人とカマキリ
「男を食べるなんて、女尊男卑ね」
私が言うと、メスカマキリは食事を止めた。
「あなたも女でしょう。人間の女は違うの?」
「もちろん。男女平等よ」
「でも、戦争では男を戦わせるんでしょう。危険な仕事で死ぬのも、男ばかりだとか」
「それは別の問題よ。現に、この国の男女平等指数は世界一なの」
「男がどれだけ死んだかも入っているの?」
人間のほうが平等だと証明しようと、私は集計表を開いた。男の死者数は、項目にすらなかった。
「入れたら、順位が下がるわね」
つぶやいてから、私は口を閉じた。だが、すぐに言い返した。
「男が犠牲になるのは、社会を守るためよ」
「私も卵を産むためよ。自分で男を殺して、ちゃんと味わって食べてる」
「人間の女は、自分で男を殺したわけじゃないわ」
「社会に殺させれば、残酷ではなくなるの?」
「でも、犠牲を無駄にはしていないでしょう。そのおかげで、みんな暮らせているのよ」
「それは私たちも同じよ」
「…」
「どうして人間は、男女平等を考えるとき、その犠牲を数えないの?」
私は集計表を見た。
「男の命で社会を守ってもらって、その犠牲を数えずに、男女平等という評判まで手に入れる。それって、同じ男を二度食べていないかしら」
もう、言い返せなかった。
「あなたたち人間のほうが、よほど女尊男卑だと思うのだけど」
二度目に食べる口は、私にもついていた。




