19.不審物
「マリお嬢様。お手紙が届いております…」
「分かりました。ええと、なんだか分厚いですわね?何枚書いたのかしら」
「不審なものはないと存じますが、この場で開封させていただいても?」
「お願いします」
佐藤は念のためと手袋をはめて、ペーパーナイフで開封する。
「カセットテープ?」
「どうやら杞憂でございましたな。では、お手紙と合わせてお渡しいたします」
「ありがとう」
そういえばライブをするとか書いていた。せっかく送ってきたもののどうしたものか。今日はお母様もいないし、居間には誰もいないはず。お父様のオーディオをお借りしましょうか。
「あらお姉様、いらしたのですか」
「ん~、暑くて、図書館行くのやめた」
「そうですか」
「どしたの?居間に来るなんて珍しい」
「いえ」
「それなに?カセット?」
「ええ、お手紙に入っておりまして」
「一緒に聞こう!」
お姉様はカセットテープをさっさとオーディオに差し込み、再生を始めてしまった。
「ザワザワしてるね…」
「ライブの録音らしいですわ」
テープケースの台紙に「ライブ音源」と日付だけが書いてある。
「結構人気?」
「さあ?存じ上げませんわ」
気づけばざわつきも収まり、低い音と和音が聞こえてきた。演奏ではないようだけれど。更にシーンと静まりかえり「カッ、カッ、カッ、カッ、」と拍子木のような音がした。
「良いね~!気に入っちゃったよ。この子たち。ダビングしてもいい?」
「ええ…どうぞ」
「またライブするの?いつとか、手紙に書いてない?」
「いえ…お手紙だけというお約束なので…ライブの日付などは全く」
「っか~、真面目だねえ~」
キャビネットの引き出しからカセットテープを取り出し、ペリペリと包装を剥がして、さっさとダビングを始めるお姉様。
「聞きながらでいいでしょ?」




