37.会社人
「週末お疲れ様でした」
「おう、ありがとう。あっちは花粉だいぶマシやったわ」
「四月になるとキツなりますもんね。で、社長のご様子、どないでした」
「まあ、しっかりした人やから大丈夫やとは思う。」
「結構、ヒト来てはったんですか?」
「まあ、地元の町内会に市から国の議員さんと秘書、あと病院関係に取引先の社長、担当者。支社からは部長以上がほぼ全てと本社からは来れる奴らみんな来とったんちゃうか。工場からも場長からライン長まできてたわ。まあ、あとは娘さんらの教師とご学友、いう感じか」
「ごつい人数ですね」
「弔電の名前読みだけでも長かったで」
「ちなみにあちらさんは?」
「なんや、やたらせっつく思たらそれか。流石にあれ見てすぐには動かんやろ。動いたかて役員会で承認おりんわ。いうて、こっちの準備は遅らせられへんぞ。手ぇ抜きなや。天下りはパイプ役だけやっとたらええのに欲出しやがって」
「そらもう…わかりました。他に何かあります?」
「いや、あとは医療機器部長の気落ちがひどぅて。しばらく役たたんやろぅな」
「ず~っと、関わってはりましたもんね」
「せや。そもそも立ち上げからして娘さんのことがあったからやしな。式の後、社長わざわざ俺らんトコ来はって『そう気落ちせずに』いうて、励ましてはったわ。」
「喪主に気ぃつかわしたら、あきませんやん」
「まあなぁ…せやけど気持ちはわかるで、3歳頃からやろ。あいつのところは子ども2人とも男やし、娘みたいに可愛がっとったん覚えてるわ。社長に『わがままは叱ってください』いうて、よう怒られとったで」
「そないにでしたか、聞いてはいましたけど。…他にもなんか、あったんです?」
「うん?ああ、焼香の時にな。多分高校生?の男の子が、土下座しよってん。始め、泣き崩れたんかいなと思っとったら、土下座しとってな。奥さん駆け寄って、連れの子らと一緒に会場から出て行きはったんや」
「何ですん、それ?…娘さん、女子校とちゃいました?」
「せや」
「ご病気でしょ?」
「うん」
「なんでしょうね?」
「わからん」
「聞かへんかったんですか?」
「聞けるかい、んなもん」
「そらそうですね。…まあ、おつかれさまでした」
「うん」




