電話
オレの視線の先には、大きなハートのクッキーが…
これは、友梨奈がまっつんに焼いたんだろうな。
みなかったことにして、
「友梨奈、手伝うよ」
って話しかけたところで、友梨奈の家のチャイムがなった。
「あ、わたし出てくるね」
「うん」
…
シーン
…
あれ?
来客は?
ずいぶん静かなんだけど?
少し心配になって、玄関の方に行ってみることにした。
すると、なにやら小声で
「ちょ…まだなんだよぅ〜」
と、聞こえてきた。
まだ?
…
「どうかした?友梨奈?」
オレが玄関に出ると、そこには友梨奈とまっつんが手を取り合っていた。
…
これは、オレお邪魔なんじゃね…
「あの、オレやっぱり…かえ…」
「らないで‼︎」
まっつんが、結構大きな声でオレをひきとめた。
…
「でも…」
「ごめんなさいねぇ。少し早く来すぎちゃって。もうてっきり…うぷっ」
友梨奈がまっつんの口を塞いだ。
「もう、まっつんはおしゃべりさんだからさぁ。二階行こ!ほら、水弥斗も」
…
友梨奈とまっつんって、やっぱり…めっちゃ仲いいよね…?
てか、チャラ男のまっつんだったな。
というか…
あの服装は、チャラいのか…おしゃれなのか…
よくわからないけど、とりあえずテーブルを囲んで三人で座った。
「じゃあ、乾杯しよ?友梨奈と水弥斗くんと、まっつんの親睦会にかんぱ〜い!」
まっつんがジュースの入ったコップを掲げた。
「はーい、かんぱ〜い」
二人が、オレのコップに乾杯を求めてきたので、オレも乾杯した。
親睦会…?
オレをみて、ニコニコするまっつん。
バイト先の人と同じとは、まったく違う気がしてならない…
「あの…友梨奈から聞いたんだけど、これからは…松…まっつんさんって呼んでもいいのかな?」
オレの言葉にまっつんは、
「うん、そうしてぇ、さんはいらないよ〜。バイトでは恥ずかしくて、あんな態度とってごめーん」
って、手を合わされた。
は、恥ずかしい⁉︎
そ、そう…だったの⁉︎
それは、びっくりだ。
てか、えっ⁉︎
まっつん…マニュキアしてる…
てか、なんなら化粧もしてるんだ⁉︎
めっちゃおしゃれさんなんだな。
よくみたら、靴下も可愛くておしゃれだ。
「まっつんは、おしゃれなんだね」
「え〜、うれしぃ」
…
口に手をあてて、喜ぶまっつん。
…なんか、まっつんって女の子…っぽいな。
友梨奈は、まっつんをジーッとみて
「あ、そのリップまさか…」
と、見入った。
「そう、新作〜」
と、くちびるをプルプルさせていた。
「水弥斗くんも、化粧する?なんなら、この新作のリップ超いいよ?塗ったらキスしたくなる…うっぷ」
また、友梨奈に口を塞がれるまっつん。
「んもぅっ‼︎リップとれるからぁ」
まっつんが、プチ怒りしたかと思えばなにやらバッグをゴソゴソしだした。
てか、バッグ大きくね?
「ジャーン‼︎パン焼いてきたの〜」
⁉︎
「えっ⁉︎まっつんが⁉︎」
「そうだよー、まっつんお菓子づくりも上手でさ、わたしも教わったりするんだ」
…
「へー…」
まっつんの謎は、深まるばかりだった。
そして、三人でまっつんの焼いたパンをいただいた。
「「「美味しいー‼︎」」」
とても美味しいパンを堪能しているあまり、携帯が鳴っていたことに気づかなかった。
「あ、水弥斗の携帯なってない?」
そう言われて、携帯の画面をみるとばあちゃんからだった。
「ちょっと、電話出てくるね」
「「はーい」」
なんか、友梨奈とまっつんは双子みたいに仲いいな。
あ、それよりばあちゃんどうしたんだろう?と電話すると、
「おや、いらっしゃい」
とばあちゃんが電話にでた。
インターフォンと間違えてないか?
「ほら、実那ちゃん。水弥斗がきたから玄関あけてあげなー」
と、言っていた。
完全に間違えてるね…。
「ばあちゃん…あの、聞こえる?」
「あ、もしもし水弥斗?わたし実那」
「あー、実那か。ばあちゃんオレに間違えて電話してきたかも」
「そうみたい。じゃ、わたし今さ彼氏きてるから切るね。」
「えっ?それって松木くん⁉︎」
「うん、そうだけど?」
「あー、松木くんによろしく。じゃあね」
「はーい」
…
松木くん…が二体
なるほどー。
そっくりな松木くんが隣町にいるのは、確定か。
浮気、疑ってごめん…。二人の松木くん…。
てか、そもそも松木くんは二人なのか。
電話を切って友梨奈とまっつんのところへ戻った。
続く。




