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畏れることはない、行きましょう〜聖女の帰還  作者: 里井雪


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2/5

帰還

「う、うーーーん」


 ここはどこ? 私は誰?


 そうだ、私、首を切られて……、って、アレ??


 ゆっくりと目を開ける。オフホワイトの天井、音に意識を向けると、ピッピッという規則正しい機械音が聞こえた。病院?


 もしかして、戻ってきた?


 ここはどうやら二十一世紀の日本ということらしい。私は西暦二〇二四年、中学三年生の秋に自殺した。現世(うつしよ)で死んで異世界に転生、長い人生を歩み、再び死んだはず……。


「え!!!!! 白百合(クララ)さん、気が付かれましたか! ドクター!!!」


 ちなみに、現世で私の名は鈴木白百合という。苗字があまりに平凡だから、凝ったキラキラネームにしたかった両親の気持ち、分からぬでもない。だけど、白百合と書いて「クララ」は難読過ぎだろう。


 ドクターが駆けつけ、脈をとった。


「き、奇跡だ!!」


 それからが大変だった。脳のCTやら何やら、身体中を調べ回された。


「あの、看護師さん、お腹空いたんですが?」


「え゛」


 屋上から飛び降りた私の下方には、大きな欅の木があったらしい。木の枝がクッションになって、弾き飛ばされた私は植え替え予定で耕されている花壇の上に落ちた。


 奇跡なのか、神の悪戯か。いや、転生者として神に選抜されたということだろう。あの高さから落ちて無傷だった私だが、以降しばらく意識がもどらなかった。


 それから一ヶ月ほど、私は病院のベッドで昏睡状態、植物状態と判断され、尊厳死を迎える寸前に目を覚ましたらしい。


 一ヶ月?


 私、異世界には三十五年いたはずだが……。


 現世と異世界は異なる時空にあるということにしておこう。そもそも()()()と感じてはいるが、ここは私が元いた現世とは別の世界線にある地球かもしれない。


 だが、そんなことは、どうでもいい。


 中学時代、平穏な二年間を過ごしたものの、ちょっとした事件を切っ掛けに、無視、シカトという陰湿極まりない虐めを受けるようになった、私。


 修学旅行の時は最悪だった。班分けの際、私は全てのグループに参加を断られた。一人で家族へのお土産を買った飛騨高山、もう二度と行きたくはない。


 ロール・プレイング・ゲームのスリップダメージのよう、この虐めは、次第、次第に私の心を蝕んでいく。夏休み明けから、学校に行くことができなくなった。


 心療内科医は私を鬱病と診断し、抗鬱剤や睡眠薬、いろいろな薬を処方してくれたが、玉石かいなく病状は日に日に悪化する。校舎の屋上から飛び降りるという、学校、級友へのあてつけ行為を実行するに至った。


 だが、幸運にも命を拾う結果となり、さらには異世界での貴重な体験もできた。今の私は以前とは違う。折角、()()()()()()()のだ、「寿命まで生きよう!」、そう考えられるようになっていた。


 斬首に比べれば、虐めなど些事だと言うつもりはない。虐めは人の心を殺す、物理的な殺人と何ら変わらぬ倫理に悖る行為だ。その認識に揺らぎはない。


 だけど、長い年月を異世界で過ごした私は「命を惜しむ」ことを学んだ。


 今回、命拾いがあって異世界からの帰還を果たせたのは、幸運などと言う言葉では言い尽くせない僥倖だろう。だが、次があるとも限らない。


 これがラストチャンスだと考えて、って、普通の人はみんなそうだ、有意義な人生を送ろう。ついでに知識を溜めて、もしかしたらあるかもしれない、次の異世界転生に備えようじゃないか。


 よーーーし!!


 そんなふうに決意を固めたたら、思いっきり前向きになれた。長く寝たきりで運動機能は著しく衰えていたが、懸命なリハビリにより、少しずつ、少しずつ回復した私は、中学には戻らず、在宅で高校受験を目指すことにした。

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