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42.落日

「今日はなんだか調子がいいんです」


 妹がそう言いだしたので久しぶりに家族で昼食をとった。妹は軽くではあったが「おいしい」と喜んで食べていた。このところは点滴と流動食ばかりだった。こっく庭に出た時には車いすから立ち上がろうとして皆を驚かせた。看護婦に叱られていたが不満そうにしていた。あんな不貞腐れた顔は久しぶりだ。庭から見える川沿いの街並みを背に、家族や佐藤、お手伝い、コックそして看護婦も並んで写真を撮った。セルフタイマーがうまく動かず何枚か取り直したが、終始妹は笑っていた。


 おやつ時に「少し疲れました」と言ったので部屋に戻って休んでいたようだが、夕食も一緒に取った。両親は気遣いながらも楽しく思い出話をしていた。幼い時の失敗談が話されるたび妹は「そんなこと覚えていません」と言いつつも、笑顔を絶やさなかった。


 翌早朝、佐藤が家族をたたき起こし容体の急変を告げた。医者が駆けつけ、看護婦から様子を聞き出している。出来ることは何もないようであった。


 私たちが見守る中、昼前に妹は息を引き取った。薄く微笑んでいる。


 皆が泣く中、ベッドサイドのチェストに手紙を見つけた。10通、それぞれに宛先が書かれている。幾通かには住所も書かれていた。

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