4.地下世界
最高だ。
アンコールに応えた後の拍手とも手拍子とも取れない、そう喝采だ。
野郎は雄叫び、女達が黄色い声をあげる。
手を振りステージ横から白い蛍光灯の楽屋へ。
ケンがタバコを咥え、どかっとパイプ椅子に座るなり指板を拭き始めた。
カズはシャツを脱ぐなり汗を拭き拭き、靴紐を緩めている。
ライブ終わりのいつものことだ。
変わらねえなと口元が少し緩むが、俺も腰を下ろしてケースからスプレーを取り出しギターに吹きかける。
「今日の打ち上げは?」
「皆さん、お疲れ様でした。今日のライブも最高でした。満入りでラストまであの盛り上がり。さすがです。オーナーも、次の予定を組みたいとの事です。
それでこれからの予定ですが…」
食い入り気味にカズが打ち上げ会場を確認している。
偉くなったもんだ。
マネージャーにスタッフ、今じゃ自分で機材を運ぶこともない。
癖で担ぐと「すいません!」とスタッフが飛んでくる。
肩が軽くて落ち着かねえ。
煙を吐き出して天井に目をやる。
打ちっ放しのコンクリに照明の影が黒々と落ちている。
「おい、行くぞ」
「なに、黄昏ちゃってんの。あてられた?」
「なんでもねぇ。みんな大丈夫?」
「「はい、後で合流します」」
人の回廊の間を通り抜け、タクシーに乗り込む男達。
一度赤いランプが明るく光ると、2台のタクシーは連なって進み出す。
残された群衆は残滓を堪能し、パラパラと散っていった。




