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41.請願
「あんな手紙、送っちゃってごめんね。怒ったでしょう」
「いえ、あの、はい」
「だよね。本当にごめんね。でも、本音じゃないのはわかるでしょう?」
「あいつらに言われるまで、わかんなかったです。…カーっときちゃってて」
「そうかあ、そうだよね。」
後部座席に並んで座った二人が会話を続ける。
夕日が街を赤く染めていく中、あてもなく車は進む。
「でね。お願いがあるんだよ。今晩8時、迎えを出すから家に来てほしいんだ。これはお母さまからのお願いでもあって、ぜひ来てほしいんだよね。あの子意地張ってるから」
「お父様は今日は帰ってこないし、看護婦さんもうまくいって部屋から出てもらっておく。二人きりできちんと話してほしいんだ」
「いいかな?」
「…はい」
「ありがとう、じゃあ8時に迎えに行くから、家の前で待ってて」
「それと、これ持ってて」
「これ…って?」
「万一そうなったらちゃんと使ってね。突然、孫ができたらお父さん倒れちゃうよ」
「お願いね」




