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43.夜長

全く今年の夏は暑かった。残暑がこうまで長いと体がおかしくなっちまう。


老爺が園側で愚痴りながら、缶ビール片手に便せんに目を通す。封筒はすでに日焼けていたが、便せんは白く、きれいに折りたたまれている。濡れた右手をズボンで拭い、丁寧に広げて目を通す。


「結局これは渡せなかったな」


あの年でこれだけ書けてりゃいい手紙だろう。俺もやるもんだ。

色々あったがこの年でも元気でやってる。ケンもカズも先におさらばしやがって。

最後の同窓会にはエリカもマキもババアになってやがったが、その先分かんねえな。多分元気だろう。

あのライブハウスはまだやってるみたいだ。今、切り盛りしてんのは誰だかわからねえ。変なマスターだったがかなり贔屓にしてもらってた。あれがなきゃ今はねえな。


「俺もいつでも好きにしてもらって構わねえんだがなあ」


墓前でいつもつぶやく言葉を繰り返し、庭に出て月明りで照らされた庭を見まわし、また縁側に腰掛ける。


「コオロギの野郎、あっち行け」


中指ではじくと、便せんから生垣に飛んでいきどこからか鳴き声が響く。

よっこいしょと腰を上げ、手紙をきれいにたたむと封筒に入れた。

片付けを済ませ戸締りをすると、寝室に行き、電気が消えた。




翌日、

隣家の老婆が「姿が見えない」と不審に思い、町会長と訪ねたところ寝室で眠るように亡くなっていた。

2通の手紙が両手でやさしく握られていた。

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