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6.不審者
「マリお嬢様。変な男達がおりますが、お知り合いでございましょうか」
そろそろ正門前というところで、ドライバーの佐藤が言う。
「知らないわ」
「ずっと見ておりますが、如何致しましょう」
「かまわないわ、こんな朝から飛びかかっても来ないでしょうし」
「一応、私が外からドアをお開けいたしますので、少々お待ちください。」
「ありがとう」
「一目惚れしました。付き合ってください」
「え~っと」
登校中の子達が一斉にキャーキャーと騒ぎ出す。
頭を下げる男の子の後ろでめがねとデブがニヤニヤしている。
「お嬢様。私が対応致しますので、お先に学校内へ」
佐藤に促されるまま、門に向かうと「誰!あれ!」と級友が取り囲んでくる。
「知らないわよ」
本当に知らない。
教室の窓から正門を見るとすでに車も男達もおらず嘘のようにいつもどおりだった。
「いきなりあれはまずいでしょう」
「笑える」
「うるせーわ、他に何が言えるってんだよ」
「しかも運転手?執事さんに怒られてるし」
「マジモンの金持ちだわ」
「こうなったら自宅を訪問して…」
「やめとけ」
「一番嫌われる」
「見ず知らずの男が突然自宅に来るとか、恐怖だわ」
少年達はしばらく自転車を並べて走っていたが、クラクションを鳴らされ縦一列になる。会話はそこで終わってしまった。




