女でしょう。人間の女は違うの?」


「もちろん。男女平等よ」


「でも、戦争では男を戦わせるんでしょう。危険な仕事で死ぬのも、男ばかりだとか」


「それは別の問題よ。現に、この国の男女平等指数は世界一なの」


「男がどれだけ死んだかも入っているの?」


人間のほうが平等だと証明しようと、私は集計表を開いた。男の死者数は、項目にすらなかった。


「入れたら、順位が下がるわね」


つぶやいてから、私は口を閉じた。だが、すぐに言い返した。


「男が犠牲になるのは、社会を守るためよ」


「私も卵を産むためよ。自分で男を殺して、ちゃんと味わって食べてる」


「人間の女は、自分で男を殺したわけじゃないわ」


「社会に殺させれば、残酷ではなくなるの?」


「でも、犠牲を無駄にはしていないでしょう。そのおかげで、みんな暮らせているのよ」


「それは私たちも同じよ」


「…」


「どうして人間は、男女平等を考えるとき、その犠牲を数えないの?」


私は集計表を見た。


「男の命で社会を守ってもらって、その犠牲を数えずに、男女平等という評判まで手に入れる。それって、同じ男を二度食べていないかしら」


もう、言い返せなかった。


「あなたたち人間のほうが、よほど女尊男卑だと思うのだけど」


二度目に食べる口は、私にもついていた。

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